5月24日OEK第493回定期公演PH

5月24日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第493回定期公演PH
指揮:鈴木秀美、
ソプラノ:中江早希、テノール:谷口洋介、バス:氷見健一郎
合唱:コーロ・リベロ・クラシコ、石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「ハイドンが描く天地創造」と題するオ−ケストラ・アンサンブル 金沢(OEK)第493回定期公演。家には木岡編1988『Die Schopfung』があり、これを持って雨が降ってきたので車で石川県立音楽堂に向 かった。金沢駅に到着したが、西口駐車場及び他の駐車場は満車。うろうろしていたところ偶然無料駐車場があり、なんとか駐車でき、音楽堂に到着。

   音楽堂到着時に拍手が聞こえ、2Fに上がると何も無かったよう。即ち、プレトークがあったようだが、聞き逃したようだ。

 今日のコンサートはハイドン:オラトリオ《天地創造》1曲のみ。尚、"Schopfung"は「創造」の意であり、「天地創造」は"Die Schpfung der Welt"が正しい。しかし、Schopfungには「(天地) 創造」ともあり誤訳ではなさそうだ。さて、合唱のコーロ・リベロ・クラシコが入場。この合唱団は、プログラムによれば声楽アンサンブルを中心に創設されたプロフェッショナルな30名程の合唱 団。続いて弦楽5部8-6-4-4-2の対向配置(但し、Cbは舞台向かって左)、Hr2、Tp2、Tb3のOEK、指揮の鈴木秀美マエストロ、Gabriel役のソプラノ中江早希さん(アルトはいない)、Uriel役のテノール谷口洋介さん、 Raphael役のバス永見健一郎さんが入場。第1部序曲1aが始まった。この序曲(Sinfonia)は"Die Vorstellung des Chaos(混沌の描写)"。始めはうごめくような混沌の表現。中間部でcresc.し、 Flのグリッサンドに続いてffの六連符。これは次の1b Im Anfange shuf Gott Himmel und Erde(初めに神は天と地を想像された)の予告。ppで序曲は終了。続いて、バス永見健一郎さんのRecitativo。 すぐ合唱となる。合唱団は小人数だがレベルは高く、ボリューム満点。前述した"und es ward Licht(光いでぬ)"に続いてffの4連符。ついに光だ。我が国の『古事記』でも天照大御神(あまてらすおおみかみ)が 籠り、暗くなった高天の原を天宇受賣命(あめのうずめのみこと)の所作で天照大御神出でましし時、高天の原も葦原中國も、自ら照り明りき(倉野校注1997)に等しい。2曲はテノール谷口洋介 さんのRecitativoと合唱。4曲 Mit Staunen sieht das Wunderwerk(喜ばしき天の軍勢は)では、ソプラノ中江早希さんがコロラトゥーラを発揮。第1部の終曲13曲Die Himmel erzahlen die Ehre Gottesは は有名な「あまつそらは神のみいつと」。中間に三重唱を挟み、圧倒的コーロ・リベロ・クラシコによる歌唱。"und seiner Hande Werk zeigt an das Firmament(天空は神の御手の業を示す)"で終了。

 休憩を挟んで、第2部14曲はソプラノのRecitativo、Und gott sprach: Es bringe das Wasser(神はいわれた「水の中に活けるもの多くすみて」)で始まる。続いて15曲ソプラノアリアAuf atarkem Fittige (力強き羽ばたきもて)は中江早希さんによるコロラトゥーラが冴え渡る。18、19曲では三重唱が綺麗。27曲はソプラノ中江早希さんと、テノール:谷口洋介さんのDuoが綺麗。途中からバス永見健一郎さんが 加わり、より綺麗。attaccaで第2部終曲28はVollendet ist das grosze erk(大いなる御業はなりぬ)。即ち、神は造ったすべてのものを見て、御業は成りぬと合唱が歌い、alleluja allelujaと感動的に終了。 allelujaは仏語。英語ではhallelujah、独語ではhallelujaである。

 第3部は29曲Aus Rosenwolken bricht(紅そむる空から)はHr、Flソロを挟み、テノールのRecitativo。Raphael役がアダム、Gabriel役がエヴァ(イブ)役となる30曲Von deiner Gut, o Herr und Gott(おお、 主なる神よ、天地は御身の恵みに満てり)は、ソプラノとバスの二重唱。"Ewigkeit, in Ewigkeit(永遠、永遠に)"、「神に、創造主に、私達あなたを永遠に賛美します」で終了。33曲O glucklich Paar, und glucklich immerfort(おお、幸福な夫婦よ、いつまでも幸福であれ)は、テノールのRecitativoでアダムとエヴァがこれからもずっと幸せでいるがよいと歌う。終曲34曲Singt dem Herrenalles Stimmen (すべての声よ、主に向かいて歌え)は合唱によるフーガでAmen、Amen(まことに、まことに)と感動的に神を讃えて終り。マエストロ鈴木秀美による熱演であった。

さて、今回は現代的クラシック音楽が展開されたのだが、マエストロ鈴木秀美は古楽器にも造詣が深いようだ。今回の《Schopfung》を古楽器で演奏するとどうなるのかと、ふと思ったのだが、それはさて置き、 素晴らしい今回の演奏に敬意を表したい。尚、合唱団のコーロ・リベロ・クラシコは30名程度だが、素晴らしい音量。私はモントリオールのノートルダム教会でデュトワ指揮モーツァルト《レクイエム》を聞い たが、合唱団は20名程度であった。即ち、外国では合唱団の人数は30名程度が一般的なのだ。とすると、金沢で200名の合唱団は何なのか?再考の余地はありそうである。


Last updated on May 24, 2025.
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