セラン石・少量の石英・長石・エジリン輝石などを伴った母岩に茶色の吉村石が葉片状結晶として伴った標本です。母岩半分を占めるセラン石Serandite(ピンク色の鉱物)は南部石と同じ珪灰石グループに属す鉱物で、風化し易い鉱物ですが、この標本は鮮やかな色合いを保っています。吉村石は岩手県九戸郡野田村野田玉川鉱山で最初に発見され、1961年に鉱床・鉱物学者吉村豊文博士に因み命名された日本産新鉱物です。
田野畑鉱山は稼働当時はマンガンを採掘していた鉱山で、菱マンガン鉱をはじめハウスマン鉱・ブラウン鉱・・バラ輝石・南部石・セラン石・鈴木石などが採れたそうですが、いまでは往事の面影はまったくないようです。
こうしたなか、2001年記載の本邦産新鉱物、わたつみ石(Watatsumiite)が発見された事は記憶に新しい。 |