4月21日OEK第467回定期公演PH

4月21日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第467回定期公演PH
指揮:ジャン=クロード・カサドシュ、ピアノ:トーマス・エンコ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「フランスの巨匠カサドシュ初登場!ジャズ界でも注目を浴びる若きピアニストのモーツァルト」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢 の定期公演。フランス音楽・ドイツ音楽の巨匠、87歳のマエストロ・カサドシュは如何に指揮するのか?これに期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   電車が遅れ18:30頃音楽堂に着いた。ロビーでのプレ・トークが行われていたが、ロビー・コンサートは行われなかったようだ。
 2階席には馳石川県知事が隣席。コンサート1曲目はラモー:六重奏のために編曲された6つのコンセールより(弦楽合奏版)。ラモーは5つのコンセール及びプロローグと5幕の抒情悲劇《ダルダニュス》を書 いた17世紀フランスの作曲家。コンセール(en concerts)とは18世紀のコンチェルト形式を指すものではなく「器楽アンサンブルのための」という意味らしい。OEK弦楽5部は6-4-4-2-1だったと思う。VaとVcが入 れ替わった通常配置。最初に演奏される「めんどり」は鶏の鳴き声。「第1メヌエット」は綺麗なメヌエット。「第2メヌエット」を挟み、終曲は「ジプシー風」。カサドシュ・マエストロは体を折り曲げてppの指 示。続くffが効果的に聞こえる。即ち、強弱のアクセントの取り方が上手。流石巨匠だけのことはある。曲はジプシーの踊りで終了。
 


トーマス・エンコ
 2曲目はモーツァルト:ピアノ協奏曲第21番。マエストロ・カサドシュは何故21番を選んだのか?勿論今日は21日だからである。ソリストであるマエストロのお孫さんに当たるトーマス・エンコさんは白のYシャツ で登場。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の通常配置。第1楽章Allegroは序奏の後、Pfのアルペジオで開始。彼の演奏は軽やか。集結部の前にはカデンツァ。誰の作かは不明だが若さに溢れ、躍動的に終了。第2楽章Andante は有名なターンタタタタターン。エンコさんのPfは抒情的に進行。第3楽章Allegro vivace assaiは、フランス風洒脱的ではなく、ドイツ的重厚さ。フランス人マエストロのドイツ音楽に対する造形も深いよ うで、短いカデンツァの後終了。アンコールは公式には、《坂本龍一へのオマージュ》(即興)と掲示されたが、坂本龍一《戦場のメリークリスマス》変奏曲だったようだ。尚、休憩中エンコさんのサイン会が開催 され、私もサインを貰ってきた。その画像を添付する。

 休憩を挟んで3曲目はラヴェル《亡き王女のためのパヴァーヌ》。私の持っているCDの解説では、「音楽の憂うつな気分と荘厳な歩調は、古スペイン宮廷で王女の死を悼んでいるイメージを呼び起こす」とある。 Pavane(仏)は、 16世紀のヨーロッパで愛好された宮廷舞踏およびその音楽である。Hpが加わる。イントロのけだるい曲想を演奏する楽器はと注目していたらHrであった。金星さんはお休み。プログラムには「曲名 を見ると特定の王女のために書いた曲のように誤解してしまうが、ここではパヴァーヌが流行していたような遠い昔の時代の王女がイメージされていると考えればよいだろう」とある。即ち、パヴァーヌの綺麗さに 終始し、余韻を残して終了。ここで、馳知事は退席。

 4曲目は、ベートーヴェン:交響曲第1番。第1楽章Adagio molto - Allegro con brioの序奏は、フランス的洒脱。従って、マエストロ・カサドシュの得意な分野。但し、続いてのアレグロはドイツ的で活発。即ち、 マエストロはドイツ音楽的にも指揮でき、しかも精力的だ。第1Vnと第2Vnが並ぶ通常配置だけに高音がよく響く。第2楽章Andante cantabile con motoは、CDを聞いても分からないのだが、第2Vnが先行、第1 Vnが続くという珍しい形式。第3楽章はMenuetto. Allegro molto e vivace - Trio。メヌエットというよりは、スケルツォに近い。ドイツ音楽では極端なアクセントは用いないのだが、ヴィヴァルディの《四季》の 如くバロック音楽は強弱のアクセントを効果的に使う。即ち、OEKも昔と違って随分音量的にも大きなドイツ的オーケストラになった訳だが、単に大きさだけではなく、強弱のアクセントが大事とマエストロは教えて 終了した。第4楽章Adagio - Allegro molto e vivaceは、強奏の後短いアダージョ。続いて快活に進行。ベートーヴェンの初期交響曲の若々しさを伺わせる。高揚の後、念を押して終了。抑制の効いたベートー ヴェンの交響曲に仕上がった。流石巨匠である。

   アンコールはビゼー:《カルメン組曲》より、アルカラの竜騎兵。何故《カルメン》か?今回のプログラムは仏・独・(日)・仏・独と進行した。従って、(アンコール)はフランスの曲が選ばれる筈。ビゼーには、 確かOEK第1回定期公演で演奏された、交響曲第1番がある。従って、ビゼーを選択したのだが、何故《カルメン》だったのかは不明。これが巨匠の偉大さなのであろう。さて、馳知事が隣席した今回のコンサート。 そろそろ音楽堂には貴賓席を設けておくべきだ。場所としては、2階席最前列中央、又はバルコニー最前列だ。黙って着席、退席するのではなく、貴賓席に登場時、退席時には拍手でお出迎え、お見送りをすべき である。
Last updated on Apr. 21, 2023.
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