7月13日OEK第470回定期公演PH

7月13日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第470回定期公演PH
指揮:マルク・ルロワ=カラタユー、ピアノ:辻井伸行
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「辻井伸行 シューマンに挑む!ライジングスターの超名曲集」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢 の定期公演。Pfの辻井伸行によるシューマンは勿論、フランス人の父とボリビア人の母をもつマルク・ルロワ=カラタユー・マエストロにも注目し、石川県立 音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートは行われなかったようだ。
 コンサート1曲目はモーツァルト:歌劇《ドン・ジュヴァンニ》序曲。OEK弦楽5部は8-6-4-4-3の対向配置。Hrは二人。Tp、Timpの悲劇的序奏で開始。マルク・マエストロは手を高く上げないが、力強い指揮。序奏 の後一転して軽快。Flソロが花を添える。ドン・ジュヴァンニが殺した貴族の娘の父親である騎士長が石像として蘇り、石像との角逐の末、ドン・ジュヴァンニは地獄へ落ちて終了。
 2曲目は辻井伸行さんが挑むシューマン:ピアノ協奏曲。第1楽章はAllegro affettuoso。affettuoso(伊)は優しいの意。パン・パパーンとオーケストラとPfで開始。続く、ターン・タターンは辻井さんの優しいPf。 私の持っているCDでは、かなり大胆に弾かれるのだが、辻井Pfが正しい。中間部での高揚をTpが華やかに演出。第1主題を遅くした変奏及びClとPfのDuoもあり、カデンツァ。誰のカデンツァかは分からないが、初め は主題と異なる曲想であったが、第1主題が戻り、終了。第2楽章はIntermezzo(Andantino grazioso)。即ち間奏曲であり、Andantino grazioso(伊)はアンダンテよりも少し早く、可愛いらしく。辻井さんの首を 横に振りながらの演奏は文字通り可愛らしい。夢見心地の間奏曲で、映画音楽を聞いているようで、映画のシーンが思い浮かびそう。attaccaで第3楽章はAllegro vivace。優しくから一転して辻井さんの力強い演 奏で開始。OEKも熱演し、vivaceを演出。フィナーレは堂々と終了した。アンコール1曲目は、シューマン:《トロイメライ》 。拍手が鳴り止まず、2曲目はショパン:練習曲《革命のエチュード》。これが又素 晴らしく、満席の聴衆を湧かせて終了した。

 休憩を挟んで3曲目はベートヴェン:交響曲第五番《運命》。Tb二人Tub一人加わる。第1楽章Allegro con brioは、運命の動機で始まる。プログラムでは面白い説が記載されているので紹介しよう。ベートヴェン の弟子ツェルニーの証言では、「冒頭の動機はキアオジという鳥の鳴き声に由来する」との説があるようだ。『世界の原色の鳥図鑑』では、学名はEmberiza citrinellaであり、胸から腹にかけてあざやかなレモン イエローで、ヨーロッパから中央アジアに棲息する黄色いホオジロ科の鳥とのこと。最近のOEKの音量からすると、鳥の鳴き声説は音量としては合致しないと思われるのだが、音楽に戻ろう。マルク・マエストロは 少し早い目に指揮。だらだら伸ばすより心地良い。Hrのファンファーレが3度。中間部のObソロが綺麗。運命の主題が戻り終了。第2楽章はAndante con moto。con moto(伊)は動きをもって。曲が始まると成る程音 楽は動いている。ベートヴェンの意図とマエストロの指揮がぴたりと一致。中間部は行進曲Ob、Fa、ClのTrioが綺麗。OEKもただがんがん演奏するのではなく、マエストロによるff、ppのアクセント付けを見事に提示。 Fgソロもあり、終了。第3楽章はScherzo, Allegro。プログラムにある「うごめくような不気味な低音に導かれてHrが『運命の動機』に基づく主題を勇壮に奏でる」。Va、Vc、Cbの低音部が活躍し、attaccaで第4楽 章はAlegro - Presto。Tp、Tb、Tubによる高らかな序奏で開始。Tb、Tubが入ると華やかだ。後述する如く、もはや室内合奏団とはいえない迫力。何度も念を押して終了した。
 アンコールはR. シュトラウス:歌劇《ナクシス島のアリアドネ》より、ダンス。この曲はフランス的洒脱感あふれた曲。マエストロはフランス人なのだ。さて、前述した如く、もはや室内合奏団とは言えないOEKの 演奏を聴いた訳だが、私の意見としては、オ−ケストラ・アンサンブル金沢の名称はそのままにして、マーラーを演奏できるよう弦楽5部を10-8-6-4-3体制とし、金沢フィルハーモニック・オーケストラ的演奏を可能 にする。但し、プログラムには、縮小編成での室内楽を必ず含むことを条件とする。この体制に移行すべきと思うが、如何だろうか?


Last updated on Jul. 13, 2023.
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