9月20日OEK第406回定期公演PH

9月20日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第406回定期公演PH
指揮:川瀬賢太郎、ピアノ:小山実稚恵
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 若手のマエストロ・川瀬賢太郎登場。オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)を指 揮する「ハイドン!モーツァルト!!ベートーヴェン!!!」と題するコンサート。プログラムは、OEK本来の室内楽的プログラム。初心に帰る気持ちで、石川県立音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートは、トロイ・グーギンズさんと今野淳さんによるVnとCbのDuo。マンシーニ:≪小象の行進≫、バッハ:≪アリア≫、グリエール:≪ガボット≫、 メシア:≪タンゴ・ワルツ≫。2人の苦心の選曲。コンサート前の食前酒にぴったりな演奏であった。  コンサート1曲目は、ハイドン:交響曲第90番。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。第1楽章Adagio-Allegro assai。Tuttiによる和音が2度演奏され開 始。第1主題が演奏され、TpとHrが効果的に挿入される。Flソロが綺麗。マエストロ・川瀬賢太郎は広上淳一氏に師事した若手指揮者だが、若い指揮者にありが ちな「がんがん鳴らす」タイプではなく、pに抑える所はきっちり、pppも指示し、めりはりがある。第2楽章Andanteは変奏曲風の緩徐楽章。中間部フルート、オ ーボエ・ソロが綺麗。OEKの木管は素晴らしい。第3楽章Menuet-Trioはプログラムにあるフランス宮廷風メヌエット。Trが優雅に響く。第4楽章Allegro assaiは 第1主題が重視された快走の楽章。Flソロが加わる。後半はプログラムにある「お茶目な休止」がある。本来は最後の終結部前の4小節の休止なのだが、マエスト ロは2度のお茶目を挿入。従って、聴衆は2度間違えて拍手をしてしまった。それでもffの休止、休止後のppをマエストロはきっちり指揮。彼はオペラの指揮に も通じている様だ。
 2曲目は、チャイコフスキー国際コンクールとショパン国際コンクール入賞の小山実稚恵さんによるモーツァルト:ピアノ協奏曲第20番。彼女は緑のドレスで 登場。珍しい短調のピアノ協奏曲第1楽章はAllegro。何か不安を抱かせる提示部の後ピアノが主題を演奏。やはり悲壮なドラマの暗示か。終結前のCadenzaは主題 変奏曲風。誰の作かは不明。第2楽章Romanceは、ピアノによる有名な緩徐メロディ。不安は続く。後半は走り抜ける演奏。この楽章を聞くと小山実稚恵 さんはチャイコフスキーでもない、ショパンでもない、正にモーツァルトを弾いているのが良く分る。第3楽章Rondo: Allegro assaiは回旋曲。様々な曲想が現出し 、結尾は長調で終結。不安は解消されたようだ。アンコールはバッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻Praeludium(プレリュード)。アルペジオの連続。石川県立音 楽堂はチェンバロを備えているのだから、チェンバロで聞きたかった。しかし、ピアノでもバッハの意図は感じ取る事が出来たようだ。尚、本日のプログラムは、 ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンとのことだが、これにバッハが加わった。

 休憩を挟んで、お馴染みベートーヴェン:交響曲第5番≪運命≫。OEKはCb3人となり、Tb3人が加わる。第1楽章Allegro con brioは、4音の動機である運命は戸を叩く で開始。その後マエストロはスピード感ある指揮を披露。ホルンのファンファーレ、オーボエ・ソロが綺麗。OEKは圧倒的音量で演奏。"con brio"、即ち「快活に」 に相応しい。楽章末にオーボエのCadenzaが挿入される。これも綺麗であった。第2楽章はAndante con moto。"con moto"は「動きをもって」であり、Trが歌う。第 1楽章と違ってやや叙情的。従って、落ち着いた曲想。3楽章Allegroは、4音のリズムが再現され、VcとCbを主体としたFugaも現出。pでのTimpの連打の後、 Attaccaで第4楽章Allegro - Presto。金管の咆哮がダイナミック。但し、マエストロは押さえる箇所はきちんと指示。Coda前のpの後、壮大なfffで運命は決定ずけら れた。ベートーヴェンは偉大だ。

 アンコールはシューベル:劇付随音楽≪ロザムンデ≫第3幕間奏曲。名高い曲でコンサートを締めくくった。尚、ここまでバッハ、ハイドン、モーツァルト、ベー トーヴェンが演奏されたのだが、これにシューベルトが加わった。正にバッハからシューベルト迄が披露されたことになる。さて、30周年を迎えたOEK。今回の≪運 命≫を聞くと、もはや室内管弦楽団とは言えない。団員を少し増やし、金沢フィルハーモニー管弦楽団と名称変更する。但し、演奏会では室内楽曲を必ず1曲演奏 することを原則とする。これでOEKの伝統も守られると思うが、如何だろうか?英断に期待したい。


Last updated on Sep. 20, 2018.
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