11月30日OEK第474回定期公演PH

11月30日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第44回定期公演PH
指揮:ギュンター・ピヒラー、ヴァイオリン:岡本誠司
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「岡本誠司のパガニーニ ピヒラーの『未完成』」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢の定期公演。パガニーニ及び『未完成』に期 待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   プレ・コンサートは無かったようだ。
 コンサート1曲目は、ロッシーニ:《ランスへの旅》序曲。OEK弦楽五部は8-6-4-4-2通常配置。Tb3、Tp2、Hrは登場しなかったようだ。ズーンズーンと旅の始まりで開始。一転して弦楽が主題を演奏。中間部でObソロ、 Flソロがあり、旅の楽しさを連想させて終了。久しぶりのマエストロ・ギュンター・ピヒラーの指揮は落ち着いて的確であった。尚、プログラムにある如くロッシーニは美食家であった。これについては、「1765年、 パリに最初のレストラン『ブーランジュ』が開かれた。主人は店の看板に『ブーランジュはこの上なく素晴らしいレストランをお分けします』と書いた。『レストラン』とは『強壮剤を意味しました(水谷彰良『ロッ シーニと料理』丸善)」とある。成る程小学館『仏和大辞辞典』では、restaurantの古い用例として「滋養もの、強壮剤;(肉汁で作る)ブイヨン」が記載されている。
 音楽に戻ろう。コンサート2曲目は、パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第4番。第2番が有名なのだが、プログラムにある様にパガニーニは生涯に10曲以上のヴァイオリン協奏曲を書いたそうだ。第1楽章Allegro maestosoのイントロは弦の高音で開始。協奏曲では珍しいTb3人が入りpで演奏。弦のピッチカートを挟み、岡本誠司さんのVnソロが開始。パガニーニはアンコールで演奏される奇想曲を連想するのだが、この曲は奇抜さ を抜きにしたオーソドックスで綺麗な曲想。岡本さんはこれを丁寧に演奏。終曲前のカデンツアでは飛ばし弓が入り、ラ・カンパネラも挿入され、フィナーレは堂々と終了。第2楽章はAdagio flebile con sentiment。 flebile(伊)は物悲しく、sentiment(伊)は情感。即ち、「情感を込めて物悲しくゆっくりと」である。短い楽章だが、物悲しく情感を込めて岡本さんのソロが演奏される。第3楽章はRondo galante andantino gaio。 galante(伊)は女性の気を引く。gaio(伊)は陽気な。即ち、「女性の気を引く、アンダンテよりも少し早めで陽気なロンド」が発想記号。一転してこの楽章ではパガニーニ的技巧満載。飛ばし弓あり、何と呼ぶのか分から ないが、トリルしながらのスラーで盛り上がる。Coda前Tpのファンファーレがあり、物悲しさを超越した陽気さで終了。アンコールは、パガニーニ:24の奇想曲第14番。若い岡本さんの今後が楽しみに感じられる 演奏であった。欲を言えば、彼はバッハ国際コンクールヴァイオリン部門で優勝したそうなので、そのバッハを聞かせて欲しかったのだが。
 休憩を挟んで3曲目はロッシーニ:《絹のはしご》序曲。原題は《La Scala di Seta》。即ち、《絹の階段》のようだ。金管楽器は無く、Ob、Flソロが綺麗。この曲も短い曲で、階段をとことこ上りながら高揚して 終了。
 4曲目はシュ−ベルト:交響曲第7(8)番《未完成》。この曲は、未完成作品を除いて7番目の交響曲であるため第7番と呼ばれたが、新シューベルト全集では第8番と記載されているため、紛らわしい。しかし、 OEKのチラシでは、シューベルト:交響曲第7番《未完成》となっているので、マエストロ・ピヒラーは古い楽譜を用いての演奏だったのかもしれない。第1楽章はAllegro moderato。moderato(伊)は抑えたの意。従 って、イントロはVc、Cbのppで開始。続いて、ドソ・ドシドレの主題が提示され、Vcのユニゾンの後第2主題ソー・ドーシドレ。Vcの中継を挟み、これが繰り返され、プログラムにある「大きなドラマを築き上げ」、 全曲終了かのごとく堂々と終了。第2楽章Andante con motoは、牧歌的イントロ。Obソロに、Flソロが続く。客演コンマス町田琴和さんのソロも入り、静かに終了。正に未完成であった。
アンコールはブラームス:ハンガリ舞曲第4番。お馴染みのテンポと強弱が急変する舞曲。マエストロ・ピヒラーも2時間以内に収まった安心感かのびのびと指揮。OEKもそれに応えた演奏であった。さて、今回はTb が3人加わったにも拘わらずfffでの演奏は聞けなかった。つまり、OEK室内オーケストラの味を上手く出させたマエストロの指揮であった。野球界では、二刀流が流行っている様だが、OEKも室内オーケストラとフィ ハーモニー管弦楽団の二刀流を指向すべきなのかもしれない。


Last updated on Nov. 30, 2023.
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