9月21日OEK第472回定期公演PH

9月21日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第472回定期公演PH
指揮:広上淳一、ヴァイオリン:小川響子、ピアノ:秋元孝介、チェロ:伊藤裕
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「葵トリオ登場 広上淳一の《カルメン》」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢の定期公演。今シーズン開始を飾る広上淳一マ エストロ渾身のコンサートに期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   音楽堂に着くと、ロビーで広上淳一マエストロのプレトークが始まった。片町、木倉町で「流し」を行ったとのこと。又今後は演歌も実施してみたいと言う。是非古賀メロデーを聞かせて欲しいものだ。さて、 コンサート1曲目は、ベートーヴェン:ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲 op.56。Pf、Vn、Vcソリストは葵トリオが受け持つ。即ち、Pfは秋元孝介(A)さん、Vnは小川響子(O)さん、Vcは伊東裕(I) さん。OEK弦楽五部は8-6-4-4-3通常配置。第1楽章Allegroは、低音部による序奏で開始。続いてVc、Vn、Pfの順で登場。若い葵トリオだが、ミュンヘン国際音楽コンクールピアノ三重奏部門で日本人として初の優勝を 獲得したトリオだけに、中々上手い。Vf、Vcの弦楽器にPfの打楽器が調和している。第2楽章Largoはやはり低音部による序奏の後、独奏Vcの優雅な主題が続く。後半テンポが早くなった様に感じ、どこからattacca で続いたかは分からなかったが、第3楽章Rondo alla polacca。polaccaは『The Oxford English dictionary』によれば、"A Polish dance, a polonaise; also The music for it"とあり、ポーランドの民族舞踊。 独奏Vcの主題があり、続いてOEKによるポロネーズ。中間部では、独奏Vfに独奏Pfが続く。ショパンによるポロネーズのCD解説では、「抒情的になると思えば、民族的な要素、ポーランドで愛好され広まったふたり が組になって踊る3拍子のステップダンスによって劇的な盛り上がりをみせるという特徴がある」とあり、堂々と念を押して終了。三重協奏曲を初めて聴いたが、葵トリオとOEKの熱演であった。アンコールは、やは りベートーヴェン:ピアノ三重奏曲op.1-2(第2番)より第4楽章。この曲は協奏曲ではなく純粋の三重奏曲。葵トリオのレベルが高いことを実感させる演奏であった。

 休憩を挟んで2曲目はビゼー(シチェドリン編):カルメン組曲。OEKは通常配置から第1Vnが舞台向かって左、第2Vnが向かって右の対称配置に変わる。この理由は後で分かる。尚、この曲は故岩城広之マエスト ロがOEKを指揮したCDがある如く、OEK黎明期の定期公演で演奏された曲である。これを広上マエストロが指揮する。第1曲イントロダクションは鐘で開始。この曲が岩城好みの理由はT・Bell(チューブラーベル)は勿論、Timp、 大太鼓、小太鼓、木魚、木琴、ビブラフォン等多彩な打楽器が登場するのが理由であろう。広上マエストロの指揮も打楽器陣を鼓舞し、高揚感抜群。第2曲はカスタネットが加わりダンス。フラメンコである。第3曲 第1間奏曲、第4曲衛兵の交代と続き、第5曲カルメンの登場とハバネラ。オペラではハバネラは濃厚に歌われる曲だが、組曲ではさらりと終了。第6曲情景はVcで開始。第7曲第2間奏曲の後、第8曲はボレロ。 この曲は、《カルメン》ではなく、ビゼー:《アルルの女》ファランドールに基づいているとの事。第9曲は闘牛士。オペラで観ると格好の良いエスカミリオの登場だ。打楽器陣は持ち場を変えながら大熱演。第10 曲闘牛士とカルメンに続く第11曲は一転してアダージョ。OEK弦楽の綺麗さが光る。前曲の通常配置から対称配置に変わった理由はこれだったと思われる。即ち、広上マエストロは打楽器陣への鼓舞と共に弦楽部門 の綺麗さを演出した訳である。第12曲カルタ占いは、開始がどこか分からなかったが、第13曲フィナーレは鐘で始まり分かり易い。全曲を回想し、静かにpで終了。OEKの熱演であった。
 終了後拍手に応えて打楽器陣の手拍子パフォーマンス。どこで練習したのかは分からないが、全員間違いなく揃ったのはさすが。アンコールは、会場出口では「ロッシーニ・・・」との表示であり、とにかく闘牛士。 第9曲の再演であったのか。それとも別の、例えばロッシーニ版を演奏したのかは不明なのだが、やはり、闘牛士は盛り上がる。力感溢れる演奏で終了。さて、今回のシチェドリン:カルメン組曲は岩城CDとは異なっ ている。稿の差違かもしれないが、岩城色を越えた広上色は現代的でもある。広上マエストロの更なるOEK定期公演プログラム選曲に期待したい。


Last updated on Sep. 21, 2023.
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