世界のボロディン弦楽四重奏団が、いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2019でショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲第4番を演奏する。難しい曲だ。ボロディン弦楽四重奏団に期待
して金沢市アートホールへ出掛けた。
コンサート1曲目は、ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第4番。ドイツ占領下ヨーロッパにおけるユダヤ人虐殺に対する抗議と共にロシアにおける反ユダヤ人気質復興への抗議だそうで、CDの解説では "the Jewish spirit of irony
matched very well his own attitude" とある。即ち、第1楽章Allegrettoは第1Vn、第2VnおよびVaの三重奏で、しかも少々奇怪な曲想で開始される。ユダヤ人の皮肉精神を表している様だ。プログラムには、ボロディン弦楽四重奏団によるショスタコーヴィチは”正統的”
とある。聞いていても”正統的”に聞こえるのは正に彼らの力量を示している。イントロの後開始されるVcの演奏も魅力的。後半は安寧を表現か。第2楽章Andantinoは幻想的緩徐楽章。第3楽章Allegrettoは、一転してショスタコーヴィチ的。Attaccaで続く第4楽章Allegretto
は舞曲風。どこか悲しみを思わせる舞曲だ。中間部は情熱的曲想に。そして、第1楽章の三重奏が回帰し、フィナーレは瞑想するかの如く終了。Vn、Va、Vcソロが盛り込まれた多彩な曲をボロディン弦楽四重奏団は難なくこなしたと言える。
コンサート2曲目は、ハイドン:ロシア四重奏曲第5番でもある、弦楽四重奏曲第41番≪How do you do? ご機嫌いかが≫。第1楽章はVinace assai。成程曲の出だしは正に「ご機嫌いかが」との挨拶から始まる。ハイドンが好む一旦停止もある。第2楽章Largo e
cantabileは、表示通り緩くそして歌うように。第3楽章Scherzo(Allegro)は室内楽メヌエット。ウィキペディアによれ
ば、「スケルツォは、メヌエットに代わって多楽章形式の器楽作品に組み込まれるようになり、室内楽曲にハイドンが導入したり、器楽ソナタや交響曲にベートーヴェンが導入したのをきっかけに、頻繁に用いられるようになった」とあ
り、ベートーヴェンがScherzoを編み出したと思われがちだが、ハイドンは室内楽で用いたとのこと。しかし、曲想は正にメヌエット。第4楽章Finale(Allegretto)は、シチリアーノ的舞曲。変奏を含む華麗な終楽章。高揚裡にフィナーレ。ボロディン弦楽四重奏団の熱
演であった。
アンコール1曲目は、チャイコフスキー:≪アンダンテ・カンタービレ≫。少々遅めだが、聴衆をカンタービレの世界に誘う名演奏。2曲目は同じくチャイコフスキー:≪子供のアルバム≫から兵隊の行進。短い曲だったが、≪子供のアルバム≫は知らない曲。シュー
マンに≪子供の情景≫という曲が有るが、チャイコフスキー:≪子供のアルバム≫も全曲聞いてみたい曲だ。さて、珍しいショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲を聞いて思うには、2曲目のハイドンであれば他の四重奏団でも演奏は可能だ。しかし、ショスタコーヴィチとな
るとボロディン弦楽四重奏団の右に出る弦楽四重奏団は無いだろう。本日の収穫であった。
Last updated on May 05, 2019.