学生時代の体育会系仲間と野球観戦をする。アメフト部元主将、応援団元団長、空手部元主将等の面々が一堂に会すると、その場は場末のチンピラ国際会合といった様相を呈してしまうのはどういうわけか。
「ちょっと待て。この面子はフツーに清く正しく野球観戦をしちゃイカンだろ。ダイエーの投手が三振を取る度にイッキ飲み。打者が一点取る度にイッキ飲み。これでいこうや」
テニス部主将が勤め先から天文学的数量のビール缶を盗んできていたので、わしは冗談混じりに提言したのだが、満場一致で可決されてしまった。冗談通じないヤツらはこれだから怖い。
「お客様、球場へのビールの持ち込みは御遠慮…」
「あ? 何だって!?」
アメフトがわざとらしく聞き返す。
「ビールの持ちこみは…」
「え? もっと大きな声で叫んでくれねぇと分からんよ」
空手がいう。
「これ、全部空缶ね。アキカン。ゴミ掃除しながら球場に来たんだよ。オニイサン文句ありますか」
「ありません」
全くヒドい連中だ。脅し担当は空手とアメフトの領分である。学生時代に物好きな連中が『学内ケンカナンバーワン』のアンケートを取ったことがあるが、この二人にしか票が入らなかったらしい。ゆえあってわしら…じゃなかった彼ら二人はいがみ合っていたのだが、今では暗黙のコンビネーションプレイが出来るほどに仲良しなのである。
さて、試合経過は良好で特に先発陣の活躍は凄まじい。ビール缶はどんどん減っていき、わしらの回りだけ燃えないゴミの夢の島状態である。
コネを使って応援席のど真ん中に座ったのはよいが、ダイエー選手のこれ以上の活躍に段々と危惧を覚えてきた。勝ちすぎなのである。「かっとばせー。まーつなかぁ」の大声援の中、わしらだけは「かっとばすなー。まーつなかッ」「こーけーろ。じーょじまッ!」の大合唱を行ない、ダイエー応援団からは大変暖かい視線を頂いた。
そんなわけでおかげさまで三回裏ぐらいからボールを目で追えなくなり、五回表には続々と人が倒れて行き、七回にもなると行方不明者が出てきた。隣に併設されている高級ホテルに氷を盗みに行ったきり帰ってこないのだ。
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ダイエー新32安打!記録ラッシュ
ダイエーが27日、オリックス戦(福岡ドーム)で1試合32安打のプロ野球新記録をマークした。(中略)
またダイエーは1回、村松が右前打し、犠打と2四球を挟み第2打席の左翼線二塁打まで、10連続長短打を放ち、プロ野球タイ記録となるイニング最多連続安打10をマークした。
(中略)
ダイエーの1試合チーム打率5割8分2厘はプロ野球新、24打点と55打数はパ・リーグ新、52塁打はパ・リーグタイで、両チーム計93打数もパ・リーグタイ。城島と柴原の1試合7打数はプロ野球タイ、城島の1試合6安打はパ・リーグタイ。
ダイエーは先発全員が安打、打点、得点を記録し、26−7で大勝した。
※引用 西部日刊スポーツ新聞社
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