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「北欧の天才音楽家ムストネン」と題するコンサート。マエストロ・ムストネンがオ−ケス
トラ・アンサンブル金沢(OEK)を指揮振りする、しかも知っている曲は1曲もない。興味津々で石川県立音楽堂
へ出掛けた。
ロビー・コンサートは、ClとCbとのDuo。ヒンデミット:≪クラリネットとコントラバスのための音楽の小さな花園≫。短いが1〜9曲あり、Clの歌唱とCbの通奏低
音が良くマッチした演奏であった。
コンサート1曲目は、ヒンデミット:≪4つの気質ーピアノと弦楽オーケストラのための主題と変奏≫。OEKは弦楽のみで8-6-4-4-2の久し振り通常配置。Pfはマエ
ストロ・オリ・ムストネンが務め、弾き振りである。第1変奏は黒胆汁質。イントロはプログラムにある憂鬱。ピアノが開始される。マエストロのピアノは上質であり
、指揮も達者。第2変奏:多血質はピアノで開始。続いてコン・マス・ヤングさんとのDuo。ヤングさんのVnはやはり綺麗。Tuttiによる情感的表現も見事。第3変奏
:粘液質は現代的ピアノ協奏曲。高揚感裡にFinale。第4楽章:胆汁質はヤングさんのVnで開始。プログラムにある「ピアノと弦楽合奏の言い争い」の後、和解。井上
道義指揮ヒンデミット≪画家マチス≫の快演が記憶に新しいところだが、この曲のFinaleも高揚感裡、華麗に修了。但し、各4つの気質については、私にその意味する所は
理解不能であった。
2曲目は、ムストネン:九重奏曲第2番(弦楽合奏版、日本初演)。第1楽章はinquieto。"inquieto"は「落ち着かない、不安な」の意味。不協和音と突き刺さるよ
うな音で開始。マエストロは指揮に専念。第2楽章はAllegro impetuoso。"impetuoso"は「熱烈な」の意。所が、曲は叙情的。コラール的でもあり、非常に綺麗。第
3楽章Adagioは、緩徐楽章。明るい雰囲気で流麗。第4楽章はVivacchissimo。"Vivacchissimo"は「極めて生き生きと」。トレモロが綺麗で、高揚裡にFinale。この
曲は原曲通り九重奏が的確かとも感じられたが、弦楽合奏版は日本初演。日本初演が聞けたのは収穫と言えるだろう。
休憩を挟んで、3曲目はラウタヴァーラ:カントゥス・アルクティクス≪鳥と管弦楽のための協奏曲≫。メシアンに≪鳥のカタログ≫というピアノ独奏曲がある。
しかし、この曲は実際の鳥の鳴き声の録音が加わる。第1楽章≪湿原≫はフルート・ユニゾンに続いて鳥のさえずり音が挿入される。第2楽章≪メランコリー≫で
は、更に盛大な鳥の声。第3楽章は≪白鳥の渡り≫。開始から賑やかな白鳥の鳴き声。Clソロの後高揚し、やがて静寂。白鳥は渡って行ったのだ。尚、鳥の鳴き
声はフィンランドの北オストロノスニア地方、リミンカの湿地帯で録音されたとのことである。
4曲目は、シベリウス:劇付随音楽≪ペリアスとメリザンド≫組曲。第1曲は≪城門≫。スコットランドの城門か。厳かなイントロ。第2曲≪メリザンド≫、第3
曲a≪海辺にて≫、第3曲b≪庭園≫、第4曲≪3人の盲目の姉妹≫は曲想が分からずじまいで進行。第5曲は≪パストラーレ≫。"Pastorale"は、「田園地帯」。Ob、
Cl、Flソロが綺麗であり、パストラーレを演出。第6曲≪糸を紡ぐメリザンド≫、第7曲≪間奏曲≫と続き、第8曲は≪メリザンドの死≫。イントロはp。メリザンドの
死を表す哀歌だ。Obソロが印象的。シベリウスは≪トゥオネラの白鳥≫でもObを効果的に用いている。シベリウスはObが好きだったのだろう。
盛り沢山の5曲目は、シベリウス:アンダンテ・フェスティーヴォ。"Festivo"は「祝祭日の」の意。記念式典を祝うために書かれた曲。フィンランド民謡的、およ
びベートーヴェンの第9交響曲的要素のある清澄なメロディ。弦楽合奏で進行するが、Finale前にはTimpも加わる。壮大に記念式典を祝し、終了した。
21時を回ったためかアンコールは無し。知らない曲の連続であったが、日本初演もあり意義深いコンサートであった。欲を言えば、現在のOEKではシベリウスの≪シ
ベ2≫、即ちシベリウスの交響曲第2番も可能と思われる。次回は、是非実現して欲しいものである。