5月4日いしかわ・金沢風と緑の楽都音楽祭2021C5042

5月4日いしかわ・金沢風と緑の楽都音楽祭2021C5042
指揮:秋山和慶、大阪フィルハーモニー交響楽団
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

English
スマホ版へ

 大阪フィルハーモニー交響楽団が、いしかわ・金沢風と緑の楽都音楽祭2021でファリヤとレスピーギ を演奏する。大フィルとは《カルミナ・ブラーナ》で協演して以来。久しぶりの大フィルに期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   青島広志さんによる司会の後コンサート1曲目は、ファリャ:バレ−《三角帽子》。スペインのアンダルシア地方を舞台にしており、権力のシンボルの三角帽子を被った悪代官が美しい粉屋の妻に横恋慕 し、一騒動を起こし、散々な目に遭うというバレーであり、これを組曲にした作品。大フィル弦楽5部は14-12-10-8-6の対向配置のようだ。第1組曲:T. 序曲は、DrmsとTpでおどろおどろしい短いイント ロ。U. 昼下がりは、FlとFgのソロがあり、昼下がりの眠気を催す雰囲気を表すのか、静かに進行。V. 粉屋の女房の踊りは、ファンダンゴ。ファンダンゴはスペイン起源の情熱的ダンス。ステップを踏ん で踊るようで、sfzが効果的でバレーが目に浮かぶ。マエストロ・秋山和慶は、ffでは腕を高く上げ、pでは腕を折りたたんで的確な指揮。中間部でFgソロが歌い、弦楽が綺麗なメロディを続ける。しかし、 ファリヤはメロディを短くつなぐ傾向があり。正に変幻自在。W. 葡萄の房はTbによるイントロ。美しい粉屋の妻に横恋慕した悪代官を粉屋が殴り、代官は引き揚げる。第2組曲:T. 隣人たちの踊りは、 その日の夜近所の人々が祭の踊り「セギディリア」を踊る。スペイン語Seguidillaは民謡の一種。Flソロが綺麗。U. 粉屋の踊りは、粉屋も「ファルーカ」を踊る。スペイン語Farrucaは、「向こう見ずの 人」との意味なのだが、ウィキペデイアによれば「スペインに伝わる舞踊であるフラメンコのジャンルの一つ。 ガリシア地方に起源があるとのこと。主に男性によって踊られるそうである。V. 終幕の踊りはホタ。同じくスペイン語Jotaはウィキペデイアによれば「舞台で演奏される時には、ダンサーはカスタネットを持って踊り、飛び上がる動作に特徴があるダンス」とのことで、平和を取り戻し た粉屋の夫婦を中心に一晩中ホタを踊る。Tubが咆哮し、Drmsとドラが壮大にフィナーレを飾り、Drmsの一打で大団円。大フィルの熱演であった。

 コンサート2曲目は、レスピーギのローマ三部作の一つ交響詩《ローマの祭り》。T. チルチェンセスはイタリア語Cirenceであり、「曲芸団の」を現すが、ローマの悪名高い皇帝ネロが大円形競技場で 行った民衆のための底抜け騒ぎの祭りをを意味しているらしい。従って、イントロは大々的なDrmsとドラが引きずるようなファンファーレ。尚、パイプオルガン奏者も出演したのだが、どこで演奏したの かは、分かりずらかった。しかし、イントロでも演奏していた可能性は高い。これに続いて、パイプオルガン席での3人のTp、これをバンダ(伊: Banda)と言うそうだが、彼らが高らかにファンファー レ。何か始まるようだ。Tbが不気味な音楽を奏でる。具体的には、キリスト教徒が野獣の牙にさらされる残忍な迫害が始まるらしい。従って、その悲劇を暗示するフレーズが短調で流れる。その運命やい かにとTbが問いかけて終了。U. 五十年祭はイタリア語Giubileoであり、(ユダヤの)五十年祭、(カトリックの)大赦の年を表す。疲れた巡礼達がローマに向かう。やがて丘にたどり着くとそこから大き な町が見える。Tpが「ローマだ」と教える。そしてマエストロ・秋山和慶が一つ一つ指示を出していた教会の鐘が鳴り響く。TpによるAttaccaに続いてV. 十月祭。イタリア語Ottobrataは「十月に行う小旅行」の意だが、ドイツ語Okutoberfestに近い秋の 収穫祭だ。中間部では収穫祭の舞曲、そしてコン・マスによるVfソロが愛のメロディー。それに続いてマンドリンよるロマンティックな愛のセレナーデが聞こえてくる。W. 主顕祭は、イタリア語Befana。 カトリックでは1月6日の公現祭。1月5日の夜訪れて贈り物をするという祭り。サルタレッロ(イタリア語:Salterello、軽く飛んで踊るイタリア・アブルッツイ地方の農民舞踊)の3拍子で進行。次第 にCrescendoし、ダイナミックにDrmsの一打で終了。

 時間制限でアンコールは無し。さて団員100名の大阪フィルハーモニー交響楽団を聞いたのだが、やはり100名は迫力ある。毎月聞いているオーケストラ・アン サンブル金沢(OEK)とは異次元のオーケストラである。モーツァルトも音楽、ファリャも音楽。大フィルも音楽。OEKも音楽なのだ。尚、今年の風と緑の楽都音楽祭では、弦楽四重奏団の公演は 含まれなかったが、これはさみしい。来年はクラシック音楽の原点弦楽四重奏団公演を是非加えて欲しいものだ。


Last updated on May 04, 2021.
コンサート・レビューへ