『映画の登場人物に学ぶ使える英語』


ロサンゼルスのナンバーワン日本語情報誌”Lighthouse”の「2002年夏の増刊号 アメリカ生活辞典AtoZ」に掲載された映画に学ぶ英語コーナー。俳優のタイプ別にいくつかのシチュエーションでのセリフを紹介している。紹介した俳優は、トム・クルーズ、ジュリア・ロバーツ、トム・ハンクス、メグ・ライアン、キャメロン・ディアス、ウディ・アレンの6人。ここでは紙面の関係で掲載されなかったウディ・アレンも含めた全文を紹介する。

なおLighthouseのホームページ(www.us-lighthouse.com)では各号の記事やアメリカ生活などを紹介しており、生きた米国情報を当地の日本人が発する貴重な情報源となっている。

*********************

映画は日本人にとってすぐれたエンタテーメントであると同時に、生きた英語を学習する上で欠かせない道具だ。映画を観ることで、現実には会うのが難しい多彩な人物の様々な言い回しを知ることができる。また多くの映画ビデオに付いている聴覚障害者用の英語字幕を使えば聞き取りの難しい言葉でも読み取ることが可能だ。このコーナーでは映画俳優別にそれぞれのキャラクターを特徴付けるセリフを紹介してみたい。いろいろな言い回しをマスターして、自分で使ったり、相手が言った言葉のニュアンスを掴んだりするのに役立てよう。

 

トム・クルーズ さわやかハンサム型

"You come after me and you will lose. Because I am a survivor!"(ぼくに勝負を挑むものは必ず敗れる。最後にはぼくが勝ち残るからだ)
『ザ・エージェント(Jerry Maguire)』のトム・クルーズのセリフ。恐れを知らない若きヤング・エグゼクティブの自信に満ちた言葉で、アメリカ人の勝負に対する基本的な姿勢が現れている。もっとも映画では、仕事がうまくいかず酒に酔って同僚に愚痴る場面で使われているのがミソだが。

"That's more than a dress. That's an Audrey Hepburn movie."(ドレスも素敵だけど、きみはそれ以上だ。まるでオードリー・ヘップバーンの映画だよ)
同じく『ザ・エージェント』から、素敵な服で現れたデート相手をほめるトムの言葉。ヘップバーンにたとえられて悪い気持ちはしない女心をくすぐるセリフ。こういう言葉がさらっと出てくるようになれば、女性とのコミュニケーションもすんなりいくだろう。

"I can see it's dangerous for you. But if the government trusts me...Maybe you could?"(なるほど生徒とデートするのは危険だというわけですか。でも政府が私のことを信用しているわけですから、おそらく教官殿も私のことを信用できるのでは?)
『トップガン(Top Gun)』で「生徒とはデートしないの」という女性教官を口説こうとするトムの言葉。女性を口説くのに必要なのは自信と図々しさ、それにユーモアということを示すセリフだ。

"It's beautiful. You're always beautiful."(きれいだよ。きみはいつだってきれいさ)
『アイズ・ワイド・シャット(Eyes Wide Shut)』で出がけ間際に妻から化粧の具合や髪型を訊かれ、いい加減に答えたのを問い詰められたトムのセリフ。妻の不満をうまくいいくるめ、人間関係を丸くおさめている。とにかく相手をスマートにほめることが円満な夫婦や恋人関係の秘訣なのだ。

[1962年7月3日ニューヨーク州シラキュース生まれ。本名Thomas Cruise Mapother IV]

 

ジュリア・ロバーツ ややハスッパな美人

"You're forgiven."(許してあげる)
『プリティ・ウーマン(Pretty Woman)』でデートに遅れて謝るリチャード・ギアに、ジュリア・ロバーツがいたずらっぽく言うセリフ。謝る相手に言う言葉としてはかなり大柄だが、親しい間柄で冗談が通じるシチュエーションならいいかも。普通は"That's OK."くらいでいい。

"I'm okay with that."(私は構わないわよ)
『プリティ・ブライド(Runaway Bride)』より、リチャード・ギアから求婚を受けたジュリアのセリフ。相手に意見を訊かれて、さらっと承諾する時の言い回し。映画ではプロポーズという人生の一大事に、クールにこう返事したジュリアがかっこよかった。

"Did they teach you how to apologize at lawyer school? 'Cause you suck at it."(法律学校じゃ謝り方を教えないの? あなたの謝り方って最低よ)
『エリン・ブロコヴィッチ(Erin Brockovich)』で、交通事故の裁判に負けた自分の弁護士にジュリアが毒づくセリフ。"suck"には「つまらない」とか「最低だ」の意味がある。ただし、あまり良家のお嬢さんが使う言葉ではないので注意。

"I've been on a diet since I was nineteen, which means basically I've been hungry for a decade."(19歳の時からダイエットをしてきたわ。つまり基本的にここ10年ほどずっと空腹だったってこと)
『ノッティング・ヒルの恋人(Notting Hill)』より、ハリウッドのトップ女優役のジュリアが心情をこぼすセリフ。実際の彼女の姿に近い役でのセリフだけに、現実感がある。"I'm on a diet"で「ダイエット中なの」という意。余談ながら私の知り合い(女性)はこれを「I'm 女ダイエット」だと思っていた。恐るべし・・。

[1967年10月28日ジョージア州スミルナ生まれ。本名Julie Fiona Roberts]

 

トム・ハンクス 悩める青年

"Hi, Victoria?... It's Sam Baldwin, I don't know if you remember me. Oh? Well, great. I was wondering if you wanted to have a drink... Friday, say... Dinner?... Sure, dinner would be fine. Sure. Dinner."(やあ、ビクトリア。サム・ボールドウィンだよ。ぼくのこと覚えてるかな。覚えてる? それはよかった。その、一緒に一杯どうかなと思って。金曜日とか。食事? もちろんさ、食事だっていいよ。いいとも。食事ね)
『めぐり逢えたら(Sleepless in Seattle)』より、トム・ハンクスの男やもめが女性を電話でデートに誘うセリフ。女性を誘うのは久しぶりで勝手が分からないトムのおずおずぶりがよく現れている。"I was wondering if you wanted to 〜"は、「〜しないか?」と婉曲に訊く時の表現。遠慮がちな日本人の性格に合った表現であるが、あまりもじもじしすぎないよう注意。

"Mama always said life was like a box of chocolates, you never know what you're gonna get."(ママはいつも言ってた。人生はチョコレートの箱みたいで、何が起こるか分からないって)
『フォレスト・ガンプ 一期一会(Forrest Gump)』でトム扮する主人公フォレストの超有名なセリフ。シンプルな文章に深い哲学が秘められている。"Life is like a 〜"の後に別の言葉を当てはめれば、マイ「フォレスト語録」のできあがりだ。

"Hey, you want to hear something funny? My dentist's name is James Spaulding."(面白い話がある。ぼくの歯医者はジェームズ・スポルディングって言うんだ)
『キャスト・アウェイ(Cast Away)』で無人島に流されたトムが孤独をなぐさめるためにウィルソンと名付けたバレーボールに話しかける。スポルディングもウィルソンもスポーツ用品メーカーの名前。どんな時にもユーモアを忘れない精神は見習いたい。"Do you want to hear something?"で「ちょっといいかい?」くらいの気軽な問いかけの言葉になる。

[1956年7月9日カリフォルニア州コンコルド生まれ。本名Thomas J. Hanks]

 

メグ・ライアン ロマンチックな夢見る女性

"What if this man is my destiny and I never meet him?"(もし、この男性が私の運命の人で、彼に一生会えなかったら?)
『めぐり逢えたら(Sleepless in Seattle)』で婚約者がいながら、ラジオで耳にしたシアトルの男性のことが忘れられないメグ・ライアンのセリフ。結婚を前にしながらも迷い続け、理想の相手を探し求めたいとの切実な気持ちが伝わってくる。destinyは文字通り「運命の人」。"You are my destiny."のように使うと強烈な求愛の言葉になるが、間違えて"You are my dentist."などと言ったりすると、メグ・ライアン顔負けのコメディになってしまうのでご注意! 他にも「自分にとってぴったりの彼」の意味でMr. Rightという言葉もある。

"Oh, Walter. I don't deserve you."(ウォルター、私はあなたにはもったいないわ)
同じく『めぐり逢えたら』から、婚約者に別れを告げるメグのセリフ。deserveは「〜に値しない」の意味で、ここでは相手を傷つけずに相手の求愛を辞退する言い回しとして使われている。ちょっとくさいが、メグ・ライアンだから許すというところはある。

"I'd like the chef salad please with oil and vinegar on the side, and the apple pie a la mode. But I'd like the pie heated, and I don't want the ice cream on top. I want it on the side, and I'd like strawberry instead of vanilla if you have it. If not, then no ice cream, just whipped cream, but only if it's real. If it's out of the can, then nothing. Just the pie, but then not heated."
『恋人たちの予感(When Harry Met Sally...)』から、レストランでサラダとパイを注文するメグのセリフ。デザートのパイに対する注文の細かさは圧巻。ちょっと長いので日本語訳は割愛するが、注文時に便利な言い回しがたくさん含まれているので、暗記しておくと便利かも。

[1961年11月19日コネチカット州フェアフィールド生まれ。本名Margaret Mary Emily Anne Hyra]

 

キャメロン・ディアス 元気はつらつお姉ちゃん

"Do you know how hard it is to find a quality man in Los Angeles?"(ロサンゼルスで中身のある男性を見つけるのがどんなに大変か知ってるの?)
『チャーリーズ・エンジェル(Charlie's Angels)』より、敵と戦いながら携帯で彼氏と話していたキャメロンが、敵に携帯を壊されて怒りを炸裂させるセリフ。ロスの映画館だったら、爆笑間違いなしの迷場面。qualityは形容詞で「上質の」という意味だが、ここでは「中身のある男性」くらいの意味。他にスラングで、"I have to go number one"(ちょっとお手洗いに行かなきゃ)などという言葉もキャメロンは使っていた。number oneは「小便」の意。

"I thought you were decent, but it turns out you're just a lying, cheating bastard like all the rest."(まともな男かと思ったけど、あんたも他の連中と同じで嘘つきでごまかし屋のろくでなしだったわ)
『普通じゃない(A Life Less Ordinary)』で使われた痛烈な罵倒のセリフ。キャメロンが男に対してすかっと啖呵を切るのがかっこいい。実際に使う機会は滅多にないかもしれないが、別れ話がもつれて喧嘩になったら、これくらいは並べてやりたい。

"I'm so lucky to have you as a friend."(あなたが友達で、よかったわ)
『メリーに首ったけ(There's Something About Mary)』から、友達としてはいいんだけど恋人ほどじゃないという男性と無意識に距離を置こうとするキャメロンのセリフ。大して好きじゃない男性から親切にされすぎて困った時に相手を傷つけずに気付かせるスマートな言い回し。こういう場合の「友達」のニュアンスは日米同じのようだ。他に"To hell with Brett, you know. I've got a vibrator."(ブレットが何さ。私にはバイブがあるわ)と言ってキャメロンは笑わせてくれる。女友達と失恋談を話しながら、悲しい思い出をちゃかして言うセリフだが、下ネタはTPOに注意。

[1972年8月30日カリフォルニア州サンディエゴ生まれ。本名Cameron M. Diaz]

 

ウディ・アレン 知的コミック系

"You look so beautiful, I can hardly keep my eyes on the meter."(きみは本当に美人だね。タクシーのメーターを見ていられないよ)
『マンハッタン(Manhattan)』で夜のニューヨークをタクシーでドライブしながら、アレンがデートの相手にロマンチックに語る言葉。アメリカでは夫婦や恋人が相手をほめるのがとても大事だが、ここでは言葉が浮いてしまわないよう、ユーモアで笑わせているのがミソ。keep one's eyes on 〜 で「注意する」の意。

"I'm the boss. Mommy is only the decision maker."(パパがボスだ。ママは決定をするだけさ)
『誘惑のアフロディーテ(Mighty Aphrodyte)』で、パパとママのどちらがボスなのか息子に聞かれたアレンのセリフ。父親としての面子を保ちながらも、嘘はつかない独特のレトリック。decision makerは文字通り決定を行う人の意味で、要するにボスのこと。政治や経営などの様々な場面で使われる。

"I don't want to live in a city where the only cultural advantage is that you can make a right turn on a red light."(赤信号で右折できることだけが文化的な長所だなんていう町には住みたくないね)
『アニー・ホール(Annie Hall)』で、ニューヨーク大好きの主人公がロサンゼルスを皮肉った言葉。要するに「ロスには文化なんてないじゃないか」ということだが、正面から言うより相手も受け入れやすく、皮肉も伝えることができる。攻撃や非難にユーモアを混ぜるのは、迫害を受けてきたユダヤ人の民族としての知恵だろう。

"I'm for total, honest democracy. And I also believe the American system can work."(完全で誠実な民主主義というものを私は支持する。でもアメリカ式のやり方も悪くないと思う)
『スターダスト・メモリー(Stardust Memories)』から、アメリカの政治に対する痛烈なセリフ。昨今の情勢で外国人が口にするのはちょっとアメリカ人の神経を逆撫でするかもしれないが。

[1935年12月1日ニューヨーク州ブルックリン生まれ。本名Allan Stewart Konigsberg]

(「Lighthouse 2002年夏の増刊号 アメリカ生活辞典AtoZ」より)


初期画面に戻る

ホームページへの感想、ご質問はこちらへどうぞ

2002年8月6日改訂