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  手溶接入熱量の簡易測定方法

 

 手溶接の入熱管理の簡易方法です。入熱管理がとても簡単にできます。実用新案取得済みです。でも気に入っていただいたら大いに活用してください。

 

1.まえがき

 調質高張力鋼では、入熱量が多くなりすぎると溶接部が脆化することが知られており過大な入熱を防止する必要がある。

 通常この入熱量の計算には、次式が使われる、

   Q=60・E・I/v ………… (1)
    Q:入熱量(ジュール/cm)

        E:アーク電圧(V)

        I:アーク電流(A)

        v:溶接速度(cm/min)

 サブマージ溶接などの自動溶接の場合、これらデータはE、Iおよびvをメータから読みとることができるので、入熱量の計算は容易である。

 それに対し、被覆アーク溶接(以下手溶接と略す)の入熱管理は、溶接速度を直接測る方法がないため、溶接棒1本ごとの溶接時間をストップウォッチで測り、溶接ビード長さを計測し溶接速度を算出する方法をとる。これを実際に行うのはなかなか面倒なものである。この面倒な手溶接の入熱量測定を簡易に行うのがここに述べる方法である。

 

2.原 理

 (1)式は次のように表現することが可能である。

   Q=E・I・t/L ………… (2)

       t:一本の溶接棒を消耗するのにかかる時間(sec)

       L:一本の溶接棒で施工した溶接長さ(cm)

 通常市販されている手溶接棒の棒径は3.2mm、4mm、5mmである。棒径が同じでも銘柄が違うと長さが違う場合がある。銘柄・棒径と棒長を定めると、その溶接棒を溶融させるエネルギーは一定であるので、E・I・tがほぼ一定になる。なお、溶接棒は、掴み部の5cmを残すものとする。これは、溶接棒として使える部分はすべて使い切ることを意味する。

 実験によると、アーク電圧は通常24〜25Vであり人による差や溶接姿勢による差はほとんどなかった。さらに、電流Iと消耗時間tの積は銘柄と棒径が定まればほぼ一定であることもわかった。

 すなわち、銘柄・棒径が定まると入熱量Qは、次式で表すことができる。

   Q=k/L …………… (3)

       k:実測から得た値の積(E・I・t)の平均値

 

3.応用方法

 溶接棒10本程度をテストピースの上に溶接し、E・I・tのデータをとります。

 神戸製鋼所製のLBM-62の棒径5mmの場合、アーク電圧24V、溶接時間120秒、溶接電流230Aであったのでkは24・230・120≒660000となる。

       Q≒660000/L

 これは、言い換えると、入熱量Qを80000J/cm以下に押さえる必要があるときは、

       660000/L≦80000

       L≧8.3cm

 LBM-62の5mm棒を使用した時は、一本の棒のビード長さを8.3cm以上に管理すれば、入熱量を80,000J/cm以下にできる。
 溶接ビード長さが短くなりがちなのは、立向上進姿勢の場合である。それ以外では、ビード長さは長くなる傾向にある。そこで、立向上進姿勢において、8.3cm以上を保つよう溶接技術者に気をつけてもらえば、入熱制限は確実に実施される。

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