6月19日OEK第416回定期公演PH

6月19日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第416回定期公演PH
リ−ダー&ヴァイオリン:コリヤ・プラッハー
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 元ベルリン・フィル第1コンサートマスター・コリヤ・ブラッハーさんがオ−ケストラ・アンサンブル金沢を弾き振りするコンサート。ブリテン:フランク・ブリッ ジの主題による変奏曲、ブラームス:ヴァイオリン協奏曲、及び劇的なベートーヴェン:交響曲第3番≪英雄≫と第5番≪運命≫の間に挟まれ、第1楽章がAdagioで開始、第2楽章はAdagioと特異なベートーヴェン:交響曲第4番。 彼は如何に料理するかに期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートはプライエル:ヴァイオリンデュオのため八つの小品より。ホールに入ると綺麗なヴァイオリンの音色が聞こえていたので急いで2Fへ上がると、既にCoda。少し聞けただけで終了。本日の「おしゃべりク ラシック」に期待したい。
 さて、コンサート1曲目は、ブリテン:フランク・ブリッジの主題による変奏曲。弦楽のみで、OEK弦楽5部は8-6-4-4-3(らしい)の通常配置。リ−ダー&ヴァイオリン:コリヤ・プラッハーさんはコン・マス席に座って弾き振り。 序奏主題から第1楽章≪アダージョ≫。フランク・ブリッジの主題が不明の為意図は分からず仕舞いであったが、第4主題は≪イタリア風アリア≫。第1Vnのみメロデーの演奏で、他の弦楽はピッチカートで華を添える。第5変奏≪古 典的なブーレ≫はプラッハーさんのソロ。第8変奏≪葬送行進曲≫はffでの進行。第9変奏≪聖歌≫はヴィオラ奏者であったフランク・ブリッジの主題を用いている所為あろうVaのみの演奏。CodaではVcのピッチカートが効果的。第10 変奏≪フーガとフィナーレ≫の中間部では主題が回帰。荘厳裡に終曲。プログラムによればフランク・ブリッジの≪弦楽四重奏のための3つの牧歌≫の第2曲を主題としたとある。即ち、この変奏曲はPastoralなのである。
 コンサート2曲目は、ブラームス:ヴァイオリン協奏曲。金管としてHr4、Tp2が加わる。第1楽章Allegro non troppoはHrの序奏で開始。長いイントロの後プラッハーさんのソロが始まる。ロマンチシズム溢れるプラッハーさんのVnと OEKの室内管弦楽団としてはダイナミックな音色とが織りなす模様が綺麗。プラッハーさんのVnはプログラムによるとグァルネリ又はストラディヴァリウスとあるが、どうもストラディヴァリウスを使用したようだ。従って、音はよく伸び る。フィナーレ前のカデンツアは、これもプログラムではヨアヒムかクライスラー作とあるが、私にはヨアヒムに聞こえた(違っていたら御免)。第2楽章Adagioは、Obソロが綺麗なイントロ。その後Ob, Fl, Cl, Fgの四重奏が華麗。正に ロマンチシズムの真髄である。第3楽章Allegro giocoso, ma non troppo vivace - Poco piu prestoは飛び跳ねるようなスタッカート。ハンガリーのジプシー音楽だそうだ。第1楽章主題を回帰してフィナーレ。3曲目のベートヴェン はごつごつした名曲を作曲した訳だが、ブラームスはロマン派のリリシズムとロマンチシズムを披露した。これをプラッハーさんのVnとOEKが詩情豊かに演奏したと言える。名演であった。

 休憩を挟んで、ルードヴィヒ・ベートーヴェン:交響曲第4番。交響曲第3番≪英雄≫と第5番≪運命≫の間に挟まれ、後退した作品とか埋もれた作品といったレッテルが貼られてきた交響曲である。私は休憩中友人に「交響曲第 4番を前に持ってきて、ブラームスを3曲目にする」案を話していたが、この杞憂は見事に外れることになる。第1楽章Adagio - Allegro vivaceは、珍しくアダージョで開始。アレグロに移行するとブラームスと異なったベートーヴェン 的演奏をOEKは披露。CDで聞くと一見無表情に聞こえる曲だが、プラッハーさん弾き振りによるOEKの演奏を聞くと、ベートーヴェンの隠れた名曲であることが理解できた。第2楽章は全楽章Adagio。弦楽とClとの対話。OEKのffとpとの対比が鮮烈。 フィナーレにTimpで「運命は戸を叩く」が奏される。私はこのTimp・ソロが交響曲第5番≪運命≫に繋がったと思うのである。第3楽章Allegro molto e vivace - Trio. Un poco meno allegroはスケルツォ。交響曲第6番≪田園≫に引き 継がれるPastoral。第4楽章Allegro ma non troppoは怒涛の楽章。一旦pに落として、Coda。コンサート・フィナーレを飾るに相応しい交響曲第4番であった。

 終了が21時を回った所為かアンコールは無し。さて、ロマンチシズム溢れるブラームスとベートーヴェンの隠れた名曲である交響曲第4番を堪能できた。尚、今朝の朝日新聞「音で描く『物語』生んだ感性とは」の中で「フランス音 楽が最も大切にするのは『色』。音楽にどのような光を当て、無限のプリズム、虹のグラデーションを引き出すかが鍵なのです」とある。本日のプログラムは英、独音楽であったのだが、「色」が大切なことは同じであろう。芸術監督に マエストロ・マルク・ミンコフスキーを戴くOEK。今後のOEKの「色」に期待したい。


Last updated on Jun. 21, 2019.
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