1月8日OEK第449回定期公演PH

1月8日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第449回定期公演PHニューイャーコンサート2022
指揮:沼尻竜典、ソプラノ:砂川涼子
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 オ−ケストラ・アンサンブル金沢の2022ニューイャーコンサート。ソプラノ:砂川涼子さん歌うドヴォルザーク:歌劇《ルサルカ》より〈月に寄せる歌〉に 期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   金沢は積雪0cmで快晴。電車で出掛けたので13時30分頃音楽堂に到着。ロビー・コンサートは確かではないのだが、行われなかったようだ。
 コンサート1曲目はモーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》序曲。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の対向配置、コン・マスは水谷晃さん。Hpが加わり、Cbには今野さんが客演。マエストロ・沼尻竜典は出だし鋭く開始。精力的な指揮だ。 OEKも鋭く演奏。年末にはゆったりとした第九を聞いたが、早すぎても、ゆったりしすぎてもいけないところが難しい。無難な一曲目であった。

 2曲目はモーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》より〈とうとう嬉しい時がきた〜恋人よ、早くここへ〉。ソプラノ:砂川涼子さんは真っ白なドレスで登場。"Giunse alfin il momento, Deh vieni, non tardar, o gioia bella"、直訳 すると「ついに時が来た、なにとぞ来て、遅れないで、おお美しい喜び」。第4幕で、疑いを抱いたフィガロが立ち聞きしているのに気づいたスザンナは、うっとりと、だがはぐらかすように、間近に迫った幸せを歌う。砂川さんはモー ツァルト的うっとりを的確に歌唱。出だし好調。

 3曲目はドヴォルザーク:歌劇《ルサルカ》より〈月に寄せる歌〉。CD解説の歌詞を抜粋しよう。「深々と空にかかっているお月さまよ、 あなたの光は遠くまで見通し、 あなたはひろい世界をさまよい。 人びとのすまいを見て歩く。あな たは広い世界を見て歩く。 お月さま、ちょっと立ち止まって いってちょうだい、どこに私のいとしい人はいるの! お月さま、ちょっと立ち止まって いってちょうだい、どこに私のいとしい人はいるの!」。即ち、月を見ながら歌う。 月はあたり一帯に光をなげかける。美しい夏の夜。水の精のルサルカだけがもの思いに沈み、水の精の心を打ち明ける。この湖によく水浴びに来る美しい王子に恋をしたと歌う。砂川さんは高音のffを両手を上に上げ熱唱。モーツァルト と違うドヴォルザークの熱情的アリアであった。

 4曲目は沼尻竜典:歌劇《竹取物語》セレクション(組曲)。(第5景より)〈月の間奏曲〉は「月に帰らなければならない」を綺麗な弦楽演奏で間奏。〈姫の告白〉では砂川さん登場。「自分は月から来た者であること」を告白。語るような 歌唱。〈走るおじいさんの間奏曲〉では帝の軍に追い払いを頼みに走る。〈告別のアリア〉〈帝へ捧げるアリア〉では切々と帝に自分を思い出して欲しいと歌う。セレクションなので全体像は分からないし、金沢ではOPERA ZENが1月23日 世界初演だが、1月22日・23日滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホールで歌劇《竹取物語》全5景が演奏されるそうだ。びわ湖ホールロビーから見た大画面琵琶湖に圧倒されたことを思い出すが、大画面琵琶湖のみならず歌劇《竹取物語》 観劇をもお勧めしたい。又、マーラー等作曲者としても著明な海外の指揮者がいる。マエストロ・沼尻には指揮者としても作曲者としても大成して欲しいものである。

 休憩を挟んで、5曲目はシューマン:交響曲第3番《ライン》。ハープが消え、Hr4人。Tb3人となる。第1楽章:Lebhaft:(生き生きと)は堂々と開始。マエストロ・沼尻は本来はオペラ指揮者なのだろうが、交響曲でも果敢な指揮。Flソロ を挟み、pに落とすところは的確に指示し、唯がんがんの演奏指揮ではない。中間部Hrのファンファーレ。主題が戻りTpが華を添えて終了。第2楽章:Scherzo. Sehr maszig(非常に節度のある)は、Va、Vcのよるイントロ。4人のHrによるフ ァンファーレも効果的。第3楽章はNicht schnell(速くなく)。文字通りゆったりとした間で、弦楽器と木管楽器との対話が綺麗。第4楽章:Feierlich(荘厳な)は少々暗いが、プログラムにある「ケルン大聖堂で目にした枢機卿昇任式」の 様子が連想される曲想。第5楽章は一転してLebhaft。シューマンの不安が一掃され「そうだ、元気で作曲するぞ」との意気込みが感じられる。Hrのユニゾンに続いて金管による大咆哮。高揚裡に終了。決してライン川に飛び込ん ではならない。

 アンコールは無し。さて、ニューイャーコンサートならば、シューマン:交響曲第1番《春》を思い浮かべる。しかし、マエストロ・沼尻は新型コロナ禍の克服を祈願して、第4楽章の暗鬱な事態から高揚の第5楽章に至る《ライン》を選ん だと推測する。従って時宜にかなった選曲だったといえる訳である。さて、帰りに恒例の金沢市増泉(有)茶菓工房たろう製「どら焼き」を頂いた。今年は「白あんにイチゴジャムを添えた」逸品であった。ごちそう様。


Last updated on Jan. 08, 2022.
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