11月26日OEK第435回定期公演PH

11月26日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第435回定期公演PH
指揮:園田隆一郎、ヴァイオリン:渡辺玲子
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「堂々、クラシック!」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢の定期コンサート。「期待のマエストロ、世界で活躍 するソリスト登場!」とのことで、期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートは無し。  
 コンサート1曲目はロッシーニ:歌劇《アルジェのイタリア女》序曲。ロッシーニのオペラ・ブッファの三代傑作は、《アルジェのイタリア女》《チェネレントラ》《セビリャの理髪師》だそうだが、 その一つ《アルジェのイタリア女》序曲。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。何かを予感させるpizzicatoで開始。Obソロが歌劇の主題を暗示。その後、ガエターノ・ドニゼッティ:歌劇《愛の妙薬》 における有名なロマンツァ「人知れぬ涙が」のメロディーが流れる。ドニゼッティはロッシーニの弟子らしい。一転してvivace。PicがObの主題を再現。マエストロ・園田隆一郎は歌劇が得意だそうだが、 膝を使っての穏やかで、しかも的確な指揮。tuttiで高揚感を演出し、歌劇第1幕に向かって失踪し、終了。出だし好調
コンサート2曲目は「甘ったるい」という人がいるメンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲。ソリスト渡辺玲子さんは真っ赤なドレスで登場。 カルメン風である。第1楽章はAllegro molto appasionato。appasionatoは情熱的の意。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、前述の如く「甘ったるい」という人がいるが、彼女は「甘ったるい」 との決別を断行。しかもマエストロとの協奏を確認するかの如く、立ち位置を柔軟に移動させながらの熱演。彼女のVnはストラディヴァリウス「サマズィユ」とのこと。高音域がしっかりした名器での 演奏。第1主題に戻りFgの持続音で終了。持続音を引き継いで第2楽章はAndante。正に夢見心地。Attaccaぎみに第3楽章はAllegretto non troppo - Allegro molto vivace。即ち、躍動的に開始。渡 辺さんのテクニックは、プログラムにある「世界のヴァイオリン界をリードする逸材」に相応しい美技。高々と「甘ったるい」を止揚し、終了。アンコールが又凄かった。パガニーニ:パイジェッロの 歌劇《美しき水車小屋の娘》より《うつろな心》による序奏と変奏。右手で弓を引き、左手でpizzicato。高度な演奏技術の曲を難なく熟す渡辺さんの独壇場であった。
3曲目は、モーツァルト:交響曲第41番《ジュピター》。モーツァルト最後の交響曲はハ長調、分かり易い。第1楽章Allegro vivaceは、少々遅めのテンポで始まる。従って、歌うように聞こえる。 中間部はHr、Tpの協奏もありOEKによる堂々たる演奏。第2楽章Andante cantabileはやはり遅めで歌うよう。最近はテンポの早い演奏が多いのだが、遅めのテンポも情緒がある。第3楽章Menuetto. Allegrettoはテンポが戻る。Scherzoでない通常のMenuetto。第4楽章Molto allegroはお馴染み「シレファミ」。マエストロ園田はsf、ffの指示を的確に出し、高揚感を演出。但し、pに落とす指示が あっても良かったとは思うが。それにしても、OEKの演奏は立派過ぎる。モーツァルトというよりベートーヴェン的に聞こえたのはOEKの進歩なのだろうか。プログラムにある「壮麗なフーガ」で終了。

終曲が20時15分の所為であろう、アンコールは無し。さて、モーツァルトの交響曲がベートーヴェン的に聞こえた原因は何かと考えると、コン・マス・ヤングさんはコロナ禍の為出演不能。このため第1 Vn、即ち高音域の音量が不足したようである。ヤングさんの存在がいかにウエイトを占めていたかを改めて感じたが、ヤングさん出演不能の場合は第1Vnを増員すべきである。又、マエストロ・園田さんは 歌劇が得意なようであるので、金沢でぜひワーグナー:歌劇《タンホイザー》を指揮して欲しい。《夕星の歌》を聞きたいものだ。


Last updated on Nov. 26, 2020.
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