10月26日OEK第473回定期公演PH

10月26日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第473回定期公演PH
指揮:ジョン・アクセルロッド、ピアノ:津田裕也
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「津田裕也 2019年のOEKとの共演で絶賛を受け再登場!」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢の定期公演。マエストロ・ジョン・ アクセルロッドとは何者?津田裕也さんのピアノにも期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   プレ・コンサートは無かったようだ。
コンサート1曲目は、ベートーヴェン:《レオノーレ》序曲第3番。OEK弦楽五部は8-6-4-4-3対向配置。金管はHr4、Tb3、Tp2。コン・マスは小川響子さん。厳かなイントロで開 始。続いて高揚の後迫力あるfff。OEKは最早フィルハーモニー・オーケストラに音量では引けを取らない。指揮のマエストロ・ジョン・アクセルロッドはきびきびとして迫力 有り。OEKをフィルハーモニー・オーケストラ級にグレードアップさせ、OEKもそれに良く応える。中間部でHrのファンファーレが決まり、pでの主題タタタターンが回帰。Flソロも綺麗。プログラムには、「《レオノー レ》序曲には、第1番、第2番、第3番があるが、最も緊密で明快なのは第3番であろう。ミニ交響曲といっても良い位ドラマティックな作品だ」とある如く、高揚裡に終了。
 コンサート2曲目は、ショパン:ピアノ協奏曲第1番。ショパン・コンクールの課題曲である。OEKTbは1に変更。第1楽章Allegro maestosoのインロは少々暗い出だし。続いて弦楽が優雅な旋律を展開。少 し長い序奏の後津田裕也さんのPfソロが開始。彼の高音部でのアルペジオが綺麗。VcとPfソロとの会話があり、プログラムにある「きらびやかな独奏」が繰り広げられる。第2楽章Romance. Larghettoは夢見心地。私 の持っているCDの解説によると、ショパン自身が「美しい春の月明かりの夜のような・・・」と書いたノクターン風の緩徐楽章。津田裕也さんのPfはブーニンと違って丁寧な演奏だ。第3楽章はRondo. Vivace。活発な スタッカート、即ちタッタッターと飛び跳ねる民族舞踊。PfソロとOEKの応答があり、主題が戻り、フィナーレに突き進む。堂々たるCodaで終了。OEKの音量に独奏Pfの音がかき消される箇所があったものの、素晴らし い協奏曲に仕上がった。アンコールは、ショパン:ノクターン第20番嬰ハ短調遺作。間の取り方が絶妙なノクターンであった。尚、ショパンはポーランドではチョピンと呼ばれる。ショパンは、彼が羽ばたいたパ リにおけるフランス語読みである。
 休憩を挟んで3曲目はシューマン:交響曲第4番(初稿版)。全楽章が続けて演奏される作品。アルンフリート・エードラー(山崎太郎訳)『シューマンとその時代)』では、「1841年12月6日の交響曲ニ短調(後の 交響曲第4番)初演の後。成功にも拘わらず満足できなかったシューマンは、とりあえず作品を撤回し、1851年に徹底的な改稿を施した(第2稿)」とある。一般的には第2稿が初稿より成熟していると考えられるのだ が、ブラームスは初稿の優位性を主張したそうで、今回はその初稿版である。OEKの金管はTbが3に戻り、Hr4、Tp2。第1楽章Andante・con・moto〜Allegro・di・moltoは音楽家を目指すとのきっぱりとした意志表 示で開始。プログラムにある序奏から主部への移行部分の違いは分からなかったが、Tbのユニゾンを経てシューマンの玄人受けするロマンティシズムが展開。一旦停止の後Attaccaぎみに第2楽章Romanza、Andante。Ob が主題を演奏。続いて弦楽による流麗な主題。再び一旦停止し、短い第3楽章Scherzo。主題の変奏を経て第4楽章へゆっくりと移行する。第4楽章はFinale、Allegro・vivace。ここで初めて明るい主題が提示。文字通 り快活に進行し、高揚裡に堂々と終了した。記憶に残るメロデーは無いのだが、彼の熱情を感じる玄人受する交響曲であった。アンコールは:メンデルスゾーン:《真夏の夜の夢》からスケルツオ。メンデルスゾーン はシューマン:交響曲第1番の初演を指揮した同時代の作曲家である。

 さて、マエストロ・アクセルロッドにより、OEKはフィルハーモニー・オーケストラへの変身を余儀なくされた今回の定期公演。OEKの室内オーケストラとしての意義に加えて、この可能性も一興であろう。OEKの名前は そのままに、フィルハーモニー・オーケストラへの"Time To Molt"が来たようだ。


Last updated on Oct. 26, 2023.
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