7月15日OEK第454回定期公演PH

7月15日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第457回定期公演PH
指揮:広上淳一、ヴァイオリン:小林美樹
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「広上淳一 ザ・ロマンテイック!」と題する新規オ−ケストラ・アンサンブル金沢アーティステック・リーダーに就任するマエストロ・広上が 指揮する定期公演。小林美樹さんとのドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲に期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートは行われなかったようだ。
 コンサート1曲目はバッハ(ウエーベルン編曲):《音楽の捧げものより》6声のリチェルカーレ。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の対向配置。マエストロ・広上による颯爽たる指揮で始まったが、ウエーベルン編曲版の所為かバッハらしくなく、しかも交響楽団が演奏する管弦楽曲でもない。 私の持っているCDの解説では、「6声のリチェルカーレは、王に送られた印刷譜では総譜の形で配譜されているので、一見合奏曲にみえるが、他に現存するバッハの自筆譜では、2段譜のチェンバロ曲として記載されており、またチェンバロでも充分ひけるのである」とあり、チェンバ ロ曲としての6声のリチェルカーレなのであり、管弦楽曲として編曲されたウエーベルン編曲版は蛇足ともいえるようだ。従って、何か分からないままに終了した1曲目であった。尚、ricercareはイタリア語で「走り回る」意。
 2曲目はドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲。第1楽章Allegro ma non troppo〜quasi moderatoは、OEKはHr4人となり大型。ソリスト小林美樹さんは銀色にラメが入ったドレスで登場。これもマエストロ・広上による颯爽たる指揮で開始され、Vnソロが始まったが肝心のVnの音がOEKの音量 に負けて聞きずらい。大交響楽団が演奏する協奏曲は独奏者の演奏が聞こえにくいのかもしれない。しかし、小室内楽団が演奏する協奏曲は独奏者の音量が明瞭で綺麗に聞こえる。岩城時代のOEKを聞いてきた視聴者にとっては独奏者の明瞭な演奏に慣れてきた。最近はOEKの音量がUPし、 交響楽団に匹敵する。従って、OEKも協奏曲演奏時は楽団員を減らして演奏する時代なのかもしれない。尚、quasiはイタリア語で「ほぼ」の意。どこから第2楽章かは分かりにくいのだが、Attaccaで第2楽章はAdagio ma non troppo。抒情的緩徐楽章で、ボヘミア色が濃い綺麗な楽章。 しかし、OEKのに音量が勝ったようで、ソロVnの抒情がかき消された様で残念。第3楽章Allegro giocso ma no troppoは主題が民族舞曲であるフリアント舞曲のシンコペーション。タンタンタタターン_タタターンで始まり、変奏が続く。中間部ではFgの通奏低音が効果的に響く。フィナーレ前で一気に駆け抜けるかと思いきや、小林 美樹さんのソロVnが終曲を告げ、tuttiで4回念を押し終了。超高音まで聞かせてくれた小林美樹さんのアンコールは、バッハ:無伴奏ソナタ第3番ラルゴ。ソロで聞くと情感溢れた演奏は感動的。素敵なアンコールであった。

 休憩を挟んで、3曲目はブルックナー(バボラーク編曲):弦楽五重奏曲ヘ長調よりアダージョ。交響曲と教会音楽に情熱をもやしたブルックナー。弦楽曲としては四重奏曲、五重奏曲及び弦楽五重奏のための《間奏曲》がある。今回の弦楽五重奏曲は弦楽四重奏にもう一本Vaを加えた五 重奏曲の第3楽章Adagioである。OEKは勿論弦楽のみで、伸びやかな緩徐楽章が展開される。途中「ドレミファソラシド」があったり、Vcのtuttiが重低音を響かせて進行する室内楽。OEKの得意とするところだ。「高貴なロマン的芳香」に満ちて終了。ブルックナーの二面性が興味深く、 全曲聴きたくなる名曲であった。
   4曲目はリスト(トバーニ編曲):ハンガリー狂詩曲第2番。この曲は、元はピアノ曲であり、最も有名な曲だ。リストの作曲だけに超絶技巧を織り交ぜながら、ハンガリア・ジプシーの踊り《チャールダーシュ》を基本形とするとのこと。聞いたことがあるタンタタターンタタタタが 心地よく響く。マエストロ・広上の陶酔的指揮でOEKの演奏も熱狂的。中間部でClが印象的演奏。フィナーレ前で高揚し、コーダでは一旦pに落とし、クレッシェンド・大団円で終了。管弦楽曲としてのドバーに編曲は素晴らしく、OEKも室内楽団的風貌より交響楽団的風貌に脱皮しての熱演 であった。

 アンコールはマエストロ・広上のアーティステック・リーダーとしての決意表明の後、シベリウス:《悲しきワルツ》。ロマンティックな曲が並び、マエストロ広上の今後に充分期待を抱かせるコンサートであった。 但し、協奏曲における独奏者とのバランスは修正すべき課題である。


Last updated on Jul. 15, 2022.
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