10月20日OEK第460回定期公演PH

10月20日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第460回定期公演PH
指揮:クリスティアン・アルミンク、ピアノ:伊藤恵
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「アルミンクのモーツァルト、伊藤恵のベートーヴェン」と題する指揮者とソリスト共に変更されたオ−ケストラ・アンサンブル金沢の定期公演。ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番《皇帝》は良く聞くが、第4番 は珍しい。又、モーツァルト:交響曲第40番はpopularだが、第39番は中々プログラムに載らない。この様に、聞き慣れていない曲ずくしのコンサートに期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   プレトークは音楽堂前で広上淳一マエストロ、池辺晋一郎さん、及びOEKの松井慶太さんにより行われた。
 コンサート1曲目はベートーヴェン:《コリオラン》序曲。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2mの対向配置。Coliolanとはプログラムによればハインリッヒ・ヨーゼフ・コリン(Corinne、女性名)による劇「コリオラン」に由来する。「コリオラン」とは古代ローマの英雄Coriolanusのことで、 水谷智洋『羅和辞典』によれば、Corioliを占領したローマの将軍で、追放された恨みからVolsci族を率いてローマに攻め寄せたが、母と妻に嘆願されて兵を引いた将軍をいう。従って、曲は堂々たる行軍で始まる。しかし、すぐ悲劇の暗示があり、中間部では牧歌的曲想も含み、短い弦のピッチ カートで終了。《エグモント》序曲、《レオノーレ》序曲は良く聞くが、《コリオラン》序曲は珍しい。

 2曲目はソリストが伊藤恵さんに変更となったベートーヴェン:ピアノ協奏曲4番。伊藤さんは白のドレスで登場。第1楽章はAllegro moderato。Pfソロで開始。その後、オーケストラの序奏があり、これもnovelty、珍しい。続いて《運命》の動機、同音連打があり、カデンツア。誰の曲かは 不明だが、ベートーヴェン自身の曲のように聞こえた。tuttiで堂々と終了。第2楽章Andante conmotoは、プログラムにある「ひきずる」ような主題。オーケストラとPfの対話があり、暗雲立ちこめる曲想。attaccaで、第3楽章はRondo. Vivace。一転して明るく躍動的。ここでTp、Timpが加わ り華やか。変更された指揮者アルミンク・マエストロの力強い指揮もあり、伊藤さんによる短いカデンツアも挿入され、creschendで輝かしく終了。アンコールは、ベートーヴェン:《エリーゼのために》。東京藝術大学教授伊藤さんに相応しい模範演奏であった。

   休憩を挟んで、3曲目はモーツァルト:交響曲第39番。楽器編成ではObを用いずClを採用しているそうだ。従って、チューニングではClがA音を吹いたようで、いつもと違い、これも珍しい。第1楽章Adagio - Allegroは、堂々たる序奏で開始。ハイドン風である。私の持つCDの解説によれば、 これに続く第1主題は優美なカンタービレの「歌うアレグロ」と決然とした《エロイカ》の主題とのこと。弦と管との対話があり、高揚理に終了。第2楽章Andante conmotoはターンタタタタ。即ち、付点のリズム。この主題は繰り返されるのだが、繰り返しの最後は短調に変化する。モーツァルト の作曲の妙である。第3楽章はMenuetto. Allegretto。生き生きとしたメヌエット。Clの二重奏とFlの応当が優美。第4楽章Finare. Allegroは、スピード感溢れるイントロ。この楽章は単一の動機で構成される。一旦停止はハイドン風だが、曲想はやはりモーツァルト。論理的で完全な均衡を保 ち輝かしく終了。

 アンコールは、音楽堂ホール出口及びTwitterでの案内が無いため曲名は不明。Vcで始まる弦楽のみの鎮魂歌風。イントロのVcのffが印象的な曲であった。さて、モーツァルトの交響曲といえば、ドレファミ、即ち第41番《ジュピター》がpopularだが、今回は交響曲第39番。ベートーヴェンのピ アノ協奏曲第4番もしかり。何度も定期公演で取り上げられた曲ばかりで無く、今回のコンサートのように玄人受けする選曲をどしどし取り入れて欲しいものである。


Last updated on Oct. 20, 2022.
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