7月23日OEK第441回定期公演PH

7月23日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第444回定期公演PH
指揮:井上道義、ヴァイオリン:神尾真由子
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 久しぶりのマエストロ・井上道義。元気でOEK、オ−ケストラ・アンサンブル金沢を指揮する。2020年はベートーヴェンのアニヴァ―サリー・イヤーだった訳で、コ ロナ禍の為に今年もベートーヴェンの交響曲は目白押しなのだが、ハイドン、シューベルト及びプロコフィエフを選曲したマエストロに期待し、東京五輪開会式を録画予約して石川県立音楽堂 へ出掛けた。

   コロナ禍の為であろう、ロビー・コンサートは無し。
 コンサート1曲目はシューベルト:交響曲第4番《悲劇的》。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の対向配置。Hrは4人。第1楽章:Adagio molto; Allegro vivaceは堂々たる序奏。題名《Tragische》に相応しく始まる。しかし、不安は吹っ切れ、人生を歩み始める 確信を得たようだ。マエストロはいつもの体を大きく使った指揮で、OEKを鼓舞。第2楽章Andanteは一転して《ロザムンデ》の前作風。即ち、この曲はシューベルト19歳の作品。《ロザムンデ》にたどり着くには未だ若過ぎるようだ。 ffを時々含むが、全体は抒情的。ObソロにFlソロが加わって終了。第3楽章Menuetto: Allegro vivaceは、快活なメヌエット。スケルツォもあり、ワルツもある。第4楽章Allegroは、金管が効果的で、風雲急を告げるが、Fgソロの後熱狂的な フィナーレで終了。尚、此の曲をCDで聞くと「武骨」と思うのだが、OEKの今夜の演奏では「武骨」は感じられない。マエストロの手腕であろうか。

 休憩を挟んで、2曲目はプロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番。神尾真由子さんはピンクのロングドレスで登場。第1楽章はAndantino - Andante assai。短いVaによる序奏の後神尾真由子さんのヴァイオリンが開始。いきなり超高音での 演奏。彼女のヴァイオリンはストラディヴァリウス1731年製作「Rubinoff」とのこと。うねるような曲想の後、ポンポンとジャンプするようなプロコフィエフ独特のメロディが始まる。彼女はテクニックも優れている。フィナーレ近くでClの 演奏に合わせて神尾ヴァイオリンのピッチカート。趣向である。第2楽章はScherzo. Vivacissimo。快活の極限である。ScherzoはMenuetoを早くしたものだが、それより早いScherzo。Timp及びObとのDuoもあり、エネルギッシュに終了。第3楽章 Moderato - Allegro moderatoは、Fgの序奏の後神尾ヴァイオリンは抒情的演奏。Hpが効果的、それにTubも加わり高揚の後ppで終了。プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲では第2番をよく聞くが、第1番も中々良い。神尾真由子さんの熱演 の所為だったのかもしれない。

 3曲目はハイドン:交響曲第102番。所謂London Symphoniesである。何故ハイドン:交響曲第102番なのかについては、現代曲の後はクラシカルな曲で締めくくろうとの意図であったかもしれない。尚、ここでOEKは第1Vnと第Vnが並ぶ通常配置となる。 第1楽章Largo - Vivaceは綺麗な出だし。Flソロで暗雲も漂うが、プログラム記載の如く活力にあふれた曲想。第2楽章Adagioは通常配置が効果的で、高音域がよく聞こえる。尚、CD解説では、「ハイドンは弱音器を付けたトランペットとティンパ ニを初めて用いた」とある。弱音器を付けていたかは定かで無いのだがTpは2人。Timpは用いず《ラデッキー行進曲》に使用する小太鼓の様な楽器を使用していた。マエストロの好みなのだろう。第3楽章Menuet: Allegro - Trio - Menuetはヘンデル風。 第4楽章Finale: Prestoは、ハイドン得意の一端停止がある。フィナーレも一旦停止が2回あり、終了と勘違いしそうになる。即ち、フィナーレの演出が面白い。これもプログラムにある、「ハイドンのサービス精神」なのだろう。これにてマエスト ロによる洒脱に溢れたコンサートは終了した。

 終了は20時50分頃だったがコロナ禍の為であろうアンコールは無し。さて、開演前マエストロ・井上道義が言っていたように、マエストロ・ミンコフスキーによるベートーヴェン・シリーズが華やかな中で、プロコフィエフを選んだ井上道義は慧眼で あった。2021-2022定期公演では井上道義によるショスタコーヴィチが含まれている。彼の得意なショスタコーヴィチ、期待したい。


Last updated on Jul. 23, 2021.
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