イギリス ロンドン撮影地案内
イギリス鉄道趣味事情
2002年9月〜2003年9月

はじめにイギリスでの列車撮影と注意点
 まず、イギリスの鉄道趣味というとメモを片手にホームに立ち、見た車両を記録してゆく「スポッター」と呼ばれる人たちが最も多く、ロンドンなどの大きな駅に行くと必ずといってよいほどホームの先端に彼らの姿がある。そのほかは、鉄道模型といったものが主で、鉄道写真派は少ないよう。
 しかも、イギリスの鉄道写真派の人達は、蒸気機関車を追いかけている人たちが殆どで、SLが走る日は別だが、普段のBR沿線でカメラを持って待ち構えている人は、滅多に見ることは無い。(たまにスポッターが、記録用にコンパクトカメラを持っていることはある。)
 
 といっても、イギリスは鉄道趣味に対して寛容ということになっている。当然、写真撮影に対しても…?。
 ただ近年、各鉄道会社がスポッター達を駅から追い出そうという動きがあるようで、私自身も何回か撮影を止めるように注意をされたことがある。(私が受けたのは、ユーストンとリバプール・ストリート。)しかし、基本的に撮影を禁止している訳ではないので、注意され時は指示にしたがえば、トラブルになることはまず無い。当然危険だと駅員が判断した時も注意が入る(当然のことだが)。特にロンドンなど大きな都市部では、防犯のために街中に防犯カメラが設置されており、例外に漏れず、駅員の姿がホームに無かったとしても、ちゃんとカメラで監視されている。あと、当然のことだが、線路歩きや敷地内に進入するのもご法度。列車が高速で走っているのと、田舎などでは、路線内に進入する人を空のヘリコプターから警察が監視している区間もある。
 
 イギリスでの列車の撮影は、可能ならば平日に行くことをお勧めする。というのも、イギリスの列車は土日、祝日には列車が激減してしまう。特に貨物列車は、平日は多く運行されている区間でも、土日、祝日には殆ど走っていないのが普通。ローカル線にいったっては、路線よっては休日運休っていうところもあるらしい。また、土日は保線作業のため終日運休が多発する。季節的には、ロンドンだと夏季の場合夜9時、10時ごろまでは明るい一方、冬期は午後3時ごろには暗くなり始めるので注意。当然北へ行くほど緯度が高くなるので、さらに差が大きくなる。
 あと保存鉄道沿線で撮影するならば、多くの保存鉄道で撮影料を払う必要があるので、予定があるのならホームページなどで調べていくことをお勧めする。

 イギリス国内の時刻表は滞在中、一回も見ることは無かった(それが帰国後、地元の大型書店の洋書コーナーで、イギリス国内の時刻表を見かけた)。主な列車はトーマスクックで十分だと思われる。ただ、イギリスの列車は、よく遅れたり運休したりするので注意。また、ここで案内する撮影地に付いては、次から次へと列車が来るところばかりなので時刻表は特に必要はないと思われる。

 治安に関しては、比較的安全な国なので、それほど神経質になる必要は無いが、都会ではスリなども発生するので注意をすること。私的防衛手段のポイントとしては、まず気を付けるのは当然だが、いかに地元住人になりきって、狙われないようにするということ。つまり、どうみても観光客っていう格好は止める、外見がお金を持っているように見える人が一番狙われる。また、必要ない時はカメラを鞄にしまっておく。(カメラを首から提げて、街中をウロウロする地元の人はそうはいないはず。)特にロンドンなどの場合、様々な人種が入り乱れているので、ロンドナーに埋もれるのもそう難しいことではない。このポイントは、どの国でも言えると思う。(アフリカなどは難しいかも…)

ロンドンの撮影地
 私が1年間いたロンドンで訪れた撮影地を紹介。
これらの撮影地は全てゾーン2内で列車の本数も多いので、ちょっとした空いた時間に訪れることも可能。
ロンドンから南部方面へは、第3軌条式の路線なので、障害物が少なく撮影地も多い。
一方残念ながらキングス・クロスやユーストンのどから出発する長距離列車の撮影地はゾーン2内では見つけられなかった。

ロンドン以外の撮影地検索は、こちらのサイトがお勧め。
(イギリスの地方沿線は防風林が多く、なかなか自力で撮影地を見つけるのは至難の業?)
A Railway Photographers' Guide to UK Photographic Locations(英語)

ワンズワース・ロード駅
Wandsworth Road Sta
 ユーロスターを撮影するならワンズワース・ロード駅がお勧め。というのもウォータールーを出たユーロスターは、専用渡り線を通って、イングランド東南部へ向かう路線に入ってくるのだが、その渡り線を越えてきたユーロスターが、編成をくねらせているところをこの駅の陸橋から望遠で狙うことが出来る。ただし、今工事中の高速線が開通すると、このルートは通らなくなるので、それまでの期間限定!
 他にもこの駅をヴィクトリア駅発着の元コネックス列車やこの駅のアクセスとなるサウス・セントラルの列車。また、ロンド中心部を横断できない貨物列車の迂回路線になっており、平日ならば頻繁に運行されている。
 また、ヴィクトリア寄りのホーム先端から、中望遠以上で撮影可能。この場合、背後に大きなガスタンクが入ってくる。
 光線状態は、終日順光。アクセスは、ビクトリア〜ロンドン・ブリッジ間を運転されているサウス・セントラルの列車で、ヴィクトリアからだと2駅目、30分間隔で運転されている。バス利用の場合は、ウォータールー駅から出る77系統とトラファルガー・」スクエアーから出る77A系統で(共にボクソール駅経由)、ワンズワース・ロード駅で下車(高架が目印)。バスのほうが本数が多い。
ユーロトンネル(チャネル・トンネル)へ向かう列車。2003年7月 ウォータールーへ向かうユーロスター。2003年7月
ホームの先端から。2003年2月 イギリスのガスタンクをバックに。2003年2月
ヴィクトリア〜ロンドン・ブリッジを結ぶサウス・セントラルの列車。後ろがロンドン・ブリッジ方面のホームへ渡る陸橋、その上からユーロスターを狙う。2003年2月

ボクソール駅
Vauxhall Sta
 ボクソール駅は、ビックベンとユーロスターを組み合わせて撮影できる場所として有名。望遠を使って、ビックベンを引き寄せると良い。さらに、ホームの先端からウォータールー方面を眺めると、複々線が右に大きくカーブしているので、望遠を使って迫力のある走行写真が取れる。終日順光だが、夕方ビックベンと一緒に撮影しようとすると、サイドが影となる。また、夏場は街路樹の葉が生い茂り邪魔。
 撮影可能な列車は、ユーロスターの他サウス・ウエスト・トレインズ、ウエールズ&ボーダーズの列車。
アクセスは、ウォータールーからサウス・ウエスト・トレインで1駅(停車しない列車もあるので、確認して乗車のこと)。チューブは、ヴィクトリア・ラインが接続している。
 
ビックッベンがちょっと隠れ気味だが、ユーロスターと。2003年9月 こちらはサウス・ウエスト・トレインの旧型車と一緒に。
2003年9月
こんな並走シーンも時には可能。2003年9月

ヴィクトリア〜バターシー・パーク間
Victoria Sta〜Batterse Park Sta
 唯一ゾーン1内にある撮影地。この撮影地は、ヴィクトリア駅を発着する全列車が撮影可能で、次から次へとやって来る列車を眺めているだけでも楽しい所。障害物もあまり無いので、レンズも自由に選べる。しかし、終日逆光のが難。曇りの日か、晴れの日は夕方が少しは光線状態が良いかも。また、コネックスの車両が休む車庫やテムズ川の向こうにあるバターシー廃発電所がバックに入ってくる。
 取れる列車は、ガドウィック・エクスプレス、元コネックス、サウス・セントラル。
 アクセスは、ヴィクトリア駅西側の道路をヴィクトリア・コーチ・ステーション方面へ歩いてゆくと、道の右手向こう側にコーチ・ステーションが見えるさらに歩くと、交差点が見えてくるので、道路を渡ったところで左折。そうすると線路を越える陸橋(Ebury Bridige)へ通じる坂を登ることになる。すると右手の視界が開けて線路が一望できる。ここは、警察署へ通じる道路の入り口にあるので、パトカーなどが出入りしている。

撮影地の地図(ちょっと印の位置がずれています。)

元コネックスの国鉄色旧型車。2003年9月 ガドウィック・エクスプレス。2002年2月
サウス・セントラルの列車。2003年2月 オリエント・エクスプレス社のツアー・トレインのノーザン・ベルを望遠で。オリエント・エクスプレス社のツアー・トレインは、ヴィクトリア発が多いので、ここでの撮影も可能。2003年9月

クラッパム・ジャンクション〜ワンズワース・コモン/アールズフィールド間
Clapham Junction Sta〜Wandsworth Common/Earlsfield
 ロンドンには鉄道をまたぐ道路(陸橋)が山ほどあるが、何処も目隠しするように1.6〜1.8mほどのレンガの壁が造られているのが殆ど。しかしこの場所は、胸ほどまでの高さしかなく、自由に撮影可能。しかも、終日順光。広角から中望遠ぐらいまで。
 撮影可能な列車は、クラッパム・ジャンクションの駅へ向かって、左側の複々線がサウス・ウエスト・トレインズとウェールズ&ボーダーズ、右手の複々線がガドウィック・エクスプレスとサウス・セントラル。
 撮影地へは、クラッパム・ジャンクションから徒歩10分ほど。まず、出口は、東側出口へ。駅を出ると賑やかな交差点が見えるが、それと反対方向右手のほうへ歩き出す。まず一度線路を越えて(壁があるので、線路は見えません)歩いてゆくと、交差点があるのでそこを左折。するとまた、線路を跨ぐ陸橋があるので、もう一度超えると、左手に公園があり、線路伝いに小道が続いている。そこを歩いてゆくと先左手に、2本の陸橋がみえる。その上が撮影地。

撮影地の地図(ちょっと印の位置がずれています。)

サウス・ウエスト・トレインズの離合!2003年4月 サウス・ウエスト・トレインの長距離列車。2003年4月
カテドラルズ・エクスプレスやブリティッシュ・プルマンなどの列車も時には通過する。2003年7月 サウス・セントラルの列車。2003年4月
ガドウィック・エクスプレスの国鉄型。2003年4月 たまには、貨物列車も。2003年4月

パディントン〜アクトン・メイン・ライン間
Paddington Sta〜Acton Main Line Sta
 ここはチューブのハマースミス&シティー・ラインのロイヤル・オーク駅(パディントンから1駅隣)のホーム上からの撮影。パディントンのすぐ近くなので、駅を発着する列車を撮影できる。ただ、終日逆光気味。夕方、パディントン方向に向けるのがいいかも。さらに、長編成を撮ろうとすると、チューブのホームが画面に入ってしまうのも難。ファースト・グレイト・ウエスタン、ヒースロー・エクスプレス、テムズ・トレインズが撮影可能。
IC125。パディントン方向。2003年9月 こちらは、アクトン・メイン・ライン方面。2003年9月

ゴスペル・オーク駅
Gospel Oak Sta
 コンパクトカメラでも貨物列車が簡単に撮影できてしまうのが、このゴスペル・オーク駅。この駅は、ロンドン市内を通れない貨物列車の迂回するルートになっいる上、一部の貨物列車が、バーキング方面から合流してくる。その合流する際に、貨物列車は信号待ちのため一旦停止、または低速で駅構内を通過するため、バーキング方面行きのホームからシャッター速度の遅いコンパクトカメラでも撮影が可能。平日の日中なら(土日、祝日は殆ど運転されない)貨物列車の本数も頻繁に撮影できる。(1時間ぐらいいれば、1本、運がよければ2本ぐらいの割合。ただ、貨物列車のダイヤは、あって無いような物なので、あてにならない。)また、このバーキング方面行きのシルバー・リンクの列車は、ロンドン周辺では珍しい、150系DMUを使用したローカル列車が発着するので、これも併せて撮影することができる。レンズは、広角から標準向き。光線状態は終日順光だが、本線に合流する西行きの列車に対しては午後、本線から離脱する東行き列車はに対しては昼頃まで機関車正面に光線がまわる。
 この駅へのアクセスは、シルバー・リンクのメトロ線の駅となる。チューブからこの線に乗り換えるには、ジュビリー・ラインのウエスト・ハムステッド(ちょっと離れている)やピカデリー・ラインとヴィクトリア・ラインのフィンズブリー・パークなどで乗り換えられる。
 バックの緑の並木はハムステッド・ヒースという公園で、公園内を歩くと森あり、池あり、草原ありとロンドンにいるとは思えない。ちょっとしたハイキング気分が味わえ、私自身もお気に入りの場所。この公園のパーラメント・ヒルから一望するロンドン市内もお勧め。天気の良い日に、ハムステッド・ヒースの散歩と兼ねて、ゴスペル・オークで撮影するのもお勧め。ただ、この公園ものすごく広いので、この駅脇の入口から入ってしばらく歩いたところにある事務所で、地図をもらっておくと良いかも。
フライトライナー社の66型DL牽引列車。廃棄物運搬車らしく、臭かった。2003年7月 こちらも、フライトライナーの自動車運搬列車。2003年7月
こちらはイングリッシュ・ウエールズ・アンド・スコッテイッシュ・レイルウェイ(EWS)社60型DL。2003年7月 37型DLの単機回送。2003年7月
EWS66型牽引コンテナ列車。2003年7月 シルバー・リンクのバーキング行き159系DMU。2003年7月

リバプール・ストリート〜ストラットフォード間
Liverpool Street Sta〜Stratford Sta
 この撮影地は、ドックランズ・ライト・レイルウェー(DLR)のプッディング・ミル・レーン駅(ゾーン2と3境界にある駅)のホームからの撮影になる。ここは、BRの複々線がDLRと並走しており、手軽に、走行写真が撮影できる。通過する列車は、長距離列車を運行するアングリアと近郊電車のファースト・グレイト・イースタン。レンズは、中望遠くらいまで。リバプール・ストリート方面へは、障害物が殆ど無いので楽に取れるが、ストラッドフォード方面は、架線柱があり少し上手く処理する必要がある。光線状態は、朝から昼頃までがリバプール・ストリートから出発する下りに対して、昼前後がリバプール・ストリートへ向かう上り列車に対して順光。
のファースト・グレイト・イースタンのEMU。逆光での撮影。2003年3月 同じく逆光での撮影。2003年3月
下り列車の撮影は、架線柱がネック。2003年3月

イギリスの鉄道趣味事情
 直接イギリス人の鉄道ファンとお友達になったわけでもないので、詳しいことまでは判らないが、街中の書店などの鉄道書籍から分析してみると、イギリス人の鉄道趣味の主流は、懐古主義から来ている。なんといっても一番多いのが、古い写真を集めた鉄道写真集が非常に多い。他にも、過去の車両を分析した本なども多い。本はあまり見覚えが無いが、最近日本でも盛んになってきた廃線あとめぐりも発祥は、このイギリス。変わったところでは、信号機専門やポイント専門の本。過去の列車事故の写真を載せ、分析している本など、バリエーションは広い。しかし、不思議なことに日本で主流、人気のある現役列車の写真集や本は、殆ど見つけられなかった。あるとすれば、スポッティング用の車両資料や鉄道路線図が少しある程度。
 あと日本とは比べられないほど種類が多いのが、鉄道雑誌。普段よく見かける雑誌だけでも、約15種類ほど。取り扱っている内容は、本とは違い約4割が主に鉄道最新ニュースを扱ったもので、本と違ってぐんと比率が上る。現役の列車の情報は雑誌で十分と考えている人が多いようだ。あと、4割が根強い保存鉄道や蒸気機関車を扱ったもの。残り2割は、模型といった状態。値段も物価の高いイギリスにおいて、日本の鉄道雑誌の約8割程度と手頃で、競争の激しさがうかがわれる。
 イギリスの
鉄道趣味で必ず語らないといけないのが、保存鉄道の存在。イギリス中に100を超える保存鉄道があるのは、日本から見るとうらやましい限りだが、これがまた殆どボランティアで成り立っているっていうのも驚く。それだけ、老若男女問わず鉄道というものが愛されている証拠でもある。なぜこれだけ、多くの保存鉄道が存在可能か?鉄道が愛されているというのも一因だが、鉄道に対する安全基準が緩いのも大きな一因ではないだろうか。(個人的意見)

イギリスで鉄道書籍を探す
 雑誌の置いてある書店には必ずといっていいほど鉄道雑誌が置いてあるが、雑誌の種類豊富さは店によって異なる。これは、日本と一緒で、大きい書店ほど種類が多い。ただ、イギリスでは雑誌を置いていない書店も多いので注意。確実なのは、駅の構内や繁華街によくあるWHSmithという書店兼キオスク。小さい店舗でも鉄道雑誌が充実している場合が多い。
 雑誌以外の本は、他の交通書籍と一緒にあることが多く、鉄道書籍があっても思ったものがなかなか見つからないことが多い。まして、観光程度で訪れた土地勘に不慣れな町なら、見つけるのは難しいだろう。そこで私が、見つけた鉄道書籍を大量に扱う本屋を紹介しよう。

フォイルズFoyles
〔トッテナム・コート・ロード下車、チャーリング・クロス・ロードを南へ下った西側(左手)。番地は119。〕
在庫数世界一を誇るらしい。確かに、鉄道書籍はかなり充実している。ここで、北朝鮮の鉄道路線図を見つけたこともある。

ロンドン交通博物館London Transport Museum
〔コベント・ガーデン下車徒歩約5分〕
ガイドブックに載っているトランス・ポート・ミュージアムのミュージアム・ショップ。地下鉄を中心に鉄道書が揃っている。

イアン・アラン・トランスポート・ブックショップIan Allan Transport Bookshop
〔ウォータールー駅から徒歩約10分、住所45 Lower Marsh, London SE1 7RG地図で確認を
交通関係の書籍を専門を扱っているので充実。外国の鉄道雑誌も手に入る。
日本の雑誌「鉄道ファン」もあった。


私の知識のみで書いているので、間違ったところもあるかもしれません。あくまで参考にどうぞ。