6月21日OEK第403回定期公演PH

6月21日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第403回定期公演PH
指揮:下野竜也、ハープ:吉野直子
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 今年のNHK大河ドラマ「西郷どん」のテーマ音楽を指揮したマエストロ・下野竜也オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)を指 揮する「イタリア・プログラム」と題するコンサート。プログラムは、ブリテンの「マチネ・ミュージカル」、名前の知らないニノ・ロータ:ハープ協奏曲等聞いたことのない曲を含む。ロッシーニの歌劇序曲にも期待して、石 川県立音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートは、珍しいロッシーニ:チェロとコントラバスのための二重奏曲。3楽章あり、第2楽章はCbのピッチカートにVcが歌う。第3楽章はPrestoで、中々の熱演であった。
 コンサート1曲目は、ブリテン:「マチネ・ミュージカル」。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の通常配置。Tr3人が加わる。T. Marchは輝かしいイントロに続いてロッシーニ風軽快な行進曲(踊り)。Tp 2、Tr 3の金管楽器増大の為ウインド・オーケストラ的。U. Nocturneは一転して抒 情的な夜想曲。V. Waltzはにぎやか。W. PantomimeはFlのイントロ。パントマイムが始まる。続いて、Ob・Cl・Fgのソロが続く。終曲はX. Moto perpetuo(伊:永久な動き)。ドレミファで開始する常動曲。マエストロ・下野竜也の指揮は手を大きく回して、情感的。Codaで ドレミファが再現され、高揚裡に終了。
 2曲目は、ニノ・ロータ:ハープ協奏曲。金色のハープが運ばれ、吉野直子さんは赤いドレスで登場。第1楽章はAllegro moderato。Hpのアルペジオで開始。Tuttiで演奏するとやや埋もれてしまう感のあるソロHpだが、カデンツアで本領発揮。でもまだ、腕試し。第2楽章Andanteは、 Vcが寂寥感を表現。中間部にTrとHpのDuo。寂然たる牧歌だ。第3楽章Allegroは明るく快活。FlとHpのDuoに続いて、カデンツアで高度のテクニックで存在感を誇示。曲は快活に進行し、突然終了。ハープ協奏曲を始めて聞いたが、中々良い。アンコールはニノ・ロータ:ゴッド ファーザーのテーマ。より重厚な曲を期待したが、これも一興であろう。

 休憩を挟んで、ロッシーニ:歌劇序曲集。1曲目は歌劇「シンデレラ」序曲。シンデレラは英語Cinderellaに基づく。この意味は「まま子扱いにされる人」「隠れた美人」とある。プログラムにあるチェネレントラは伊語でcenerentola。読みは違うが、意味は英語に同じ。一 方仏語では、cendrillon。仏語でcは[s]の発音なので英語に近いが、意味は「こき使われる娘(下女)」とあり、国によって多少ニュアンスが異なる。さて、曲はシンデレラの「12時に帰らなくてはいけない」の表現か、突然駆け出すような箇所もあり、納得。
2曲目は歌劇「絹のはしご」序曲。Flソロで始まり、ロッシーニ風細かい音の連続。騒がしく走って終了。3曲目は歌劇「アルジェのイタリア女」序曲。私の持っているCDの解説によれば、「海賊によってすんでのところでアルジェの太守と結婚させられそうになったイタリア 娘のイザベッラが、機知を働かせて奴隷として太守に仕える恋人リンドローとともに見事に逃げ出す」というオペラ・ブッファだ。弦楽のピッチカートで始まり、Obが続く。ObとPicc(ピッコロ)のDuoが綺麗。どたばた喜劇を演出し、終了。最後の曲は、歌劇「セミラーミデ」序曲。 Tr・Tbおよび打楽器総出演で開始。セミラーミデとは古代バビロニアの女王らしい。Fl・Piccに続いてHrが牧歌的だが、実は悲劇の予告を演奏。中間部は一旦綺麗な旋律。女王を表しているのだろうか。続いて行進曲に変わり、悲劇の始まりを告げる。しかし、第1Vnの綺麗な 旋律が登場。良く分からないが、ロッシーニ的場面転換か。最初のFl・Piccに戻り、フィナーレは壮大に終了。

 アンコールは無し。さて、マエストロ・下野竜也はOEKをウインド・オーケストラと勘違いしたと思われるプログラム。後半はロッシーニ:歌劇序曲集。彼は序曲4つで交響曲を意図したかもしれないが、序曲の連続はどうも消化不良を起こす。コナン・ドイルのシャーロック・ ホームズ全集における『緋色の研究』を 2、3頁読んで、『四つの署名』を又2、3頁読むようで犯人探しが出来ない。次の機会には本物の交響曲を第1楽章から第4楽章までじっくり聞かせて欲しいものである。


Last updated on Jun. 21, 2018.
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