10月31日OEK第421回定期公演PH

10月31日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第421回定期公演PH
指揮&ピアノ:ラルフ・ゴトーニ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 数々の室内オーケストラを育て上げたマエストロ・ラルフ・ゴトーニがオ−ケストラ・アンサンブル金沢と再共演。マエストロ・ゴトーニのピアノにも期待 して石川県立音楽堂へ出掛けた。

 ロビー・コンサートはVnとClのDuoによるクンマー:二重奏曲。3楽章あり、VnとClが各楽章でメロディーを交代する。素敵なDuoである。尚、以前「頭にマフラーのCl奏者が加わった」と書いたのだが、白髪であった。失礼しました。
 コンサート1曲目は、ハイドン:ピアノ協奏曲ニ長調。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2通常配置。第1楽章Vivaceは、第1Vnの艶やかな演奏で開始。通常配置になるとVnの音色は豊かである。イントロの後マエストロ・ラルフ・ゴトーニの流麗なPfが 開始。マエストロの弾き振りである。Pfとオーケストラの掛け合いが効果的で、カデンツァもクラシカル。第2楽章はUn poco adagio。少しadagio。AndanteとAdagioとの中間、具体的には伸びやかな曲想で開始。この楽章にもカデンツァがあり 、重量級。第3楽章はRondo all'ungarese:Allegro assai。Rondo all'ungarese は伊語で「ハンガリー式ロンド」。ハイドンはエステルハージ家に雇われた訳だが、エステルハージ家はハンガリーの貴族。従って、ハンガリー風に開始。ブラー ムス《ハンガリー舞曲集》に引き継がれた協奏曲といえるだろう。飛び跳ねるように高揚して終了。マエストロは本日最後の曲であるべートーヴェンとは異なるハイドンをきっちりと演奏・指揮したと言えるだろう。
 コンサート2曲目はハイドン:交響曲第83番≪La Poule(仏:牝鶏、英:The Hen)めんどり≫。OEKはCbが一人増員。ハイドンによるパリ交響曲の2番目である。第1楽章Allegro spiritosoはいきなり決然として開始。協奏曲と交響曲の違い が歴然。さすが交響曲の父。中間部には「コッコ、コッコ・・・」とオーボエ・ソロによる「めんどり」が現れる。私はこれが第2楽章に引き継がれて「めんどり」が完成したと思いたい。その第2楽章Andanteのイントロは抒情的だが、中間部 ではffからppに急展開し、一旦停止し再びffに転ずる。これは一旦泣きやんだめんどりが揃って泣き始める様を表していると思うのだが。第3楽章はMenuet: Allegretto Trio。スケルツォではない優雅なメヌエット。Flソロが綺麗。第4楽章 Finale: Vivaceはプログラムにある「躍動感溢れた」曲想。マエストロはPfも上手かったが指揮も的確。OEKとの相性も良いようだ。明るくFinale。

 休憩を挟んで、コンサート3曲目はプロコフィエフ(バルシャイ編曲)≪束の間の幻影≫全15曲。1分足らずの15曲で構成される。原題は仏語Visions Fugitives。Fugitiveは昔同名のテレビ番組があり、「逃亡者」と訳されていた。そこ で『小学館ロベール仏和大辞典』でFugitiveを見ると、@逃走した。A束の間の。とある。語源を探ってみると、ラテン語にfugioがあり、1.逃げる。2.消える。3.消え去る。とある。どうも「消える」ことが語源のようだ。さて音楽に戻ると、1. Lentamente(伊、遅く)から始まる。悲歌である。Y. Con eleganzaは文字通り上品に進行。IX. Ridicolosamente(伊、こっけいな)は舞曲だ。XV. Feroce(伊、残忍な)は文字通り凶暴。プロコフィエフ的、いやショスタコーヴィ チ風でもある。終曲XV. Dolente(伊、悲痛な)は最初に戻り悲歌で終了。尚、≪束の間の幻影≫のみホールの照明が暗くセットされた。夜、夢の中の幻影を意識した演出であった訳だ。
 コンサート4曲目はベートーヴェン:交響曲第8番。第1楽章Allegro vivace e con brioは、vivaceらしくいきなり主題が演奏され、正にベートーヴェン的。この要因はTimpが加わった所為とも思われたが、とにかく室内オーケストラとしては 堂々たる進行。sfの効果もあり勇壮。但し、Finaleは「たんたりららら」とpであっけなく終了。第2楽章Allegretto scherzandoは、Hrが大活躍。リズムを刻む。ハイドン:交響曲《時計》を連想する。第3楽章はTempo di Menuetto。ベートー ヴェンにしてはScherzoではなくMenuetto。Tpが重い曲想に活気を齎す。Hrのユニゾンも効果的。第4楽章Allegro vivaceはプログラムにある「飛び跳ねる」様なリズム。ここでもHrがリズムを担当。FinaleはHrがCodaの開始を告げ、何度も念を押し て、怒涛の終了。前述の如く、マエストロはハイドンとは違ったベートーヴェンを演じ分けた。

 アンコールはエルガー:《弦楽のためのセレナード》より第1楽章。珍しい曲だが、綺麗な曲で、全楽章聞きたくなる曲だった。しかし、アンコーのため第1楽章のみは仕方がない。さて、古典にプロコフィエフが間奏曲として挿入されたコン サート。益々OEKには目が離せない。


Last updated on Oct. 31, 2019.
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