2月19日OEK第464回定期公演PH

2月19日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第64回定期公演PH
指揮・チェンバロ:鈴木優人
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「古典音楽の系譜を聴く・奇才カール・フィリップ・エマヌエル・バッハからハイドンへ」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢の定期公演。聴いたことがない 曲が並ぶ。これに期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   13時40分頃音楽堂に到着。ロビー・コンサートは行われなかったようだ。
 コンサート1曲目はC.P.E.バッハ:シンフォニア ト長調。ウィキペデイアによればC.P.E.バッハはJ.S.バッハ(ヨハン・ゼバスティアン・バッハ)が最初の妻マリア・バルバラともうけた次男であり、父よりも、父の友人ゲオルク・フィリップ・テレ マンの作曲様式を受け継ぎ、古典派音楽の基礎を築いた作曲家とのこと。OEKは弦楽のみで8-6-4-4-2の対向配置。Vaは舞台向かって右。VcとCbは左という配置。第1楽章はAllegro di molto。プログラムにあるように、勢いよく開始。いかにも室 内楽的でターンタタタタと続く。フェルマータに続き第2楽章Poco adagio。C.P.E.バッハはテレマンの作風を受け継いだそうで、この楽章はテレマン風。やはりフェルマータに続き第3楽章Presto。駆け抜けるようなイントロで、颯爽と終了。 短く10分位の曲であり、古い歌劇の序曲に相当する交響曲であった。
 2曲目はマエストロ・鈴木優人の弾き振りによるハイドン:チェンバロ協奏曲。HrとObが加わり弦楽5部は4-4-3-2-1。この理由は聞くほどに納得できる構成。第1楽章Vivaceは、Vnで開始。やや長い序奏の後Cembソロが開始。J.S.バッハによるパルティータ を聞くと、Cembの音量が大きく録音されている所為で、Cembも良いと感じる。しかし、マエストロ・鈴木優人のCemb演奏技術は確かなのだが、パイプオルガンが設置された県立音楽堂の大ホールではCembの音は聞き取りにくい。Cembのカデンツアもあり、終了。 第2楽章はUn poco adagioは。Unは「ほんの」の意。弦楽が優しく聞かせるイントロ。カデンツアもある。第3楽章はLondo all'ungarese Allegro assai。伊語allungare、「伸ばす」意と思っていたが、プログラムが正しい。但し、all’unghereseが正式らし い。all'=a+l'は英語では"like the"であり、Unghereseは「ハンガリーの」。従って、all'unghereseは「ハンガリー式の」である。参考までに仏語でア・ラ・カルトは、a la carte「献立表によって」である。さて、ハンガリーといえばジプシー風を思い浮か べるのだが、曲は余りジプシー的ではない。CembとHrのDuoもあり、ffで終了。

 休憩を挟ん3曲目はC.P.E.バッハ:シンフォニア 変ホ長調。Fgも加わる。第1楽章はAllegro di molto。di moltoは「非常に」の意。プログラムにある晴れやかに、しかも元気よく開始。Flソロが綺麗、Hrも華を添える。第2楽章はLarghetto。Largoより やや早くだが、短い中間楽章のためどこが第2楽章であったかは不明瞭。しかも第3楽章Allegrettoに続くため、第1楽章が続いているような感じ。このため終曲の拍手が遅れたのは必然であった。

 4曲目は、ハイドン:交響曲第103番《Drum Roll、太鼓連打》。第1楽章はAdagio - Allegro con spirito - Adagio。Timpの圧倒的Rollで開始。続いてFgによる葬送行進曲風。一転してVnの綺麗なユニゾン。Tpが華を添え、TimpのRoll、Fgが戻り終了。第2 楽章Andante piu tosto Allegrettoは短調で開始。すぐ長調に変わる。このMinorからMajarsへの転調はよくある技法。私も下手ながらギターで弾いているF. Tarrega:《アルハンブラの想い出》もMajarsに変わるとホットする。曲に戻ろう。中間部にはヤング さんの綺麗なVnソロがあり、Flソロも再登場。一旦停止もハイドン風。第3楽章Menuet - Trio -Menuetはスケルツォではない、力強いMenuet。Hr、Tpが加わり華やか。第4楽章Finale: Allegro con spiritoはHrで開始。マエストロ・鈴木を体を大きく使い、 エネルギッシュな指揮。OEKもこれに応える。タタタ タータタタのリズムが躍動的。高揚裡に分かり易く終了。1、3曲目のシンフォニアには無い圧倒的ボリューム。これがベートーヴェンに引き継がれる訳である。。

 アンコールはアンゲラー:《おもちゃの交響曲》第1楽章。この曲の作曲者は最初ハイドンと思われていたのだが、その断片が見つかったためヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの父であるレオポルト・モーツァルトによると考えられていた。私の所持する CD《おもちゃの交響曲》もそうなっている。所が、その後アンゲラーが作曲したという記録が見つかり、アンゲラーに確定したようだ。かっこう笛等はヤングさん、グリシンさん等が担当しての熱演。観客も手拍子し、アンコールに相応しい曲で締め括った。 マエストロ・鈴木による「古典音楽の系譜」はよく分かった。尚、Cembについては、交流ホールで是非聞きたいものである。


Last updated on Feb. 19, 2023.
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