1月10日OEKニューイヤーコンサート2026

1月10日オ−ケストラ・アンサンブル金沢ニューイヤーコンサート2026
指揮:広上淳一
金沢歌劇座

酢谷琢磨

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2026OEK NEW YEAR CONCERT

 オ−ケストラ・アンサンブル金沢のニューイヤーコンサート2026。今年は、石川県立音楽堂がパイプオルガンの分解点検修理のため会場は金沢歌劇座。久しぶりの金沢歌劇座に向かった。

   ロビー・コンサート1曲目は、シュランメル:弦楽四重奏《ウィーンはウィーン》。2曲目はベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番 第5章《Cavatina》。よく眠れる音楽で新年は幕開けた。

 いつもの石川県立音楽堂とは感じは異なるが、舞台手前に花が飾られ新春モード。OEKは8-6-4-4-2の対向配置。Hr2、Tp2にHpが加わる。コンサート1曲目は池辺晋一朗:《祈り、そして光ー能登半島地震犠牲者の鎮魂として》。曲のイントロはpで フィナーレはffで鈴が成る。神社で巫女の舞に用いられる鈴である。Wikipedia鈴では、「音は、人間にまつろわぬ獣や魔物を追い払って己の生命を守る楯であり、同時に己の 仲間である獣や神を引き寄せる合図でもあった」とある。地震という魔物が再度起こらないよう、そしてディアスポラの能登の民が再び戻ることを祈念しているのであろう。

 2曲目はメンデルスゾーン:交響曲第4番《イタリア》。メンデルスゾーンは、1831年2月のローマ教皇就任式とか謝肉祭で強い印象を受け、それを盛り込んだ作品を書こうと考え作曲にとりかかったのが《イタリア》とのこと。第1楽章Allegro vivace はA-B-A'のソナタ形式。明るく快活な第1主題で始まる。マエストロ・広上淳一は腕を回してOEKを鼓舞。Obソロが綺麗。一転して哀愁味を帯びたと書かれる第2楽章Andante con motoは、メンデルスゾーンの恩師で作曲家のツェルターが死去した のでその思い出を込めたのではないかと言われている。第3楽章Con moto moderatoは、ゲーテの『りりーの庭園』からの霊感をスケルツォにした作品で、気品を保った楽章である。HrのファンファーレにFlが応え、プログラムにある田園情緒が醸し出される。 第4楽章Saltarello. Prestoは急。サルタレロは、ローマやナポリで流行した急速な民族舞曲である。Tpによる珍しい通奏低音もあり、熱狂的幕切れなのだが、終了前に同じくメンデルスゾーン:交響曲第3番《スコットランド》第3楽章の一部が再現さ れる。メンデルスゾーンはイタリアでの喧噪の内にふとスコットランドの哀愁を思い起こしたのであろう。

 休憩を挟んで、Hr4、Tb3が加わり3曲目はヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇《こうもり》序曲。Clソロと鐘に続いてタンタンターンタタタタタと喜歌劇場面が登場。Obソロもあり、ワルツとなり、タラタラタラタララタタと急転直下コメディはフィナーレ。

 アンコール曲を除き4曲目以降の作曲者はすべてはヨハン・シュトラウス2世であり、4曲目はポルカ《狩》。Kick(バスドラム)が狩の開始を告げ、Tbのユニゾンで狩。猟銃の発射音は陸上競技用のピストル音だったのかは不明だが、かなりの音量であり、臨場感溢れる一曲。

 5曲目はポルカ《クラッペンの森にて》。プログラムよると、クラッペンの森とはウィーン郊外に広がる森とのこと。プログラムではこの曲には「鳥笛」が活躍するとあり、今回はカッコウ笛が登場。打楽器奏者が舞台向かって左、右と 登場。確かに鳥は場所の移動が激しい。OEKは鳥の習性も熟知していたようだ。

 6曲目はワルツ《Wein, Weib und Gesang 酒、女、歌》。プログラムにもあるのだが、AIでは、「酒、女、歌を愛さぬ者は、一生愚か者のままだ」("Who loves not wine, women and song, remains a fool his whole life long.")という古い格言が 元になっているそうだ。イントロは讃歌風だが、ワルツに変わると上品なワルツ。Weibには「(しばしば軽蔑的に)」の意もあるようだが、放蕩的でなく上品。作曲者の「十大ワルツ」だそうだ。

 7曲目はポルカ《Leichtes Blut うわき心》。Leichtes Blutは「心うきうき」の意で、うわきで心うきうきの人も在るかもしれないが、単なる「心うきうき」で、「うわき心」は誤訳のようだ。従って曲想は軽いステップで心うきうきが表現される。

 8曲目はワルツ《美しく青きドナウ》。Hrのファンアーレで開始。ドウナウの穏やかな流れと思いきや、最初は序奏第1ワルツから第5ワルツで構成される無伴奏四部合唱曲として作曲されたこの曲、今はオーストリアの第2の国家と呼ばれる曲は、1拍目 のsfが効果的に進行。高揚感に溢れOEKによる華麗なワルツは終了。曲後マエストロ・広上より新年の挨拶「オーケストラは人々の心のささえ」がありヨハン・シュトラウス2世作品集は終了した。アンコール曲は、ヨハン・シュトラウス1世:《ラデツキー行進曲》。マエストロ・広上の盛り上げ重視の拍手指示に聴衆ものりのりで「楽しかった」の声が聞こえたアンコールであった。

 さて、今年のニューイヤーコンサート会場の金沢歌劇座は低音が響かないホールであり、ウィンナー・ワルツ曲では問題は無かったのだが、ブラーム等の重厚な交響曲を演奏する時は、Cbを増やす必要があるだろう。桂冠指揮者井上道義が言っていた「ホールのバラン ス」には心して欲しいものである。帰りには金沢市増泉(有)茶菓工房たろう製「どら焼き」を頂いた。今年は抹茶味付きこしあんの逸品であった。ごちそう様でした。


Last updated on Jan. 10, 2026.
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