真剣勝負で映画を作ることになった。ヤクザ映画である。脚本はまだ少ししか書いてない。
物語の内容は「風前の灯、壊滅寸前にあるヤクザ組織が廃滅していく様子を描く、ヒューマニズムと人間の尊厳、悲哀をテーマとしたバイオレンスアクションドキュメンタリータッチ任侠ドラマ映画」と、自分で何言っているのかよく分からぬが、まァタイトルは『孤城落日』で行こうかと考えている。
なぜ壊滅寸前のヤクザ組織に題材を取ったのかというと、そこには滅びゆくものの壮大な人間愛が見出せるからだ、という考えは毛頭なくて、ただ単に俳優人が五人しか集まらないからだ。しかしながらへらへら隊、どれもこれも人間を超越した凶悪な面構えを保有しておるので、役どころとしては丁度良い。
ところでヤクザ組長といえば、和服姿で切れ目の美人妻が必要不可欠なのだけれども、さすがに和服の調達は難しい。この問題に関しては頭を抱えて悩んだ末、百歩譲ってセーラー服で行くことにした。これでは百歩どころか、10kmほど後退してしまっているような気がしないでもないが、致命的な問題ではないので良しとしたい。組長の設定を『女子校生フェチのコスプレプレイ好き変態組長』と変えれば良いことである。
次なる問題は、そのセーラー服を着る組長妻役ということになるのだが、何たることか、俳優となるへらへら隊員に女性はいないのである。しかしこれも慌てずに女装の女形という方向で解決を迎えたい。幸い、へらへら隊はゴツイ人間ばかりだから、ホラー映画テイストも楽しめるわけだ。一粒で二度オイシイのである。
しかし、何と言っても苦労したのはセーラー服の調達である。これについては、『女子校生 制服 販売』とのキーワードを元にGoogleで探しまわり、ふとすれば「血走った目を皿のようにして大きく見開き、真剣な眼差しで必死の思いをしながらブルセラショップのサイトを見ている自分」に気がつき、大変な自己反省をさせられた。
そこで、これではマズイと後輩の女の子に携帯のメールを使って依頼要請したのだが、哀しいかな、なにせJフォンのスカイメールであるから、128文字しか送れない。
上記のようなロマンと情熱と艱難辛苦に充ちた文章を128文字にまとめることなど土台無理な話しで、ここは一発男らしく単刀直入に「セーラー服貸してくれ」と送ったのである。
普段は即座に返信する彼女もこの時ばかりは返信が帰ってこず、しばらく辛い思いをしたが、ややあってようやく待望の返事が来た。
「探してみます。しかし、まさか先輩が着るんじゃないでしょうね。それほど変態チックな方でないと信じていましたが」
セーラー服は今週金曜日、母校の空手道場で受け取ることになった。わしとしては、麻薬取引の密売人のようにひっそりこっそり紙包等のカモフラージュを凝らして渡してくれることを希望したい。
一応、わしは現役学生の空手指導をしておるのであるが、「女子大生からセーラー服を購入している変態コーチ」との烙印でも押された日には、いくら打たれ強いわしでも再帰不能になるのである。
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