隊長の戯言     


 
2003/8/31 (日) 

 酒を抱えて1週間ほど行方知れずの身となります。やっほう!
     


2003/8/30 (土) デジャ・ヴュ

 わしはトム・クルーズの顔を見る度にインドを思い出し、ヘッセの詩を読めばモンゴルを思い出す。李白の漢詩はネパール情緒たっぷりで、ブルース・スプリングスティーンを聴くと中国を想起する。ムチャクチャだ。
 これはつまり、インドで「マイノリティー・リポート」を見た際に財布をスられ、モンゴルではヘッセの詩集ばかり読んでいたし、中国で列車のチケットが取れずに毎日ウォークマンでブルース・スプリングスティーンを聴きこんでいたせいだ。どれも強烈な思い出だから、二者の記憶はガッチリと結びついている。李白の漢詩にネパールを見出だせるのはわしぐらいのものだろう。


 ところで。
 初めて訪れた国でデジャ・ヴュ(既視感)を体感することがしばしばある。いや、しばしばどころかしゅっちゅう起こる。初めて来たのだけれども、どこか懐かしい。瞬間、脳内に唐突に電気が走り、「あれ、オレはこの情景を知ってるな」と感ずるのである。

 それはモンゴルの大草原を馬で疾駆している時だったり、薄汚い中国の国際列車の中で揺られている時だったり、インドの田舎町で地元の人たちとマリファナを廻し飲みしている時だったりと様々だ。
 こんなことはわしだけが体感することかと思っていたのだが、ネパールを旅していた時に出会った韓国人が「あっ、オレここに来たことあるよ」と唐突に叫んだ時には、外国での既視感は誰にでもあるのだなと妙に感心した。彼はこれが初めてのネパール訪問だった。

 
 記憶ちゅうものは脳内の細胞神経に刻まれる。そしてそれは単体では保存されずに他の神経細胞同士との繋がりをもって保存されるらしい。そしてこの神経細胞ネットワークこそが「記憶」となるようだ。
 昔聴き込んだ音楽を久しぶりに聴くと、その当時の出来事が次々と脳内に去来するのは、その音楽と当時の記憶がガッチリネットワーク化されているせいである。記憶喪失者を回復させるためには、ネットワークの一端を思い出させれば、それを切っ掛けに他の記憶も矢継ぎ早に思い出す。記憶とはそのような仕組みになっておるらしい。

 そんでもってデジャ・ヴュというのは、そのネットワークが弱体化することにより、間違った神経細胞ネットワークを作りだすことだとの説がある。つまり、全く別の「過去の出来事」と連携されてしまうのですね。
 
 これで大抵のデジャ・ヴュは納得できるのだ…けれども、前述の「モンゴル既視感」や「中国既視感」については全く納得できない。乗馬を覚えたのはモンゴルが初めてだし、空と草原が360度の平行線を生み出す世界なんぞこれまで見たことがない。
 きっとこれは前世の記憶だ。
         


2003/8/28 (木) 万景峰号

 不定期貨客船『万景峰号』が就航したのは一九七一年のことだそうだ。以来、三十年近くも北朝鮮と新潟の間を往復し続けて来たことになる。
 
 んで、一連のマスコミ報道を見て思ったのだが、日本政府の怠慢ぶりについては全く言及されておらぬのが気になる。
 
 同船についての軍事工作や麻薬、覚せい剤の密輸等々の疑惑は随分と前から存在したものであり、事実アメリカに亡命した朝鮮人技師がその旨を告白している。また、事実確認が取れずとも違法行為の疑いのある船舶には強制捜査をしても良いってのは国際法の取り決めだろう。

 それで、何だ。なんとも今回のような本格的な調査は初めて行なわれたわけであり、立ち入り検査事態は十年ぶりに実施されたものだという。何だそりゃ、なのである。
 事なかれ主義、極まれり。政府の状況認識能力のお粗末さ。ご立派なもんだ。これまでは体裁を繕うための形式上の調査しか行なわれていなかったというコト。
 
 今回のケースは次のようなものである。
 とある小学校。うち、とある数人の小学生たちはナイフを持って登校し、スクールライフをエンジョイしておるわけだ。教師はそのことを知っているのだけれども、事を荒立てたくないからカタチだけの持ち物検査を行なっている。いわゆるPTA対策である。
 ところが、ある日、小学生の一人がクラスメートを刺してしまった。教師たちはこりゃ大変だ、とばかりに"翌日"本格的に持ち物検査を行なった。
 ―――――何も見つかるわけないのである。殺傷事件が起きた翌日にナイフを持ってノコノコと登校するヤツはいるわけないのである。

 


――――――――――――

 「複雑な心境だ。何度もこの船に乗っているが初めての経験です。拉致問題については国家間の問題につき穏便に解決することを望んでいる」
 「1日も早く話し合いで問題を解決してほしい。悲しいことだ。(拉致被害者家族らの抗議活動に対しては)大変驚かされた。複雑な心境だ」
「万景峰号はあくまで家族、親族を訪ねるための船。乗船した人の中には80歳代のお年寄りもおり、飛行機に長く乗るのは体力的にきつい」
 「久しぶりの入国でしたが、同胞が出迎えてくれたのがとても嬉しかった。(右翼団体による「帰れ」という怒号が繰り返されたことについては) びっくりした」

 
 ・福岡市博多区下呉服町朝鮮総連本部そばで円筒形の不審物が見つかる。福岡朝鮮初中級学校(同市東区)は夏休み中のクラブ活動を見合わせる。
 ・岡山県岡山市の在日朝鮮人系の朝銀西信用組合には銃弾が撃ち込まれる。
 ・新潟市の朝鮮総連新の倉庫に銃弾一発が撃ち込まれる。約一・五キロ離れた在日朝鮮人系のハナ信用組合新潟支店では時限式の発火物が発見された。


 
   


2003/8/27 (水) 夏休み終了間近に伴う自己反省

 履歴書の作成にあたりふと思った。わしの職歴欄って夏は全て空白なのですね。小学校の頃から二十年近くも毎年夏休みを取っているのだからこれは素晴らしいことだとも言える。自分で自分を誉めてあげたいです。万歳。

 それにしても社会人復帰作業ってのは大変面倒クサイもので、ヒゲ剃らねばならぬ髪切らねばならぬコンタクトレンズつくらねばならぬ参る参る。ヒゲチョンマゲのサングラス長身褐色人間が要求される職場ってのはそうそう存在しないはずなのである。
 
 しかし現在の自分の姿をいざ文章で書いてみると、生々しい変態さを感じざるを得ない。ヒゲ+チョンマゲ頭+サングラス。我ながら怪しすぎだと思う。考えてみりゃ、サッカーのベッカム選手もヒゲチョンマゲなのだが、「ベース」の違いだけで変態・クールの完全に二極分化された背反評価が下されてしまうのは何とも悔しい。
 もっともわしはヒゲは剃るのが面倒だし、髪は切ると無駄金使うし、メガネはシーカヤック用に作った度付きサングラスしか持っていないがためにこれは自然と完成されたカタチであり、天然の産物である。つまりやったぜ、オレの勝ち。

 それにしても風体にしろ、素行にしろ、以前は他のへらへら隊隊員を見ていると非常に安心感を覚えたもので、間違いなくわしは「マトモなヒト」だったはずである、かつては。「ああ、オレはコイツらに比べたら相当マトモだな」と青天白日・極楽蜻蛉の清々しい気持ちになれたのである。ところが、今や何時の間にか「隊内の変態ナンバーワン決定戦」の首位争いをしておるわけだ。一体どこで何をどう間違えてこうなってしまったのか。納得できない。

 
 ところで「変態首位争い」だが、道化師隊員こそが首位独走体制の名実ともにナンバーワンだ。これは間違いない。わしはまだ凡人であるゆえ仕事探しに偽りの仮面を被る男だが、彼は弁髪で仕事探しをした偉大な漢である。腕には「道化師」と奇天烈な入墨がある。彼は履歴書に「趣味・経文朗詠或いは精神修行」と書きかねないヤツで、当然ながら行く先々で面接に落ち、挙句の果てには「キミはその何だ。特別な宗教上の信条でもあるのかね?」などと質問されるわけだ。
 いやはや立派なのである。足元にも及ばない。小生も追いつけるべくに努力しようと反省することしきりの今晩夏。

 

2003/8/26 (火) 童謡で命令

 童謡には「行け」「来い」「出せ」等の命令形が多用されているが、金田一晴彦氏の識見によればこれは「子供は簡明・直截に表現を喜ぶ」からだそうだ…と、丸谷才一が自著に書いていた。

 なるほど、こりゃ面白れェと思ったけれども、考えてみればそうじゃないだろう。これは単にリズム感や語感の問題じゃないのか。
 例えば、
 ♪あめ あめ 降ってくれ 降ってくれ 母さんが
  蛇の目でお迎え 嬉しいな  

 ♪しょ、しょ、証城寺 証城寺の庭は
  つ、つ、月夜だ 皆出て来てちょうだい出て来てちょうだい出て来てちょうだい

 ♪ほ、ほ、ホータル 来て頂けませんでしょうか

 ♪でんでんむしむしカタツムリ お前の目玉はどこにある
  角出して下さい やり出して下さい 頭出して下さい


 おかしいだろう。
 国語学に通じた識者はタマにアホなことをいうので面白い。
 ところで、以前へらへら隊で曲を作った時、どうしてもゴロ合せがうまく行かず苦労したことがある。「片手に焼酎」に続くいい語呂はないかね? とイーダ炊事長に尋ねた所、彼は眉をひそめてちょっと思案した末に清爽感溢れる笑顔で実にキッパリと答えてくれた。
 「片手に焼酎、尻にはギョウチュウ、心はレスキュー…だな!」
 かくも美しい文言を思いつく彼は、某有名市民吹奏楽団の常任指揮者だ。


2003/8/25 (月) ちてきな州知事

 次期カリフォルニア州知事の最有力候補、アーノルド・シュワルツェネッガー大先生の発言が実に素晴らしくて感動した。

 問.環境問題対策についての御意見がありましたらコメント願います
 答.「ドント・ウォーリィ。心配するな」

 問.同性愛者間の結婚問題については?
 答.「今すぐには答えたくねぇな」

 問.銃規制問題について
 答.「オレは平和大好き野郎だぜ」

 問.税制問題について
 答.「朝起きてクソした瞬間から課税され、その後、一杯のコーヒーを飲んでも課税される。税金、税金、税金。税金ばかりの世の中だ」

 問.今回立候補したことに対して
 答.「勝つためには何でもする。オレはリーダーであるために生まれたんだ。何百万もの人々が私を尊敬しているという事実がたまらねェ」


 こんなことをさらりと言ってのけるシュワ先生、尊敬致します。
 環境問題について→「心配するな」
 今年のわし的流行語大賞。


2003/8/24 (日) 新・アリとキリギリス

 むかしむかし、あるところに働き者のアリさんと、怠け者もとい"脱"農耕民族的生き方をしているキリギリスくんがいました。
 
 キリギリスくんはいいました。
 「アリさん、今日も大変だねェ。何でそんなに働くの?」
 アリさんは答えました。
 「お前、アホか。皆働いているんだよ。これがジョーシキなんだよ」
 「ふーん。で、楽しいの?」
 「ああ、救いようの無いアホタレめ。楽しいわけないだろ。このマヌケ面」
 「そんなに楽しくないことをアリさんは同じことを毎日毎日、数十年も続けているんだ。分からないなァ」
 「ほざいていやがれ、ボケナスが。てめぇは飢え死にして地獄へ落ちろ」
 「でもそれだけエサが貯まったら、もう働かなくていいんじゃないの」
 「てめぇバカか。ローゴとかローンとか、まいほーむとか色々あるんだよ」
 「へぇー。その"ろーご"とかいうものに、アリさんは人生丸々捧げてんだね」
 「ちくしょう、てめぇとは付き合ってられねぇや」
 「?」

 
 そして冬になりました。あたりは雪でまっしろです。
 アリさんは貯めに貯めこんだエサは大部分が腐り、辛うじて残ったエサも子供たちに奪われ、腐臭の中でうめきつつ、呪いの言葉を吐きながら死んでいきました。
 キリギリスさんは、その後どうなったのかということについてはだれも知りません。


 ―――― こんなのもタマにはありだ。さて、今年もぼちぼち仕事を探すかね。


2003/8/23 (土) テント生活

 かれこれ10日近くテントで寝ている。
 天草に行った際に使用したテントがびしょ濡れとなったので、それを乾かすために庭に設営したのだけれども、以来張りっぱなしの状態だ。猛暑が続いているがテントで寝る夜は涼しい。

 修理に出していたガソリンストーブもようやく帰ってきた。嬉しさのあまりそいつを使ってインスタントラーメンを作る。今、自分が北海道の原野で生活していると想像すれば、至福の時が味わえるってぇもんだ。
 ひとまず隣家から聞こえてくる「ヤマダさーん。宅急便でーす」の声は幻聴だったということにしておこう。

 ぽつりぽつりとしか見えない星空を眺めつつ、ラーメンを食っていると荷物を受け取った隣人のオヤジから話しかけられた。
 「大変ですネェ」
 オヤジの言動の意味が分からなくてわしは適当に言葉を濁したが、後からようやくその意味が理解できた。
 
 電気、ガス、水道を止められ、自宅で侘しいテント生活を送る二十代男。
 成る程。


2003/8/20 (水) 天草遠征記

 遠征記更新しとります。次回で完結予定。
 今までの遠征記の中では一番酷い出来映えなんじゃないかと、満足感でイッパイな反面、読後の感想に酷く不安を覚えている次第であります。実際、貰った感想は一件のみ。
 下記のメールフォームにてご意見感想お褒めの言葉呪いの言葉うらみつらみ、等々を送っていただけると非常に喜びます。プロバイダのCGIを利用しているため、送信者の身元は一切明らかとなりません故、気軽に送信していただけるとこれ幸い。よろしゅうお願いしますだ。
 

 

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2003/8/17 (日) へらへら遠征記

 へらへら遠征記、一章分だけアップしとります。二日に一回の更新ペースで今週中には決着がつくと思われます故、お暇な方はご閲覧の程よろしゅうお願い申し上げます。
 第八回へらへら遠征記








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