11月24日OEK第4481定期公演PH

11月24オ−ケストラ・アンサンブル金沢第448回定期公演PH
指揮:秋山和慶、ヴァイオリン:前橋汀子、石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

English
スマホ版へ

 「レジェンドたちが紡ぐ崇高なる調べ」と題する定期公演PH。マエストロ秋山和慶が、OEK(オ−ケストラ・アンサンブル金沢)を指揮し、前橋汀(てい)子さん を迎えてのベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲に期待して、石川県立音楽堂へ出掛けた。

   到着が遅れてロビー・コンサートが行われたかは不明。
 コンサート1曲目はベートーヴェン:《エグモンド》序曲。OEK弦楽5部は10-8-4-4-2の通常配置。但し、VaとCbの位置は入れ替え。Hrは4人。コン・ミストレス・ヤングさんに代わって町田琴和さん。Mistressは愛人という意味もあり、ヤング さんはコン・マス表記していたが、町田さんもコン・マスだ。Hr4人のユニゾンによるファンファーレで開始。重々しい序奏後クレッシェンド。Obソロを挟み、後半ffでvivace。堂々と終了。
プログラムが変更となってコンサート2曲目はハイドン:交響曲第101番《時計》。Hrは二人となる。第1楽章Adagio - Prestoは物憂げに開始。すぐにプレスト。通常配置で第1Vnと第2Vnが並んだため高音がよく響き綺麗。但し、低音は聞こえにくい。VaとVc を入れ替えず本来の通常配置にすればと思ったが、第2楽章に至ってはその心配は解消。Flソロがあり終了。第2楽章Andanteは所謂「時計」。VcとCbのピッチカート。オスティナート(Ostinato、執拗反復)楽章で主題を繰り返す。中間部でffの 変奏曲。時計を刻むのはFg。効果的な演奏。即ち、オスティナートで繰り返すのだが、飽きさせない。ハイドンの力量だ。マエストロ秋山和慶は丁寧な指揮で、要所はきちんと押さえている。第3楽章はMenuet: Allegretto - Trio - Menuet。ス ケルツォではない、綺麗なメヌエットでOEKのベストな演奏。中間部ではFlが先導し、Fl協奏曲の感も。Tuttiに変わり、メヌエットの主題が演奏され終了。第4楽章Finale: Vivaceはpで開始。すぐfのvivace。ハイドン得意の一旦 停止もあり、Tpが加わり、華やかに終了。

 休憩をはさんで3曲目は、2曲目と入れ替わったベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲。第1楽章はAllegro ma non troppo。前橋汀(てい)子さんは真紅のドレスで登場。尚、汀は「水際の平らな砂地」の意だ。さて、曲は《運命》のモチーフで あるトントントンで開始。少々長い序奏の後前橋さんのVnが開始。彼女のヴァイオリンはデル・ジェス・グァルネリウスとの事。高音が良く伸び、ストラディヴァリウスと違ってしっとり系。彼女はヴァイオリンの特性を生かした情緒溢れる演奏。 マエストロ秋山和慶もしっとり系での指揮。中間部からvivaceになり華やか。終了前のカデンツアは主題の変奏なのだが、現代的テクニックも加味された曲想。プログラムには「ヨアヒム、クライスラーによるカデンツアが存在する」とあるが、 誰の作かは不明。第2楽章Larghetto - attacca subito:は落ち着いた出だし。Hrの前奏に前橋Vnが応え、緊張感溢れるLarghetto。Attaccaで続く第3楽章Rondo: Allegroは前橋さんのソロで開始。ここでもHrと前橋VnのDuoが綺麗。《運命》のモ チーフであるタンタンタンタタータであるAllegroに変わる。Finale前のカデンツアはやはり《運命》の変奏曲なのだが、ここでは前橋さんのテクニックが冴える。ppよりクレッシェンド、高揚しタンタンと断定的に終了。前橋さんのしっとり系熱演 であった。

 アンコールは、これが又綺麗だったベートーヴェン:《ヴァイオリンとオーケストラのためのロマンス》第2番。聞いたことがある曲なのだが、曲名が思い出せないので係員に聞いて題名判明。家に帰ってCDを探すと、ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲に《ロマンス》第1番・ 第2番が含まれていた。第2番が綺麗なのは言う迄もない。さて、「崇高なる調べ」コンサートは終了した。最近は若い独奏者ががんがん奏でる演奏が主流。しかし、今夜のコンサートはしっとりと情緒溢れる演奏会となった。指揮者マエ ストロ秋山和慶の円熟さも加味された賜物と思われる。現代はDiversity、即ち多様化の時代。音楽に種々の解釈があって然るべし。OEK定期公演フィルハーモニー・シリーズに期待したい。尚、プログラムの変更については、海外のコンサートでは 協奏曲で終わる場合もあり、問題は無かったと思う。


Last updated on Nov. 24, 2021.
コンサート・レビューへ