2月24日OEK第399回定期公演PH

2月24日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第399回定期公演PH
指揮:マティアス・バーメルト、フルート:ジャスミン・チェイ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「巨匠ヘスス・ロペス=コボス初登場」とのことであったが、彼は体調不良の為マティアス・バーメルトに変更。「韓国のスター、ジャスミン・チェイとの共演。夭折の天才作曲家たち」と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢の定期公演。聞いたことのないアリアーガ:交響曲もあり、興味津々として石川県立音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートは、大澤さんによるバッハ:無伴奏チェロ組曲第3番だったようだが、車で金沢駅西へ向かったところ駐車場が満車。結局空車の駐車場探しに時間が掛かり、聞けずじまい。残念。
 さて、コンサート1曲目は、アリアーガ:交響曲。アリアーガはウィキペディアによれスペインの作曲家でスペインのモーツァルトらしい。OERK弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。ホルンは舞台向かって右。第1楽章Adagio - Allegro vivace は、厳かなイントロ。オーボエ・ソロが悲しみを演出。急遽交代したマエストロ・マティアス・バーメルトは歌劇場指揮が多い所為か、大げさな指揮ではないが、的確な指揮。第2楽章Andanteは弦とオーボエが歌う。第3楽章Minuetto: Allegroは、スペインのモーツァルトらしい、異色な曲想。フルート・ソロが綺麗。コントラバスとのDuoもある。第4楽章はAllegro con moto。ベートーヴェン的でもあり、優雅な装飾音が美しい。フィナーレは大げさではなく、あ っさりと終了。フィナーレをもう少し堂々とすればと思えたが、その点を除けばスペインのモーツァルト本領発揮と言える交響曲であった。
 2曲目はモーツァルト:「フルートと管弦楽のためのアンダンテ」。プログラムによれば「別のフルー協奏曲の第2楽章なのではないか」とのこと。確かに抜粋の感有るAdagio ma non troppo。OEKは弦楽5部とオーボエ、ホルン のみ。ジャスミン・チェイさんは紺のドレスで登場。序奏無しでいきなりフルートが始まった。オーボエ、ホルンとTrio的に進行。やはり、モーツァルトだ。カデンツァもあるが、短い曲。先ずは手始めである。
 3曲目は尾高尚忠:フルート協奏曲。OEKは弦楽5部とホルンのみ。ハープが加わる。第1楽章Allegro con spiritoは、ドビッシー的か。プログラムにある通り「舞い降りてくる」感じ。尾高尚忠は指揮者として知られているが、 作曲も素晴らしい。フルートの早い音の展開にジャスミン・チェイさんは難なく対処。第2楽章Lentoは、ハープとフルートのDuo。コントラバスの胴を叩く音と共にフルートがもの悲しく歌う。第3楽章はMolto vivac。ホルンが イントロを務める。最近のホルンは安心感がある。フルートは超高音と低音交互のハイテク奏法。尺八のような音も混じる。これは息を漏らして演奏しているようだ。チェロとコントラバスのピッチカート伴奏にフルートが応え、最後に第1楽章冒頭の主題が登 場、華やかに終了した。
 アンコールはイアン・クラーク:「ザ・グレイト・トレイン・レース」。フルートには種々の音色があるのだ。動物の鳴き声のようなメロディも挿入され、満艦飾。正にフルートの名手である。

 休憩を挟んで、4曲目はシューベルト:交響曲第6番。第1楽章Adagio; Allegroは、私の持っているCDの解説によれば「ベートーヴェン的な展開というよりもむしろ晩年のハイドン風」とのこと。ファンファーレに始まり、フルート・ ソロ。Allegroに展開し、再びフルート・ソロの後フィナーレ。今日はフルートが忙しい。第3楽章はScherzo: Presto。ベートーヴェンから学びとったあとを見せる。勿論ベートーヴェン的。ゲスト・コンマスの水谷晃さんはエネル ギッシュに演奏を盛り上げる。ロッシーニ風と言われる第4楽章Allegro moderatoは次第に高揚。ホルンがコーダを告げ、やや軽く終了。この前聞いた交響曲「画家マティス」の壮大なフィナーレに比すると室内楽的終了と言える だろう。

 4曲終了は16時を廻っていたが、外国の指揮者は2時間の演奏時間に拘らない。從って、アンコールはシューベルト:劇付随音楽「ロザムンデ」より間奏曲第3番。お馴染みの典雅な音楽。終わりの拍手が少々早かったようだが、 室内楽を意識したアンコールには聴衆も充分満足したことだろう。さて、今回のプログラムは20、30代で亡くなった作曲家の特集であったのだが、これを急遽の代役として指揮したマエストロ・マティアス・バーメルトに賛辞を送 りたい。


Last updated on Feb. 24, 2018.
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