3月27日OEK第412回定期公演PH

3月27日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第414回定期公演PH
指揮:ユベール・スダーン、ピアノ:リーズ・ドゥ・ラ・サール
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 オランダ・マーストリヒト出身のマエストロ・ユベール・サダーンがオ−ケストラ・アンサンブル金沢を指揮する、「名匠スダーン×OEK」と題する コンサート。リーズ・ドゥ・ラ・サールさんのピアノに期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートはコンマス・ヤングさんのVnとグリシンさんのVaとのDuo。1曲目は、モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲。2曲目はシューベルト:≪Erlkonig(魔王)≫。二人のヴィルトゥオーソによる打 打発止のDuoであった。
 さて、コンサート1曲目は、モーツァルト:歌劇≪皇帝ティートの慈悲≫序曲。寛大(Clemenza)な皇帝ティート、実際はローマ皇帝の中でも特に残酷な一人だったようで、復讐、嫉妬といった感情が沢山現われてくる歌劇とのこと。 その序曲はやはり風雲急を告げる。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2のVcとVaが入れ替わった通常配置。Timpは後方ではなく舞台向かって左側に位置。歌劇自体はプログラムにある「ティートが自分を謀殺する企てを慈悲の心を持って 赦す」内容だそうだ。
 コンサート2曲目は、リーズ・ドゥ・ラ・サールさん登場のモーツァルト:ピアノ協奏曲第9番≪ジュノム≫。フランスのヴィルトゥオーソ・クラヴィーア奏者、ジュノムがザルツブルグを訪れたさい、彼女の為に作曲されたというピア ノ協奏曲≪ジュノム≫は金沢プリミエ。第1楽章Allegroはアルペジオ奏法で綺麗に開始。カデンツアは現代風ではなく、多分モーツァルト作であろう主題変奏に終始した大人しい曲想。第2楽章Andantinoは、Andanteよりやや 早く、中位の速さ ♪=92前後とのことだが、プログラムによる「嘆きの歌」で、叙情的な緩徐楽章。これを彼女は情緒たっぷりに演奏。一転して第3楽章Rondo(Presto)は快速。曲はA-A'-A-B-Aと進行したようで、Bの部分はMenuett が挿入される。再び主題に戻って軽やかに終了。彼女の演奏は衒うことなく淡々と演奏する。チャイコフスキーではなく、正真正銘のモーツァルトを演奏していたように思う。アンコールは、バッハ:(ケンプ編曲)フルート・ソナタ ≪シチリアーノ≫。Flソナタは勿論FlとPfのための曲。Pfのみでの演奏はテンポが難しそう。しかし、彼女はバッハ、モーツァルト弾きだ。難なく熟す処は流石だ。

 休憩を挟んで、ベートーヴェン:交響曲第3番≪英雄≫。OEK弦楽5部は8-8(6)-6-5-3だったようでHr3、Tp2も加わり増量。前半の曲ではマエストロ・ユベール・スダーンは指揮棒を持たず落ち着いた指揮であったが、第1楽章 Allegro con brioイントロではプログラムにある「叩きつける」かの如き力強い指揮。このためff箇所は大迫力のシンフォニー。しかし、マエストロはffに終始することなく、抑えるところはきっちりppを指示。従って、OEKはメリハリ ある演奏を披露。曲はドミドソドミソソで終始する。この和音で楽章を構成するベートーヴェンの偉大さにも驚嘆。第2楽章Matcia funebre, Adagio assaiは、Obソロが綺麗な葬送行進曲。第3楽章Scherzo. Allegro vivace - Trioは、ベートーヴェンが生み出したご存じスケルツオ。中間部ではHr三重奏の「戦闘開始」が重厚。音量をもう少し強く演奏すればとも思ったが、柔らかなHrはOEKの特色だ。第4楽章Finale. Allegro molto - poco Andante - Presto は、弦楽の綺麗な曲想で進行。プログラムにある「変奏曲風」だ。Codaでは、Hr、Tpも加わり壮大に終了。OEK力作のベートーヴェン:交響曲第3番≪英雄≫であった。

 アンコールは無し。さて今回のマエストロ・スダーンは 、山越さんによると、修業時代マエストロ岩城浩之のアシスタントを務めていたそうだ。今回のOEKの演奏は、黎明期と比較して正に隔世の感。私はこの演奏を天国の岩城浩之に聞 かせたかったと思ったのである。


Last updated on Mar. 27, 2019.
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