4月17日OEK第475回定期公演PH

4月17日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第475回定期公演PH
指揮・ヴァイオリン:エンリコ・オノフリ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 1月8日の2024ニューイャーコンサートは能登半島地震で中止となり、同じプログラムをマエストロ・エンリコ・オノフリが弾き振りするオ−ケストラ・アンサンブル金 沢の定期公演。西金沢ー金沢間の電車賃が190円から220円に値上げされたことに驚きながら石川県立音楽堂に向かった。

   プレ・コンサートは無し。
 コンサート1曲目はヘンデル:序曲。変ロ長調 HWV 336。ヘンデルの序曲はHWV336、337、342の3作品があり、変ロ長調 HWV 336は、プログラに詳しいが、本来はオラトリオ《時と悟の勝利》の序曲として書かれたものの作品は採用されなかっ たらしい。OEKは8-6-4-4-2のVaとVcが入れ替わった通常配置。マエストロ・オノフリはVnの弾き振り。マエストロによるVnソロの流麗さが光った短い序曲。

 2曲目は、レオ:4つのヴァイオリンのための協奏曲。4つのVnは、マエストロ・オノフリ、今回のコン・マス水谷晃、江原千絵、ヴォーン・ヒューズの4人。VcとCbが後ろセンター。両脇には、OEKのVn奏者が4、5人ずつ第1Vnと第2Vnを担当 したようだ。荘重なLargoであろう第1楽章は4人のVnソリストのテクックが冴える、緩いテンポのバロック音楽。レオはイタリア・バロック期の作曲家だそうだ。Fugaによる早いテンポの第2楽章。愁いを帯びた緩い第3楽章。Vivaceであろ う第4楽章は高揚し、格調高く終了。Vivaldiで代表されるバロク音楽作曲家は急ー緩ー急ー緩の繰り返しを原則としていが、レオもその典型であった。

 3曲目はヘンデル:《水上の音楽》より。《水上の音楽》は第1、2、3組曲があり、プログラムでの第11曲序曲は第2組曲の1曲目。マエストロは指揮のみ。HrとTpが新年を祝うかの如く高々と演奏されて、開始。成る程、マエストロはコン サート1曲と2曲目で大晦日を表し、《水上の音楽》で花火が打ち上がる"Happy New Year"を演出したのだ。続いて、有名な第12曲アラ・ホーンパイプ。アラは伊語でa + la、即ち「拡声部に角を用いた木笛によって」の意で、木管楽器が主であり、 勇壮な曲想。Obのソロも綺麗。一転して弦楽が綺麗な短い第16曲メヌエット。次いで第17・18曲はブーレT・U。bourree(仏)はオーベルニュ地方の民族舞踊で、テンポの早い舞曲。続いて、第2組曲へ戻り、第14曲はラントマン。Lentamente(伊) は、遅く、ゆっくり。のびのびとしたワルツ。第15曲は再びブーレ。きびきびとして、早く進行。ここで第3組曲となり、第19・20曲メヌエットT・U。Picのソロが効果的。第21・22曲はカントリー・ダンスT・U。country danceは「2列になっ て円形・方形または列を作り、男女が向かい合って踊る一種の対舞」。attaccaで第2組曲に戻り、第13曲メヌエット。このメヌエットはアラ・ホーンパイプの続編であり、高揚し、終了。新年のお祝いがめでたく終わった訳だ。

 休憩を挟んで、4曲目はモーツァルト:3つのドイツ舞曲 K.605。第1曲ニ長調、第2曲OEK弦楽5部は8-6-4-4-3の対向配置。第1曲ニ長調、第2曲ト長調、第3曲ハ長調《そりすべり》と短い舞曲。第3曲にはSleigh bellが用いられる。モーツァル トは《そりすべり》という曲も作曲していて、故郷ザルツブルク地方のそり音楽を偲ばせるとのことだが、残念ながら音が小さ過ぎた。Sleigh bellはそりの鈴で馬具又はそりに数個取り付ける鈴であり、もっと大きなハンドベル相当のシャンシャンと なる鈴を使用すべきであった。

 コンサート最後の曲は、モーツァルトのセレナーデの中で最も長大でシンフォニックな作品であるセレナーデ第7番 K.250《ハフナー》から5つの楽章を抜き出して交響曲に仕立てられた、交響曲ニ長調。従って、この交響曲には番号は付いてい ない。第1楽章Allegro maestoso - Allegro moltoは友人の娘の結婚式用に書かれたそうで、溌剌とした曲想。Tpがお祝いを演奏し終了。第2楽章はMenuetto galante。galante(伊)は「女性に対して親切な行為」でありHrのユニゾンが綺麗。 タンタレラとモーツァルトらしい覚えやすい主題が演奏される。第3楽章Andanteは珍しいTpの通奏低音が引き立てる。第4楽章Menuettoを挟み、第5楽章はAdagio - Allegro assai。マエストロ・オノフリは体を大きく使って指揮。ソロの箇所では pに落とし、ソロを聞かせる演出。AdagioからAllegro assaiとなり、交響曲風に終了した。

 アンコールは、モーツァルト:交響曲第41番《ジュピター》第4楽章。《ジュピター》になると室内オーケストラと言うよりは交響楽団になるのは当たり前。初期のOEKを知る私としては様変わりに感心するばかり。OEKは室内楽曲では団員を大幅 に縮小することを前提に、思い切ってマーラーを演奏できる交響楽団に変身すべき時なのかもしれない。何度も言うが、名前はOEKのままで良い。


Last updated on Apr. 17, 2024.
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