4月23日OEK第441回定期公演PH

4月23日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第441回定期公演PH
リーダー&ヴァイオリン:アビゲイル・ヤング
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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マエストロ・スダーンがコロナ禍の為ビザ下りず急遽リーダーとして我らがOEK、オ−ケストラ・アンサンブル金沢第1コンサートマスターをリーダとした「ザルツ ブルグの祝典」と題するコンサート。ザルツブルグで聞いたウィーン・フィルを思い出し、OEKがザルツブルグ音楽祭に招待されることを祈念し、石川県立音楽堂へ出掛けた。

   コロナ禍の為であろう、ロビー・コンサートは無し。
 コンサート1曲目はモーツァルト:ピアノ協奏曲第20番。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の対向配置。但し、Vcを除いて弦楽は立奏。第1楽章Allegroは不気味なイントロで始まる。長い序奏の後、藤田真央さんのPfが開始。優しい音である。中間部で はFl、ObとPfの三重奏が綺麗。後半では真央さんの演奏もダイナミックに変身し、自作のカデンツアも披露。彼のカデンツアは変奏に終始したようだがそれも一興。第2楽章は有名なRomance。お馴染みのメロディーが藤田真央さんのPfで歌われる。 Pfソロの後のOEKによるふわっと包み込むような演奏が効果的で、情緒を添える。第3楽章Rond: Allegro assaiは一転して急展開。後半自作のカデンツアは第1楽章と違い、スピード感あり、切れ味鋭い作品。楽章のテンポに合わせてある。フィ ナーレはプログラム記載の通り長調に転じて晴れやかに終わる。衒いのない名演奏であった。アンコールは、J.S.バッハ:オルガン協奏曲ニ短調BWV596(ヴィヴァルディRV565の編曲)より《シシリエンヌ》。Sicilienneは仏語で、伊:Sicilia na(シシリア舞曲)に等しい。藤田真央さん好みの曲であろう、静かな余韻を残し終了した。

 休憩を挟んで、2曲目はモーツァルト:セレナード第4番《コロレド卿》。何と8楽章もある。このCDはどこのオンラインショップでも入手不可能なので、貴重な演奏である。第1楽章はAndante maestoso。Hr、Tpの金管一斉の開始。窓辺でこれを 立奏でやられたらうるさいであろう。即ち、セレナーデ(小夜曲)というよりディヴェルティメント(喜遊曲)に近いと思われる。第2楽章AndanteはHrとヤングさんのVnが華を添え、正にディヴェルティメント風アンダンテ。OEKの弦楽の綺麗さ もこれを支える。第3楽章Menuettoは最初のメヌエット。プログラにある流麗なメヌエット。第4楽章AllegroはHrがイントロを飾り、ディヴェルティメント風アレグロ。ヤングさんのVnソロが冴えわたる。OEKは優秀なコン・マスを有する。末尾 にカダンツアが挿入される。即ち、第2楽章から第4楽章まではヴァイオリン協奏曲スタイルらしい。第5楽章は2度目のMenuetto。最初のメヌエットに比較して固い感じ。しかし、中間部のFlソロ、Vnソロが優雅。この楽章の主題に戻って終了。 第6楽章は抒情的Andante。Obソロが開始。OEKのOb奏者は世代交代なのか女性2人の出演であったが、OEKの伝統の綺麗さを受け継いでいる。第7楽章は3度目のMenuetto。Tpが華を添え、力強いメヌエット。Obソロの後第1Vn、第2Vn、VaとObの四重奏。 これも綺麗。第8楽章は華やかなPrestissimo。ディヴェルティメントだ。Finaleは主題を演奏し、何度も終わりそうで終わらないを繰り返し、華麗に終了。ディヴェルティメント風セレナーデであったが、流石モーツァルトならではの一曲であっ た。

 終演は8時50分。予定の8時40分を過ぎた為であろうアンコーは無し。さて、モーツァルトのピアノ協奏曲と貴重なセレナーデ第4番を聞いたのだが、交響曲を上回る熱演で、OEKの凄さを感じたコンサート。尚、弦楽奏者の立奏についてその効 果は余り分からなかったが、音量を抜きにして窓辺で演奏するセレナーデとしては意義がある。この熱意がザルツブルグに届けられることを祈りたい。


Last updated on Apr. 23, 2021.
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