1月12日OEK第410回定期公演PH

1月12日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第410回定期公演PH
≪ニューイヤーコンサート2019≫
リーダー&ヴァイオリン:フォルクハルト・シュトイデ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 オ−ケストラ・アンサンブル金沢の2019ニューイヤーコンサート。フォルクハルト・シュトイデさんがリーダー&ヴァイオリンを担当 する。ウィーン・フィル、コンサートマスター・シュトイデさん再登場に期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   プレ・コンサートはVn2、Va2、Vc1の五重奏。曲目はメンデルスゾーン:弦楽五重奏曲第2番第1楽章。Vnではヤングさんも登場。所が、私の到着が遅れたため、ロビーに到着した直後終了。従って、弓を振り上げての 終了を聴けただけで、肝心の中身は不明。しかし、ヤングさんが弾いたのだから、綺麗な曲であった事だけは想像に難くない。
 さて、コンサート1曲目は、モーツァルト:交響曲第1番。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。Vcには名誉楽団員カンタさんが加わる。シュトイデさんはコン・マス席に座る。第1楽章Allegro moltoは、モーツァルト僅か八歳時の曲だけにドミ ソソソソソソソソミドで開始。確かこの曲は、天沼裕子指揮OEKの第1回定期公演で聞いた曲だ。第2楽章Andanteは、Cbの通奏低音にVnが叙情を奏でる。第3楽章Prestoは、早く、短い楽章。展開が有るかと思ったが突っ 走って終了。モーツァルト八歳の曲だけに、単純明快。しかし、我が孫達の八歳を考えると、やはりモーツァルトは天才なのだと実感した次第であった。
 2曲目は、同じくモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番。ヤングさんがコン・マス。シュトイデさんはソリスト。第1楽章Allegroは、イントロの後シュトイデさんのアルペジオで急展開。終了前のカデンツァが凄 かった。誰のカデンツァかは不明だが、シュトイデさんのヴァイオリンは、鳥の囀りのような曲想を奏でる。ウィーン・フィルのコン・マスは相当の凄腕だ。第2楽章Andante cantabileは、緩徐楽章で夢見心地。この 楽章にもカデンツァがある。今度は現代風。従って、このヴァイオリン協奏曲のカデンツァは、現代のヴァイオリニストの作かもしれない。第3楽章Rondeau. Andante graziosoは安心感を取り戻し、明るい楽章。第1主題をAとす ると、私にはA-A-A'-Aに聞こえた。プログラムでは「知能犯的作曲技法」とあるが、是は盛り上がって終了と思いきや、pに落としてFinale。モーツァルトは色々と考えて作曲したことが良く分かる。

 休憩を挟んで、ウィンナー・ワルツ。シュトイデさんは再びコン・マス席。OEKはトロンボーン3、ハープも加わる。第3曲目はヨハン・シュトラウスU世:歌劇≪ジプシー男爵≫序曲。如何にもジプシー的イントロ。Ob, Cl, Fg, Flソロが連続し、アップ・テンポ裡に終了。第4曲目はヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ≪休暇旅行≫。早いポルカで、プログラムには「この曲は1863年に学生健康保険組合の『医師の勤務条件改善』の舞踏会に作曲」 とある。日本でも問題になっているが、オーストリアでは19世紀から問題があったようだ。5曲目は、ヨハン・シュトラウスU世:ポルカ≪クラップフェンの森にて≫。Timp奏者渡邉昭夫さんか客演のグンナー・フラスさん かは分からなかったが、カッコウ笛を持ちソロ。客席に降りたり、楽譜が逆さまなので、違う音を演奏したり。鳥の囀りも入り、賑やかに終了。6曲目は、エドゥアルト・シュトラウス:ポルカ≪人が笑い生きるところ≫。ウィキペディアによれば、「エドゥ アルト・シュトラウスはヨハン・シュトラウス1世の四男。ヨハン・シュトラウス2世とヨーゼフ・シュトラウスの弟にあたる」とのこと。7曲目はヨハン・シュトラウスU世:ワルツ≪愛の歌≫。8曲目はヨハン・シュトラウスT世: ギャロップ≪ため息≫。途中2度ため息が入る。プログラムによれば、ヨハン・シュトラウスT世は「ワルツの父」と呼ばれたが演奏会で取り上げられる作品と言えば≪ラデツキー行進曲≫のみ。そこで「ため息」。但し、ギャ ロップと言えば馬術で全速力。全速力でため息が出るかは不明。9曲目はヨハン・シュトラウスU世:ポルカ≪ハンガリー万歳≫。フィナーレに掛け声が入る。「ハンガリー万歳」と言ったのだろうと思うが、これも詳細は不明。 圧巻の10曲目はヨハン・シュトラウスU世:ワルツ≪皇帝円舞曲≫。ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートでバレーが登場するお馴染みの曲。プログラムによる「不思議の3拍子」だ。バレーを連想しながら聞いていたら 後半2度にわたってカンタさんのVcソロ。これが極めて効果的。間にフルート・ソロもあり、名誉楽団員カンタさんが加わった要因も判明し、正に皇帝の円舞曲に仕上がった。

 アンコールはヨハン・シュトラウス1世:≪ラデツキー行進曲≫。指揮者が欲しかった。シュトイデさんはリーダーであり、指揮者とは書いていない。従って、演奏に終始したため盛り上がりは今一。しかし、打楽器奏者の女性が代 わりに指揮をしてくれ、事なきを得、OEKニューイヤーコンサート2019は終了した。≪美しき青きドナウ≫は演奏されなかった。私は、シュトイデさんにはウィンナー・ワルツ演奏時は、指揮をして欲しいと思った。来年の肩書は「指 揮&ヴァイオリン」に期待したい。所で、シュトイデさんはライプツィヒ生まれとのこと。Steude(シュトイデ)をドイツ語辞典で検索しても無い。オランダ語辞書にはStede(場所)があり、Volk(民衆)、Hart(心)も近い。と すると、フォルクハルト・シュトイデさんの先祖はオランダからの移住者(ハプスブルグ家は一時オランダを支配)であり、「民衆の心の場所」の意とも考えられる。勿論定かでは無いのだが。さて、帰りに恒例の金沢市弥生(有)茶菓工房たろう製「どら焼き」を頂いた。 ごちそう様でした。


Last updated on Jan. 12, 2019.
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