1月11日OEK第489回定期公演PH

1月11日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第489回定期公演PHニューイヤーコンサート2025
指揮:松井慶太、ソプラノ:鈴木玲奈
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 オ−ケストラ・アンサンブル金沢の2025ニューイヤーコンサート。今年は、ソプラノ・アリア付。鈴木玲奈さんのアリアに期待して石川県立音楽堂に向かった。

   プレ・コンサート、プレ・トークは無かったようだ。
 舞台手前とパイプオルガン前に花が飾られ新春モード。OEKは8-6-4-4-2の対向配置。Hr4、Tb3、Tp2にHpが加わる。コンサート1曲目はヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇《Die Fledermaus、こうもり》より序曲、〈侯爵様、あなたのようお方 は〉。序曲は、Allegro vivaceタタタ トルルルルルと激しく開始。この序曲はオペレッタの中の旋律がピックアップされている。続いてObソロが綺麗。曲はワルツでタタタタタタ タタタタタタタラタッターターとなりウィーンの舞踏会を思 わせる。中間部でもObが綺麗なソロを披露。後半はタタタとタタタタタタが回想され疾風怒濤。Piu vivoのコーダで生き生きと、締めはBD(大太鼓)のドンで終了。ニューイヤーコンサート幕開けに相応しい序曲であった。アリア<侯爵様、あ なたのようなお方は〉は、喜歌劇《こうもり》第2幕小間使いアデーレのアリア。アイゼンシュタイン家の小間使いのアデーレは女優のオルガと名乗り舞踏会に参加。アイゼンシュタインがフランスの貴族ルナール侯爵と名乗り現れ、女優オル ガに引き合わされ、「ある召使いにそっくりだ」といわれ、何をおっしゃいますかと歌うアリアである。Sop鈴木玲奈さんは純白のドレスで登場。"Mei Herr Marquis, ein Mann wie Sie Sollt' besser das verstehn.(侯爵様、あなたのような お方は もっとよく理解力を働かさねばいけません)と歌う。アデレーデがアイゼンシャタインを嘲笑する部分タタタ アハハハは、Allegretto3拍子で、コロラトゥーラ・ソプラノを鈴木玲奈さんは遺憾なく発揮。優しいドイツ語のアリアであった。

 2曲目はサティ(ドビュッシー編曲:《ジムノペディ》第1番、第3番。OEKは金管部門は全員退席。木管はFlのみ。この曲は元来ピアノ曲なのだが、サティの友人ドビュッシーが(室内)オーケストラ用に編曲したそうだ。第1番、第3番共 中間部にサティの原曲が織り交ぜられているが、ドビュッシー風は感じられず、静かで《こうもり》の急に対する緩として静かに終了。

 3曲目はショスタコーヴィチ:《タヒチ・トロット》。OEKはTB1、Tp2、ショスタコーヴィチ得意のXyl、Orgが入る。Orgはマエストロ松井慶太が担当。原曲は《ふたりでお茶を》とのこと。ウィキペディアによると「室内楽的なテクスチュアと、繊細な音色の楽器の独奏とを活用することによって、柔和で瀟洒な印象をかもし出している」 とのことで、打楽器が活躍する《ふたりでお茶を》変奏曲。 中間部以降Tpが大活躍で終了。

 4曲目は、ビゼー:歌劇《カルメン》より前奏曲、第3幕アリア<何を恐れることがありましょう>、第3幕への間奏曲、第2幕ジプシーの歌。まず有名な前奏曲。力強く華やかな旋律で開始。エスカミーリョが歌う<闘牛士の歌>が続き、カルメンの 悲劇的死を暗示して終了。次いで《カルメン》中でアリアと名付けられた唯一のアリア<何を恐れることがありましょう>。ミカエラはホセに会うために山の中にやって来て決意を歌う。ソプラノ鈴木玲奈さんの情感溢れる歌唱。《カルメン》では 間奏曲は2曲あるが、続いては第3幕へ間奏曲。HpとFlが《アルルの女》を効果的に披露。最後は、第2幕<ジプシーの歌>。酒場でジプシーの女たちがタタタ タラララと熱狂的に踊る。本来は歌(Chanson)なのだが、OEKの熱狂的演奏による興奮 の頂点で終了。

素心蝋梅
  休憩を挟んで、5曲目はヨハン・シュトラウス2世:独唱付きワルツ《Fruhlingsstimmen、春の声》。タラララララタラララララの序奏の後"Die Lerche in blaue Hoh entschwebt、ひばりが青い空に飛び"と鈴木玲奈さんがコロラトゥーラ・ソプ ラノを遺憾なく発揮。Obとの対話の後コーダで春の喜びが頂点に達し、終了。尚、金沢市兼六園梅林では素心蝋梅が咲き出した。1月10日の画像を添付する。
 
 6曲目以降、ヨハン・シュトラウス2世の歌劇《騎士パズマン》よりチャールダーシュは、チゴイネルワイゼン風の緩急コントラストの妙。ポルカ・マズルカ《蜃気楼》は静かでゆったりと揺れ動く様子。シャンパン・ポルカは打楽器がシャンパン を開ける効果音を演出。ポルカ《観光列車》は出発の合図や警笛が聞こえる。いよいよワルツ《美しく青きドナウ》。AIによると「ドナウ川の水の色は、場所によって異なります。たとえば、ブラチスラバやウィーン、ブダペストでは薄緑色で濁って いる場合もありますが、リンツでは明るい青色に見えたという報告もあります」とのこと。この《美しく青きドナウ》、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートの如く指揮者が構えた時点で拍手、団員の挨拶と思いきや、マエストロ松井慶太と 鈴木玲奈さんが挨拶をした後団員の「あけましておめでとうございます」となった。何もウィーン・フィルを真似る必要はない訳でこれも一興。さて曲はTb3、Tub1の布陣でドミソソとゆったりと開始。ドウナウの穏やかな流れと思いきや、最初は序奏第1ワ ルツから第5ワルツで構成される無伴奏四部合唱曲として作曲され、《美しく青きドナウ》という曲名は無かったそうだ。その後曲名は彼の父が書いた《ドナウ川の歌》に由来して決められたようだが、誰がこの曲名を決めたのかは分からない らしい(edy music)。イ長調の第5ワルツで雄大さが頂点に達し、コーダの前で一旦停止、コーダでは第1ワルツが奏され、弦楽が急き立てるように奏して終了。OEKの華麗なワルツであった。

 さて、ニューイヤーコンサートでソプラノ歌手の出演を企画したのはマエストロ松井慶太の慧眼であった。お蔭で素敵なニューイヤーコンサートとなった。アンコールはお馴染み《ラデツキー行進曲》。聴衆の拍手で盛り上がり終了。帰りには金沢 市増泉(有)茶菓工房たろう製「どら焼き」を頂いた。「NEW YEAR CONCERT 2025」とあり今年はイチゴ味付きこしあんの逸品であった。ごちそう様でした。
Last updated on Jan. 11, 2025.
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