10月18日OEK第394回定期公演PH

10月18日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第394回定期公演PH
指揮&ピアノ:シュテファン・ヴラダー
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「ウィーンの貴公子シュテファン・ヴラダー」と題するコンサート。マエストロ・シュテファン・ヴラダーとオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK) の共演。ピアノ協奏曲の第2楽章に期待して、石川県立音楽堂へ出掛けた。

   プレコンサートは、ヴァイオリンとチェロのDuoによるアドリエン・フランソワ・セルヴェ/ジョゼフ・ギス:「神よ、主を守りたまえによる華麗なる変奏曲」。英国国歌の変奏曲で、ヴァイオリンのトレモロもあり多彩。 坂本、大澤さんの熱演であった。
 コンサート1曲目は、ウィーンの貴公子マエストロ・ヴラダーの弾き語りで、モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2対象配置。第1楽章Allegroは、テンポ良くスタート。中間部に交響曲第40 番のメロディーが流れる。マエストロ・ヴラダーはピアノが休止の時は両手、及び左手が空いているときに左手で指揮をする。これがスピード感あり、しかも緩徐部では丁寧で的確。暗譜である。流石音楽の都ウィーンの貴公子だ。 カデンツァもベートーヴェン国際ピアノコンクール最年少優勝した面目躍如。第2楽章Andanteはモーツァルトの名旋律。ホルンの伴奏が華を添える。第3楽章Allegro vivace assaiは力強いイントロ。プログラム記載の 「上機嫌」か。短いカデンツァの後堂々と終了。

 2曲目は、同じくモーツァルト:ピアノ協奏曲第24番。第1楽章Allegroは、地を這うようなイントロに続き、愁いを含んだピアノ・ソロ。カデンツァは現代音楽家によるもののよう。有名な第2楽章Larghettoは、ピア ノ・ソロの独壇場。ねっとりと弾くソリストもいるのだが、彼は淡々と演奏。爽快だ。第3楽章Allegrettoは、ピアノ・ソロに対するファゴットの伴奏が効果的。中間部では、ピアノとオーボエ、フルートとの対話。OEK木管 楽器奏者の演奏が光る。フィナーレは、CDで聞くと一旦休止の後終了なのだが、マエストロ・ヴラダーは分かり易く、華麗に終了。ウィーン好みの上品なピアノ協奏曲に仕上がった。アンコールはショパンかと思っていたら、 超絶技巧で有名なリスト:「コンソレーション」第3番とのこと。Consolationは「慰め」の意味であり、静かなリストの曲。これも素晴らしかった。

 休憩を挟んで、3曲目はモーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」。第1楽章はAllegro vivace。マエストロ・ヴラダーは楽譜なしで指揮に専念。楽譜は全て彼の頭の中に入っているのだ。さて曲はスピーディーに展 開。一旦休止を三度繰り返し終了。第2楽章Andante cantabileは文字通り「歌うように」。テンポは緩徐、しかも優雅。ホルンのユニゾンも綺麗。第3楽章Menuetto. Allegrettoはスケルツォではない。正真正銘のメヌエッ トだ。第4楽章Molto allegroはお馴染みの「ドレファミ」。スピード溢れる指揮。これにOEKは良く応えた。即ち、OEKの熱演を引き出すマエストロ・ヴラダーの手腕が光る。クレッシェンドの後、堂々と終了した。

 21時を回っていたのだがアンコールは弦楽合奏曲である、モーツァルト:「カッサシオン」Andante。Kassationとはドイツ語で「喜遊曲やセレナーデに似た18世紀後半の器楽曲」。怒涛の「ジュピター」フィナーレと の対比が鮮やかであり、荘重な弦楽合奏曲に仕上がった。さて、オール・モーツァルト、オール・暗譜のマエストロ・ヴラダー指揮のコンサート。一箇所だけ他楽器の重畳により、第1ヴァイオリンが聞こえない処があった。 OEKが室内オーケストラとして世界に羽撃くには更なるStep upが必要のようだ。OEKの一層の奮励努力に期待したい。


Last updated on Oct. 18, 2017.
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