2月16日OEK第412回定期公演PH

2月16日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第412回定期公演PH
指揮:川瀬賢太郎、メゾ・ソプラノ:藤村実穂子
ソプラノ:半田美和子、語り:進藤健太郎、合唱:オーケストラ・アンサンブル合唱団
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 新鋭川瀬賢太郎マエストロがオ−ケストラ・アンサンブル金沢を指揮し、 「藤村実穂子のワーグナー、川瀬賢太郎が贈るシェイクスピアの喜劇」と題するコンサート。冬に「夏の夜の夢」かとも思うが、2曲の声楽曲に期待して石川県立音楽堂へ 出掛けた。

   プレ・コンサートは、バッハ:2本のヴァイオリンのための協奏曲より第1楽章。ハイドン:≪ひばり≫より第1楽章だったのだが、私の到着は13:30頃だったので、終了してしまっていた。残念。
 さて、コンサート1曲目は、メゾ・ソプラノ:藤村実穂子登場のワーグナー:≪Wesendonck-Lieder、ヴェーゼンドンク歌曲集≫。マチルデ・ヴェーゼンドンクの詩によるワーグナーの歌曲集であり、初めて聞く曲だ。OEK弦楽 5部は8-6-4-4-2の対象配置。藤村実穂子さんは濃紺のドレスで登場。第1曲は≪Der Engel≫。「私にも本当に天使が舞い降りた 光り輝く羽が あらゆる痛みから遠ざけようと 私の心を今、天に向かわせている」と歌う。難 しい歌曲だ。藤村実穂子さんは丁寧に歌う。マエストロ川瀬賢太郎の指揮も丁寧だ。第2曲は≪Stehe still!≫。「止まれ、生みの力、永遠を創造する最初の考えよ! 息を止め、衝動を静止し、一秒でも黙ってくれ!」。これ も難解。第3曲は≪Im Treibhais、温室にて≫。この曲は比較的分かり易い。「そう、私は知っている、哀れな植物よ、我々は運命を分かち合っている、光と輝きに包まれてはいても、我々の故郷はここではないのだ」との温室 での植物を歌う。第4曲は、≪Schmerzen、痛み≫。"Und gebieret Tod nur Leben, geben Schmerzen Wonnen nur:"。即ち、「そして死が生を産む 痛みは喜びのみ与える」。難しい音階を藤村実穂子さんは難なく歌唱する。最後の 第5曲は、≪Traume、夢≫。「夢、それは春の太陽が 雪からのぞく花に接吻し、花々は予期せぬ歓喜に 新しい日を迎え、育ち、花咲き」と歌う。ワグナーの歌曲集はシューベルト、ブラームス、ベルリオーズに比して難解な のだが、藤村実穂子さんは媚を求めず、ワーグナーの趣旨に徹した歌唱であったと言える。尚、第3曲と第5曲は、歌劇≪トリスタンとイゾルデ≫に転用されているとのことであった。しかし、私には分からなかったのは、不徳の 致す処である。

 休憩を挟んで、メンデルスゾーン:劇付随音楽≪夏の夜の夢≫英語版。シェイクスピアの原題は『A Midsummer Night's Dream』で『真夏の夜の夢』だが、メンデルスゾーンの原題は≪Ein Sommernachtstraum≫。即ち、≪夏の 夜の夢≫である。石川県立音楽堂コンサートホール上面にスライドが映し出される。その為会場は暗くなってプログラムを読めなくなった。従って、全12曲の各曲につては、顕著な第3曲≪妖精の歌と合唱≫と第9曲≪結婚行進 曲≫は分かるのだが、他はどの曲が演奏されているかは不明確になってしまった。お許し願いたい。さて、綺麗なFl、Duoによる和音で序曲Allegro di moltoは始まる。OEKにはTb3、Tubが加わる。シェ イクスピアによる『A Midsummer Night's Dream』あらすじをウィキペディアで見てみよう。「貴族の若者ハーミアと ライサンダーは恋仲であるが、ハーミアの父イジーアスはディミートリアスという若者とハーミアを結婚させようとする。ライサンダーとハーミアは夜に抜け出して森で会うことにする。ハーミアはこのことを友人ヘレナに打ち明 ける。ディミートリアスを愛しているヘレナは二人の後を追い、ディミートリアスもまた森に行くと考えたからだ。シーシアスとヒポリタの結婚式で芝居をするための6人の職人と共に10人の人間が、夏至の夜に妖精の集う森へ出か けていくことになる」 。ここで、第3曲妖精の歌と合唱(舌先裂けたまだら蛇)Allegro ma non troppoとなる。ソプラノ:半田美和子さん、メゾ・ソプラノ:藤村実穂子さんに女性4部合唱が加わ り、幻想的妖精の世界を歌い上げる。「森では妖精王オーベロンと女王ティターニアが仲違いしていた。オーベロンはパックを使って、ティターニアのまぶたに花の汁から作った媚薬(目を覚まして最初に見たものに恋してしまう 作用がある)を塗らせることにする。パックは森で眠っていたライサンダーたちにもこの媚薬を塗ってしまう。媚薬をぬられたライサンダーたちは、ライサンダーとディミートリアスがヘレナを愛するようになり、4人の関係があべ こべになってしまう」。
 5曲間奏曲Allegro appassionato、第7曲夜想曲Con moto tranquilloと続き、「オーベロンはティターニアが気の毒になり、ライサンダーにかかった魔法を解く。一方、ディミートリアスはヘレナに求愛し、これで2組の男女、妖精の王と女王は円満な関係に落ち着き、結婚式を行うこと になった」。そこで、有名な第9曲結婚行進曲Allegro vivaceとなる。尚、川瀬賢太郎マエストロは昨年9月28日松尾由美子アナウンサーと結婚したそうだ。従って、結婚行進曲にも力が入り、情感たっぷりだったことを付記したい。 第10曲≪音楽物語・葬送行進曲≫については、何故結婚行進曲の後に葬送行進曲が来るのかについては不明。≪道化の踊り≫、≪音楽物語≫と続き、合唱・終曲Allegro di moltoで≪妖精の歌と合唱≫≪結婚行進曲≫が回顧され、 静かに終了。進藤健太郎さんの語りで内容が理解できた劇付随音楽≪夏の夜の夢≫であった。尚、中間部では、長いHrソロがあり、これも≪夏の夜の夢≫を盛り上げる一因となった。OEKの素敵な劇付随音楽≪夏の夜の夢≫であった。

 アンコールは無し。一般的には劇音楽≪真夏の夜の夢≫(抜粋)がCD化されているのだが、川瀬賢太郎マエストロは全12曲の劇付随音楽≪夏の夜の夢≫英語版を取り上げた。若干35歳川瀬賢太郎マエストロの今後に期待したい。


Last updated on Feb. 16, 2019.
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