9月20日OEK第393回定期公演PH

9月20日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第393回定期公演PH
指揮:井上道義、ヴァイオリン:神尾真由子
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 久し振りのマエストロ・井上道義、ヴァイオリン:神尾真由子さんとオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の共演。神尾真由子さんのベー トーヴェンに期待して、石川県立音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートはチェロ四重奏、クレンゲル:「即興曲」。第一チェロはソンジュン・キムさんが務め、カンタさん、大澤さん、早川さんによるカルテット。終曲近く、ローエングリン「婚礼の合唱」も現れ、重厚で、 気品ある演奏であった。
 さて、コンサート1曲目は、ペルト:「ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌」。OEKは弦楽(8-6-4-4-3対象配置)と鐘(舞台裏)のみ。鐘と共にpで始まる。徐々に感極まるかのごとくクレッシェンド。低音弦の響きがレクイ エムを表象する。5分間の短い曲

 2曲目はベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲。ホルンは右手に配置される。神尾真由子さんは紫のドレスで登場。第1楽章Allegro non troppoは、ティンパニーのトントントンで開始。長いイントロの後神尾さんのヴァイ オリンが演奏開始。丁寧な演奏で、高音が良く響く。彼女のヴァイオリンは、ストラディヴァリウス1731年製"ルビノフ"とのこと。OEKとの対話も弾み、コントラバス3台の低音とも上手くマッチ。マエストロ・井上道 義はOEKの演奏のみの箇所では盛り上げ、神尾さんへ橋渡し。カデンツァは誰のものかは不明だが、テクニカルなカデンツァ。彼女はテクニカルが得意とのことで、その一端を窺う事はできた。第2楽章Adagioは荘厳な出だ しで、夢見心地。神尾さんとホルンとのDuoおよび低音弦ピッチカートとのDuoが綺麗。Attaccaで第3楽章はAllegro giocoso, ma non troppo vivace - Poco piu Presto。軽やかなイントロ。神尾さんのヴァイオリンはヴィ オラのような音から超高音まで音色が広い。マエストロ・井上道義の踊りも加わり、ベートーヴェン得意の主旋律を3回繰り返し、「これでどうだ」と終了。神尾さんのソロは45分の大曲を飽きさせず、輝かしい高みへと 導いた。アンコールは無し。

 休憩を挟んで、3曲目はベートーヴェン:交響曲第6番「田園」。第1楽章はErwachen heiter Empfindungen bei der Ankunft auf dem Lande(田舎に着いたときの目覚めの喜び)Allegro ma non troppo。従来よりスピード 感を増したOEKの演奏。正に絶好調。コントラバスの低音が響いて心地良い。第2楽章Szene am Bach(小川のほとりの情景)Andante molto mossoは、クラリネット、ファゴット・ソロが綺麗。これに加えてフルートとクラリ ネットによる郭公の競演。オーボエも続き、この楽章はソロのオンパレード。第3楽章Lustiges Zusammensein der Landleute(田舎の人々の楽しい集い)Allegroでトランペット、トロンボーン各3名が登場。田舎の人たちの 楽しい集いはオーボエ・ソロが華を添える。Attaccaで第4楽章はDonner. - Strum(雷雨・嵐)Allegro。ここで大迫力の嵐が再現。この余韻の所為か第5楽章Hirtengesang. Wohlatige, mit Dank an die Gottheit verbundene Gefuhle nach dem Strum(牧人の歌:嵐のあとの喜びと感謝)Allegrettoでは、マエストロ・井上道義はのびやかに指揮。クレッシェンドと共に盛り上がり、華麗な田園となる。しかし、第1Vnの音が聞こえてこない。大オー ケストラによくある第1Vnの音がかき消される現象だ。チェロのユニゾンの後一旦pに落とし、主題が戻り終了した。

 21時を回っていた所為かアンコールは無し。さて、今回のベートーヴェン・シリーズ。ヴァイオリン協奏曲ではコントラバス3台は問題無かったが、田園ではコントラバス3台は大き過ぎたようである。従来の室内楽の みの弦楽5部8-6-4-4-2に徹するのか、それとも弦楽5部をマーラも演奏可能な10-8-6-4-3にするかの臨界点に差し掛かっている。私個人としてはマーラーも人員をしぼった上での室内楽も可能な後者を希望するのだが.....。 ところでマエストロ・井上道義は今シーズン限りだそうだ。OEKをここまでレベルアップさせた彼の功績は大なので、次期音楽監督はプレッシャーだろうが、次期音楽監督にその決断を委ねるべきなのだろう。


Last updated on Sep. 20, 2017.
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