4月7日OEK第388回定期公演PH

4月7日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第388回定期公演PH
指揮&チェンバロ:鈴木優人、ヴァイオリン:木嶋真優
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 若手マエストロ鈴木優人が「世界に誇る若き才能を聴く」と題するコンサートでオ−ケストラ・アンサンブル金沢を指揮する。曲目も「G線上 のアリア」あり、モーツァルトの甘美な第2楽章で知られるヴァイオリン協奏曲第5番ありと楽しみなコンサート。木嶋真優さんのヴァイオリンにも期待感して、石川県立 音楽堂へ出掛けた。

   プレ・コンサートはOEK大澤さんによるチェロ独演会。語りと、バッハ:無伴奏チェロソナタ第1番プレリュード(前奏曲)。違いは良く分からなかったが、ビブラートを控えたようで、バッハらしい几帳面さ溢れる演奏 を堪能できた。
コンサート1曲目は、バッハ:管弦楽組曲第3番。OEK弦楽5部は4-4-2-2-1の対象配置で、トランペットは3人。第1曲Overture(序曲)イントロはヘンデル風に華麗。第2主題でテンポが早くなる部分はもう少し早くても と思われたが、マエストロ鈴木流か。第2曲Airは御存じ「G線上のアリア」。但し、プログラムにある通り、ヴィルヘルムがヴァイオリンのG線のみで演奏できるように編曲したものが「G線上のアリア」。従って、第 2曲AirはG線のみでは演奏されない。第3曲GavotteT/Uは2拍子の舞曲。第4曲Bourreeはフランス舞曲。トランペットが華やか。第5曲Gigueはイギリス舞曲。華麗に、ややヘンデル風に終了した。
 2曲目は、モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。ヴァイオリンの木嶋真優さんは朱のドレスで登場。ヴァイオリンはストラディバリウスだ。第1楽章Allegro apertoは、短い序奏の後独奏ヴァイオリンが開始。やや大人しく、ストラディバリウスをコントロールしている感じ。カデンツァは誰の曲かは不明だが、やや現代的な感じ。もう少し聴衆にアピールする演技と演奏をとも 思った。しかし、これも木嶋真優流か。第2楽章Adagioは、抑揚をつけて音に厚みを齎す演奏。聞こえない位の超高音もあり、夢見心地。私は「コガネムシは金持ちだ」と呼んでいる第3楽章はRondeau. Tempo di Menuetto。 ソナタ形式の展開部が「トルコ風」だ。ヨーロッパから見るとトルコも日本も東洋であろう。日本人には共感できる曲想である。再現部に戻り堂々と終了。やや大人しいと感じたが、奇を衒った演奏に比べれば清々しい。 アンコールはマエストロ鈴木優人の伴奏でグラズノフ:「Meditation(瞑想)」。赤い照明も然ることながら、聞きごたえのある曲。モーツァルトも良いけれでも、こういう曲をプログラムに入れて欲しいものだ。

 休憩を挟み、3曲目はコントラバスが一人増えて、ベートーヴェン:交響曲第2番。第1楽章Adagio molto - Allegro con brioは、ドラマティックに展開。マエストロ鈴木優人も精力的だ。第2楽章Larghettoは、プロ グラムにある通り正しく天上の音楽。フル−ト・ソロが綺麗。第3楽章はベートヴェン独自の境地Scherzo. Allegro - Trio。第4楽章Allegro moltoは、スタッカートの心地よいリズムが展開し、交響楽団に匹敵するフィ ナーレ。OEKの面目躍如たる演奏であった。

 アンコールはモーツァルト:「フィガロの結婚」序曲。さて、若さ溢れる演奏を指揮したマエストロ鈴木優人。確かにOEKの音量は室内オーケストラとしては一流だ。但し、私は「ため」と呼んでいるffの前に一旦pに落と し、クレッシェンドする盛り上がり手法が好きだ。量が一流になれば、今度は質だ。OEKを指揮する指揮者の指導によるOEKの今後の更なる質向上に期待したい


Last updated on Apr. 07, 2017.
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