10月22日OEK第434回定期公演PH

10月22日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第434回定期公演PH
指揮:井上道義
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「井上道義&OEKーアンコール!スウィート」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢の定期コンサート。小品揃いだが、マエ ストロ・井上道義復活に期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートは無し。  
 コンサート1曲目は有名なバーバー:《弦楽のためのアダージョ》。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。Hpが加わり、Timpは無し。客席の照明を落としてpで開始。Vcの重厚なユニゾンが華を添える。Vc には広島交響楽団チェロ主席で、OEK名誉楽団員のカンタさんの同郷スロバキア出身のマーティン・スタンツェライトさんが加わっている。cresc.の後一旦停止。主題に戻り、静かに終了。極上の追悼音 楽であった。
コンサート2曲目はラフマニノフ:《ヴォカリーズ》。マエストロ井上は手を大きく上に伸ばしてOEKを鼓舞。私はフル−ト版のCDを持っているが、オーケストラ版は音を絞りきれない弱点もあるようだ。 しかし、Clソロも綺麗に決まり終了。
3曲目は、マスカーニ:歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》間奏曲。この歌劇には間奏曲が2曲あるのだが、有名なその内の一曲。出だしは綺麗だったが、中間部のエスプレッシーボはダイナミックさに欠 ける感あり。しかし、綺麗さでは秀逸であった。
 4曲目はクライスラー:《愛の悲しみ》。ソロは客員コン・マス水谷晃さんと4-2-2-2-1の弦楽が協奏。コンサートホールにおけるパイプオルガンの緑の照明をバックにソリストの丁寧な演奏。彼の ヴァイオリンは高音が柔らかい。
 5曲目は、ディーリアス:《春初めてのカッコウを聞いて》。パストラルだ。Hrソロの後Clのカッコウが出現。プログラムにある通り、寂しげなカッコウ。ディーリアスはイギリス出身とのことだが、ノ スタルジーを喚起させて終了。
 6曲目はワーグナー《ジークフリートの牧歌》。Tpが加わる一種の交響詩。本日の小曲中一番長く15分位の曲。リヒャルト・ワーグナーの妻コジマ(フランツ・リストとマリー・ダグー伯爵夫人とのあい だに生まれた女性、日本人ではない)への誕生日及びクリスマスの贈り物として作曲されたとのこと。タイトルの如くこの曲もパストラル。OEKの弦楽が綺麗に響き、Hrによるpのファンファーレが祝福する。 HrとCl、HとFlのDuoが更に盛り上げる。Hrは大忙しだ。中間部Tpが起立で、ファンファーレ。Tpが演奏されると終曲に向かうのだが、すぐpに戻り、変奏が繰り返されて終了。
 最後の曲は、サンサーンス:《白鳥(動物の謝肉祭より)》。Hpは松村衣里さん、Vcはスタンツェライトさん。HpのアルペジオにVcが白鳥を歌う。彼のVcはカンタさんのVcより音が優しい。もうすこしダイ ナミックさがあってもと思うのだが、「スウィート」には優しさが大事なのであろう。

アンコールは武満徹:《ワルツ》。三文オペラのワルツのようだが、日本的「スウィート」の表現なのだろう。コロナ禍でのOEK定期演奏会。種々の制約からの小品集になったのだと思うが、マエストロ 井上指揮《画家マチス》の再現には程遠い。マーラーの《アダージェット》は無理だとしても、いっそ《動物の謝肉祭》全曲をプログラムした方が良かったのではと思うが、如何だったのだろうか?


Last updated on Oct. 22, 2020.
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