3月8日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第491回定期公演PH
指揮:沖澤のどか、ピアノ:牛田智大
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

English
PC版へ

 「沖澤のどか&牛田智大 OEKを再発見、新発見」と題するオ−ケストラ・アンサンブル 金沢(OEK)第491回定期公演。指揮:沖澤のどか、ピアノ:牛田智大に期待して石川県立音楽堂 に向かった。

   プレトーク、ロビー・コンサートは無かったようだ。

 コンサート1曲目はプロコフィエフ:交響曲第1番《古典》。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2対称配置。コン・マスはヤングさんが復帰。第1楽章Allegroはソナタ形式。軽やかなイントロで、Fgの通 奏低音が第1主題と抒情的な第2主題を支える。第2楽章Larghettoは、Vnによるスケルツオ。第3楽章Gavotta(Non troppo alllegro)は、プログラムによると「プロコフイエフはメヌエットの代わ りにバロック期の古典舞曲ガヴォットを用いている」とのことで、6世紀頃フランスを中心に流行した活発で優美な二拍子の舞曲。確かに優美なのだが短く終了。第4楽章Molto vivaceはソナタ 形式。Flソロが綺麗。マエストロ・沖澤のどかは、切れ味鋭く、明るい未来を望むような軽妙さで突っ走しり、終了。

 2曲目はモーツァル:ピアノ協奏曲第24番。Timpが舞台上段から下段に移動。第1楽章Alleghroはソナタ形式(第1主題と第2主題を提示し、それらに基づいた展開部を置く。最後に、再び第1 主題と第2主題を再現する)。不気味な出だしにいかにもモーツァルトらしい美しい旋律が交錯する。牛田智大さんのPfソロ開始。彼のピアノは繊細で、綺麗だ。中間部のソロも丁寧な演奏。 カデンツァも、誰の曲かは分からないが、間の取り方が上手く、終了。第2楽章Larghettoはロンド形式、即ち 同じ旋律(ロンド主題)を何度も繰り返す。ソーソーソドドだと思っていたら、 この楽章は変ホ長調。従って、シ♭ーシ♭ーシ♭ミ♭ミ♭ーソレミ♭ファシ♭ーシ♭シ♭だったようだ(山縣1980『音楽通論』)。一般的にモーツァルトの音楽は綺麗で、好きだという人が多い。 この要因はどうも「分かり安さ」にあるようだ。さて、音楽は弦楽器と木管楽器が主題を反復し、中間部ではObとFgの対話があり、短いカデンツァで終了。第3楽章Allegrettoは変奏曲。第1楽章 の第1主題と8つ変奏曲とコーダで燦然と終了。アンコールは、吉松隆:《ピアノ・フォリオ・消えたプレイアドによせて》。牛田智大さんの間の取り方が冴え渡った瞬間であった。

 休憩を挟んで、3曲目はフランス近代音楽のエスプリであるArthur HONEGGER、アルチュール・オネゲル:交響曲第4番《Delicia Basilienses、バーゼルの喜び》。美しい町スイス第3の都市バー ゼルに寄せてオネゲルが書いた交響曲。第1楽章Lento e misterioso -Allegroは、HrとTpによるミステリアス的イントロ。バーゼルの町が神秘的なのかは不明だが、曲は田園風に爽やかな甘美さ に移行し、終了。第2楽章Larghettoは、私の持つCDの解説によれば、パッサカリアのテーマ、清澄なテーマ、Z'Basel an i'm Rhyn(das Baslerlied、バーゼル市の非公式賛歌)からなる。Flソロ があり、ドーミレーシドというバーゼル賛歌が挿入され終了。第3楽章Allegroは、Pfによるイントロの後ロンド、パッサカリアそしてフーガを併せ持つ曲想が展開。ここでもバーゼル民謡Basler Morgenstreich (バーゼル朝の悪戯)が使われているそうだ。VcとClの対話があり、高揚し、一旦停止。コーダはpとなり、ポロンと何かを落としたように終了。CDの解説に寄れば、「友人がポンと肩を叩いて去っ て行く感じ」とのこと。アンコ−ルは、芥川也寸志:《トリプティーク》より第2楽章〈子守歌〉。弦楽の綺麗なlullabyであった。

さて、今回は洒脱を売り物にするフランス近代音楽のエスプリがメインだった訳だが、現代音楽はモーツァルトの綺麗さに比較すると「分かり安さ」の点では劣るのだが、12音技法もある現代音楽 は拒否反応だけでは済まされない。綺麗さの定義も時代と共にに変化していると言えるだろう。OEK益々の進化に期待しよう。


Last updated on Mar. 08, 2025.
コンサート・レビューへ