9月18日OEK第48回定期公演PH

9月18日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第458回定期公演PH
指揮:広上淳一、ヴァイオリン:神尾真由子
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「OEKアーティスティック・リーダー広上淳一就任披露」と題し、今シーズンの開幕を告げるオ−ケストラ・アンサンブル金沢定期公演。神尾真由子さんとのピアソラ《ブエノスアイレスの四季》にも期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   音楽堂に到着すると、ロビーには東京音楽大学を始めTV局からの花輪が飾られ華やかな雰囲気。但し、コロナ禍のためであろうロビー・コンサートは行われなかったようだ。
 コンサート開演前に馳石川県知事、村山金沢市長、マエストロ・広上から今シーズンの期待と豊富を込めた挨拶があった。
コンサート1曲目はコダーイ:《ガランタ舞曲》。ガランタはスロバキア南西部トルナヴァ県ガランタ郡の市(人口約15,000人)であり、薩摩秀昇『図説lチェコとスロヴァキアの歴史』河出書房新社では、トルナヴァ県は織物、食品工業が盛んとある。コダーイは子供の頃約7年間をこの地で 過ごしたそうだ。さて、OEKは弦楽5部が8-6-4-4-3、Hr4人、Tp2人。Vcで開始。Hrのファンファーレ、Obが続き、Clがもの悲しい曲想を演奏。しかし、弦楽も加わり壮大なLentに変わる。Andante maestoso では軽快なジプシー風舞曲。マエストロ・広上は、腕を大きく回しての指揮。「のびのび と演奏しろ」との事だろう。OEKもこれに呼応し、Timpの熱演もあり、続くAllegroのリズムの変化を的確に熱演。フィナーレは高揚の上、「どうだ」とばかり断定的に終了。休憩後のベートーヴェン《英雄》は後述する如く少々おとなしかったのだが、この《ガランタ舞曲》は颯爽たるOEKの快 演が光った。

 2曲目は神尾真由子さんとOEK弦楽部門によるピアソラ(デジャトニコフ編):《ブエノスアイレスの四季》。ピアソラの有名な曲をデジャトニコフが弦楽合奏用に編曲したものだ。尚、 Buenos Airesはスペイン語で、「良い大気」の意。さて、ソリストの神尾真由子さんは真紅のドレス で登場。先ず、プログラムにあるOtono Porteno、「プエルト人(ブエノスアイレス)の秋」。短いイントロに続き神尾さんのVnが登場。短いフレーの後Vcが堂々たるソロを披露。独奏神尾さんに華を添えた。続いてタンゴのリズムも心地よく、カデンツア的神尾さんによるテクニック溢れた ソロも披露された。第2楽章ともいえるInvierno Portenoは「ブエノスアイレスの冬」。南半球と北半球では季節が逆。従って、物憂げな夏つまりヴィヴァルディの「夏」が挿入される。Primavera Portena((ブエノスアイレスの春)はヤングさんのソロで開始。VnとDuo。神尾さんが加わり Trio。Vnがタンゴのリズムを刻み、マエストロ・広上もタンゴを踊る。ここでヴィヴァルディの「春」が引用されたようだが、定かではない。第4楽章とも言えるVerano Porteno(ブエノスアイレスの夏)はCbによる弓をたたくタンゴのリズムが軽快。ここで、ヴィヴァルディの「冬」が引 用されたようだが、これも定かではない。バンドネオンの無い《ブエノスアイレスの四季》ではあった。しかし、協奏曲的曲に対するこれ位のボリュームはOEKの得意とする分野。華麗な演奏であった。アンコールは会場出口にも、ツイッターにも案内がないので、明確ではないのだが、 パガニーニの無伴奏ヴァイオリンソナタだったのかもしれない。テクニックあふれる神尾さんの熱演であった。

 休憩を挟んで、3曲目はベートーヴェン:交響曲第3番《英雄》。第1楽章Allegro con brioは前述の如く、少々おとなしく開始。ピリオド奏法かとも思ったが、違う。しかし、現代のベートーヴェン演奏は大交響楽団がボリューム満点で演奏するのだが、当時はこの程度であったかと 思わせる演奏。中間部でFlソロ、Hrソロがあり、後半はプログラムにある「雄大な楽想」が復活する。第2楽章Marcia funebre, Adagio assaiは、イントロの葬送行進曲に続いてCl、Obソロ。悲しげなFlソロが続き、フィナーレには葬送行進曲が戻り、消えるように終了。第3楽章Scherzo. Allegro vivace -Trioは軽快なスケルツオ。中間部では3本のHrがプログラムに寄れば「決然と戦闘の合図」を告げる。第4楽章はFinale. Allegro molto - poco Andante - Presto。急展開の弦のTuttiに続いて、Cbのピッチカート。Allegroのターンターンタタタターン。Flがテンポを 落としてこれを再現。フィナーレはプレスト。Timpの熱演もあったが、やはりおとなしく念を押して終了。

 アンコールは、演奏終了時間が16時20分と遅くなったため、マエストロ・広上による今後の決意表明のみで、無し。尚、終了後「Junichi Hirokami ARTISTIC LEADER」と書かれた茶菓工房たろう製のどら焼きを頂いた。ごちそうさまでした。


Last updated on Sep. 18, 2022.
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