5月4日歌劇≪売られた花嫁≫ハイライト、指揮:レオシュ・スワロフスキー、
ソプラノ:テレザ・マトロヴァ、テノール:トーマス・チェルニー、 澤武紀行、バリトン:栗原峻希、バス:森雅史他
合唱:東京オペラ・プロデュース合唱団、語り:木村綾子、K.BALLET STUDIO、管弦楽:ヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団
石川県立音 楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 スメタナ:歌劇≪売られた花嫁≫は金沢プレミエである。風と緑の楽都音楽祭の一環のためハイライトだが、本場のヤナーチェク・フィル ハーモニー管弦楽団をマエストロ・レオシュ・スワロフスキーが指揮し、ソリストもチェコからの来演につきチケットを購入しておいた。自転車で西金沢駅に行き、電車で金沢駅に到着後石川県立音楽堂に向かった。

 あらすじは、「マジェンカは親に恋人のイェニークとの結婚を認めてもらえないばかりか、裕福な農場の知恵遅れの息子ヴァシェクとの縁談が持ち上がっているため浮かない気分。イェニークは、 自分は昔継母との折り合いが悪く家を飛び出したと身の上を語る。その後イェニークは結婚仲介人ケツァルから金貨300枚を受け取り、彼女はミーハ(ヴァシェクの父親)の息子意外とは結婚しない という条件で、マジェンカのことはあきらめることを承知する。村の広場にマジェンカが現れ、イェニークがケツァルと交わした契約書を見せられ泣き出し、『ヴァシェックと結婚する。私は売ら れた花嫁(The Bartered Bride)になる」と言い出す。そこへミーハ夫妻が登場。『彼女はミーハの息子と結婚する』と宣言。この時イェニークが進み出て、『自分は行方不明になっていたミーハの 息子だ』と名乗り、契約書通りマジェンカと結婚すると告げる。即ち、イェニークとヴァシェクはミーハ家の腹違いの兄弟だったのだ。これで一件落着、村人達はマジェンカとイェニークの結婚の 準備にとりかかる」というオペラ・ブッファ。
 有名な序曲が始まる。ヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団の弦楽五部は14-12-10-8-6の通常配置だったようだ。マエストロ・レオシュ・スワロフスキーのきびきびした指揮の下、音量も普 段聞き慣れているオ−ケストラ・アンサンブル金沢よりも格段大音量で、タン・タリラリラと切れ味鋭く開始。序曲後木 村綾子さんの語りがあり、
 第1幕は合唱で開始。東京オペラ・プロデュース合唱団は少人数でも素晴らしい。その後、テレザ・マトロヴァさん演じるマジェンカとトーマス・チェルニーさん演じるイェニークの綺麗な 二重唱。第1幕最後はK.BALLET STUDIO団員であろうポルカで締め括る。
 第2幕は村の居酒屋の場で、ビールの歌が披露される。私の持っているCDの英語版では、"Beer's no doubt a gift from heaven"とあり、チェコ(モラヴィアを含む)では、 ビールは天国よりの贈り物なのだ。私もウィーンから列車でモラヴィアの第1都市ブルノを見てプラハへ向かったのだが、ピルスナー・ビールの美味しかったことが思い出される。ブルノの教会の写 真を添付する。

ブルノ
さて、歌劇に戻ると澤武紀行さん演じるヴァシェクが登場。"MA..ma..ma..matica"と吃音の歌詞を熱演。次いで、イェニークのアリアがあり、イェニークはケツァルより金貨300枚を受け取り、ミー ハの息子以外とは結婚しないことを条件にマジェンカを諦めることを承知する。村人は、恋人を売ったと非難して終了。
 第3幕は、旅芸人一座がやってくる。Balletである。このバレーがまたウィンナーワルツを見ているようで素晴らしかった。次いで、マジェンカは契約書を見せられ切々たるアリアを熱唱。 これも感動。マジェンカの両親とミーハ夫妻が登場。マジェンカはミーハの息子と結婚すると宣言する。イェニークは自分は行方不明になっていたミーハの息子だと名乗り、契約書通り マジェンカと結婚すると告げる。ここで、ケツァルは悔しがり舞台袖に退場。村人達は、"let's prepare for the mariage!"と歌い、大団円。 全曲を聴きたくなるフィナーレであった。

 さて、金沢プレミエのスメタナ:歌劇≪売られた花嫁≫ハイライトは終了した。金沢と人口が同程度のモラヴィアの第1都市ブルノで弦楽五部14-12-10-8-6のヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽 団が存続していることは、やはり欧州の底力を感じる。金沢には歌劇座がある。ワーグナーの歌劇を上演できるよう、OEKもせめて名前はそのままにしてでも、弦楽五部を12-10-8-6-4に増大できないか と痛切に感じる。但し、定期公演ではOEK得意の室内楽曲を必ず含むことを条件にしてだが。又、本公演のヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団指揮者、マエストロ・レオシュ・スワロフスキーさん に次期音楽監督へのオファーを出してみては如何だろうか。彼は、序曲では大音量、台詞の伴奏はpと使い分けることができる名手と推察した。ダイナミックさと繊細さを兼ね備えたOEKに変身すること 請け合いだ。期待したい。


Last updated on May 04, 2023.
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