6月2日OEK第389回定期公演PH

6月2日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第389回定期公演PH
指揮&オーボエ:ハインツ・ホリガー、イングリッシュホルン:マリー=リーゼ・シュプバッハ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「巨匠ホリガーの世界」と題するコンサート。マエストロ・ホリガーが吹き振りでオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)を指揮する。曲目も難解なシェーン ベルグの室内協奏曲が取り上げられる。シュプバッハさんのイングリッシュホルンにも期待して、石川県立音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートはテレマン:4本のヴィオラのための協奏曲第1番だったそうだが、JRのチケット購入で遅くなり聞けずじまい、残念。
 さて、コンサート1曲目は、ハイドン:交響曲第104番「ロンドン」。OEKの弦楽五部は8-6-4-4-2で、チェロとヴィオラが入れ替わった通常配置。第1楽章Adagio-Allegroは堂々たる序奏で開始。マエストロ・ハインツ・ ホリガーは指揮のみ。彼の指揮は第4曲シェーンベルグでも感じられたのだが、オーボエも上手いが、オーボエ奏者より指揮者の風貌。やはり巨匠だ。指揮も堂々として、しかも的確である。第2楽章はAndante。タリラリラ と装飾音が心地よい。中間部でバッキンガム宮殿の衛兵パレードを連想させるアンダンテが加わる。フルート・ソロも綺麗。第3楽章Menueto: Allegro - Trio - menuetoは華麗なメヌエット。オーボエ・ソロが綺麗で、一旦 停止が3回。マエストロ・ホリガーの間の取り方も秀。第4楽章Finale: Spiritosoは文字通り力強く進行。クロアチア民謡に基づくそうだが、異国情緒あふれ、綺麗なフルー・ソロもあり、堂々と終了。日本では、普通本日 の第4曲であるシェーンベルクの各パートが一人というような小編成の室内楽曲はプログラム最初に演奏されるのだが、マエストロ・ホリガーは比較的大編成の室内楽曲を最初に設定した。この意図は第4曲で分かる。
 2曲目は、フィアラ:「オーボエ、イングリッシュホルンと管弦楽のためのコンチェルタンテ」。イタリア語で-anteは「行為者・職業を表す名詞語尾」の意。従って、直訳すると「協奏曲演奏人」。意訳するとプログラム解説 にある「協奏曲風」であろう。マエストロ・ホリガーのオーボエとシュプバッハさんのイングリッシュホルンが加わる。第1楽章はAllegro moderato。序奏に続いて、オーボエ、イングリッシュホルンのソロが加わる。イングリッシュホルンは胴の 長い楽器で、やや大人しく聞こえるが、オーボエとイングリッシュホルンの競演は素晴らしい。Duoのカデンツアも両者の音色を活かした構成。第2楽章Adagioは、やや早いアダージョ。中間部でホルン・ソロが絶妙のタイ ミングで挿入される。ここでも第1楽章と異なる曲想のカデンツアが綺麗。第3楽章はRondo allegro。オーボエの熱演に応えるかのごときイングリッシュホルンの技巧が冴え、楽しげに終了。アンコールはマエストロ・ホリ ガー:「オーボエとイングリッシュホルンのためのエア」。武満徹ばりの現代曲でこれも素晴らしいDuoであった。

 休憩を挟んで、3曲目はホリガー:「メタ・アルカ」。メタ・アルカとはプログラミにある通りアナグラム。CAMERATAの文字を入れ替えたMETA ARCAなのだ。スイスのアンサンブル、カメラータ・ベルンの創立50周年を祝ってマエス トロ・ホリガーが作曲、初演したそうだ。全体は8つに部分からなり、CAMERATAそのもの、その創設にかかわった人達、6人のヴァイオリニストのイニシャルが楽譜に書き込まれているとのこと。カメラータ東京は知っているが、 カメラータ・ベルンは知らないのでその曲の意味するところは不明だが、ゲスト・コンマスの荒井英治さんのソロ、コントラバスのピッチカートが印象的。これも武満徹風現代曲であった
 4曲目はシェーンベルク:室内交響曲第1番。OEKの弦楽5部は各1名。クラリネット、オーボエ、フルート、ファゴットの木管部、ホルン、トランペットの金管部も各1名。即ち、オール1名の室内交響曲。第1楽章Langsam - Sehr rasch -(ゆっくりと - 非常に早く) は正に混沌。難曲を指揮するマエストロ・ホリガーの指揮は的確。Attaccaで続く第2楽章はFeurig - Hauptzeitmass -Ruhiger - Sehr rasch(激しく - 元のテンポ - 静かに - 非 常に早く)。第2楽章開始は何処からかが不明瞭だが、クラリネット・ソロ、オーボエ・ソロが主張。Attaccaで第3楽章Viel langsamer - Fiessender - Schwungvoll - Hauptzeitmass -(非常にゆっくり - 流れるように - 活気に満ち て - 元のテンポ )には、カンタさんのチェロ・ソロ、ヴィオラ・ソロが瞬間的綺麗さを演出。第4楽章Etwas ruhig - Steigernd - Hauptzeitmas(多少ゆっくり - 高揚して - 元のテンポ)はクレッシェンドして終了。楽章の 切れ目も然ることながら、曲想が十二音技法のため分かりずらい曲であったと思われる。この曲を最後に設定したマエストロ・ホリガーの意図は?「これが現代曲で、このコンサートのメインだ」との主張なのだ。

 アンコールは21時を回った所為か無し。さて、難曲を熟したマエストロ・ホリガーとOEK。更なる挑戦への一歩を踏み出した。OEK2017-2018定期公演プログラムも発表された。7月の第392回定期公演PH「パイプオルガンとオー ケストラの饗宴」も然ることながら、9月の新シーズンにも期待しよう。


Last updated on Jun. 02, 2017.
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