2月17日OEK第451回定期公演PH

2月17日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第451回定期公演PH
指揮:井上道義
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 井上道義が振るショスタコーヴィチ最後のシンフォニーと題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢 の定期公演。勿論ショスタコーヴィチ:交響曲第15番に期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   電車で出掛けたので18時20分頃音楽堂に到着。ロビー・コンサートは行われなかったようだ。
 コンサート1曲目はハイドン:交響曲第45番《告別》。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の対向配置、コン・マスはヤングさんが復帰。第1楽章Allegro assaiは、切れ味鋭く開始。マエストロ・井上道義は腕を高く上げたり、押さえるところではし っかり身を沈めての指揮。中間部にLargoを挟み、第1主題が戻り終了。第2楽章は綺麗なAdagio。Hrのユニゾンも効果的。第3楽章はMenuet. Allegro。ハイドンの《告別》は何故終楽章の後半で楽団員達が一人また一人と譜面台に立 てたローソクの火を消して舞台から去る趣向を考えたかというと、プログラムによると、単身赴任する音楽家達は長引く滞在期間にすっかり倦んでいた。その悩みを雇用主に伝えようと考えたからだそうだ。従って、第3楽章はどこか不満げ な様子で演奏する筈のところ、余り不満げの感じが表に出なかったと思ったのは私だけであろうか。第4楽章Finale. Prestoは、後半照明暗転で、団員が一人づつ退場する。CDの解説によれば「最初に仕事を終えるのは第1Obと第2Hr(第31小節)、次 にFg(第46小節)、第2Ob(第54小節)、第1Hr(第55小節)、そしてソリスティックな3連符の動きで自己の存在をアピールしたのちCbが消えてゆく(第67小節)。弦楽部だけが残り、調性は嬰ヘ短調となる。第3,第4VnとVaとVcの合奏 からVcが抜け(第77小節)、第3,第4Vnが抜け(第85小節)、Vaも抜けてゆく(第93小節)。残ったのはコン・マスと第2Vn主席奏者だけである。静かに別れの言葉を語るように曲をとじてゆく」とある。最後のVn奏者二名も退場し て終了。終わったと思っていたら照明が戻り、マエストロ・井上始めOEK団員カーテン・コ−ルと成った。不満げだったのにお礼をするのはマエストロ・井上の優しさの表れ。これも井上流であった。

 休憩を挟んで、2曲目はショスタコーヴィチ:交響曲第15番。チェレスター、Hr4人、Tp3人、Tb3人。Tubも加わる。打楽器陣はTimpを始め、鉄琴(Glo)、木琴、大太鼓、小太鼓、木魚(テンプルブロック)等の総出演。第1楽章:Allegretto は鉄琴とFlにて主題が奏でられる。Tpのユニゾン後ロッシーニの《ウィリアムテル》序曲が何度も繰り返され、ラベルのピアノ協奏曲のイントロに現れるムチの音、再びFlの主題と木魚が加わり、正にショスタコーヴィチ。第2楽章Adagio - Largo - Adagio - Largoは、金管楽器による合奏で開始。Vcのソロがプログラムでは「内省的な主題」即ち、綺麗な主題を提示。これは圧巻であった。その後、ヤングさんのソロに続いてTbが葬送行進曲を前奏。ロシア風葬送行進曲であろうか。 最強奏の高揚の後、チェレスターの演奏中Attaccaで第3楽章Allegretto。短い楽章。Fg、Clが主題を演奏。プログラムにあるエキセントリック(eccentric)は「風変り」の意。これもショスタコーヴィチ的。第4楽章Adagio - Allegretto - Adagio - Allegrettoはワーグナー:《ニューベルングの指輪》による〈運命の動機〉との事。中間部では一瞬確認できたトリスタン和音「F - B - D# - G#」が挿入された。この和音はギターでは第1フレットを押さえ、第5絃は第2フレッ トを押さえての演奏となる。ワーグナーはギターで作曲したとは考えられないのだが、ギターの素養もあったのかもしれない。続いて、プログラムでは、「グリンカ歌曲《故なく私を誘うな》に基づく甘美なメロディーへと変貌する」とある。 マエストロ・井上はこれを「間違い」とプレトークで指摘したのだが、「に基づく」との記載なのでグリンカの歌曲なのであろう。中間部では、長大なパッサカリア(passacaglia、3拍子のスペイン起源のイタリア舞曲)でクライマックス。続いて、 私には分からなかったのだが、ハイドンの交響曲第104番《ロンドン》冒頭序奏が挿入されていたらしい。第4楽章を回想の後、Timpと小太鼓が時を刻んで静かに終了。とにかく多くの打楽器群と各楽器によるソロ、有名曲の引用を含んだ壮大な ショスタコーヴィチの《告別》であった。

 アンコールは無し。さて、マエストロ・井上は2024年引退するそうだが、まだまだ指揮はできそうだ。マーラー:交響曲第2番《復活》は、OEKでは無理かもしれないが、メンデルスゾーン:交響曲第2番《賛歌》は可能のように思われる。 マエストロ・井上の復活に期待したい。


Last updated on Feb. 17, 2022.
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