11月30日OEK第396回定期公演PH

11月30日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第396回定期公演PH
指揮デイヴィッド・アサートン
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「英国の名匠アサートン初登場ーイギリス音楽&ベートーヴェン」と題するコンサート。マエストロ・デイヴィッド・アサートンがオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK) を指揮し、イギリス音楽を演奏する。エルガー、ブリテンに期待して、石川県立音楽堂へ出掛けた。

   プレコンサートは、フルートとチェロによるテレマン:ソナタヘ長調。普通フルート・ソナタはピアノが伴奏をする。しかし、テレマンの時代はチェロもしくはビオラ・ダ・ガンバによるソナタが存在したようだ。両者による急ー 緩ー急の熱演であった。
 コンサート1曲目はエルガー:「夜の歌」「朝の歌」。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2の通常配置。ハープが効果的で、いかにも夜の雰囲気溢れる「夜の歌」。「朝の歌」は夜明けからやがて活気ずく朝の街を表現しているようだ。 エルガーはイギリスを代表する作曲家。部分的にイギリス民謡を思わせる箇所も挿入されていた。マエストロ・アサートンは落ち着いた指揮で、しかもff、ppへの指示は的確である。
 2曲目は、馴染みのないイギリスの作曲家バートウィッスル:ヴィルレー(泉をじっと見つめている間)。弦楽4人、木管、金管も各パート一人。つまり、十三重奏(だと思う)曲である。viverはプログラムにある通り仏語で「回転 する」。即ち、変奏曲である。短い曲で、泉を探している内に終了。
 3曲目は、ディーリアス:劇付随音楽「ハッサン」より間奏曲、セレナーデ。OEK弦楽5部は再び8-6-4-4-2に戻る。尚、開始に先立ち、ファゴットにトラブルが発生したようで、マエストロ・アサートンの出も遅れてしまった。し かし、間奏曲は、フルートによるイントロ、セレナードはハープによるイントロが素敵。ゲスト・コンサートマスター:ジェームズ・カドフォードさんのソロも綺麗な曲であった。
 4曲目は、ブリテン:シンプル・シンフォニー。この曲は弦楽のための短い交響曲。第1楽章Boisterous Bourree, Allegro ritmico(騒々しいブーレ、快速に、リズミカルに)は、重厚な弦の競演。第2楽章Playful Pizzicato, Presto possibile pizzicato sempre(遊び好きのピチカート、できる限り急速に、つねにピチカートで)は、ピチカートの連続。OEK奏者の息はぴったり。第3楽章Sentimental Saraband, Poco lento e pesante(感傷的なサラバンド、 少し遅く、そして重々しく)は、ゆっくりしたサラバンド。第4楽章Frolicsome Finale, Prestissimo con fuoco(浮かれ気分の終曲、極めて急速に、火のように)は、中間部のビオラ・ソロを含めスピーディに進行。Codaは少々異色 だったが、それでもイギリス音楽圧巻のフィナーレであった。

 休憩を挟んで、5曲目は本日唯一のドイツ音楽、ベートーヴェン:交響曲第7番。OEKはコントラバスとホルンが3名に増。第1楽章Poco sostenuto - Vivaceはフルートによるイントロ。中間部でトランペットの咆哮あり。直後p に落とす箇所が有るのだが、マエストロ・アサートンとOEKの呼吸はぴったり。マエストロ・アサートン効果である。第2楽章Allegrettoはビオラ、チェロ、コントラバスの低音弦によるイントロ。最後に第1Vnが主旋律を演奏。クレッ シェンドした中間部では、金管楽器に負けじとコントラバスが必至の演奏。今回はコントラバス4台でも良かったかもしれない。第3楽章はPresto, assai meno presto Presto。最初の部分がScherzo。主旋律を3回繰り返して終了。 第4楽章はAllegro con brio。スピード感あるOEKの演奏はもはや室内オーケストラでは無い。立派な交響楽団だ。マエストロ・アサートン魔術であったかもしれない。フィナーレも堂々と終了した。

 20時50分で終了したのだが、アンコールは無し。しかし、ブリテン、ベートーヴェンの名曲を堪能できたのだから、大満足のコンサート。5月開催の「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」の概要発表もなされた。益々楽しみ なOEKである。


Last updated on Nov. 30, 2017.
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