1月8日OEK第385回定期公演PH

1月8日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第385回定期公演PH
ニューイヤーコンサート2017
指揮&バロック・ヴァイオリン:エンリコ・オノフリ、ソプラノ:森麻紀
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 オ−ケストラ・アンサンブル金沢の2017ニューイヤーコンサート。マエストロ・エンリコ・オノフリが指揮&バロック・ヴァイオリンを担当 する。森麻紀さんのソプラノ独唱にも期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   プレ・コンサートは柳浦さんを始めとするOEKファゴット3人によるカスティルブラーゼ:3本のファゴットのためのトリオ Op.17 No.1.〜アレグロ、シチリアーノ、ポロネーゼ。電車の関係で石川県立音楽堂到着が遅れ、 終曲近くしの部分だけしか聞けなかったが、柳浦さんは第1ファゴットで2人を引っ張り、中々の熱演であった。柳浦さんは円熟の境地か。
 さて、コンサート1曲目は、OEKによるヴィヴァルディ:セレナータ「祝されたセーナ」よりシンフォニア。OEKの弦楽5部は6-4-4-3-2の通常配置に見えた。シンフォニアだが急・緩・急の3楽章構成。弾き振りのマエ ストロ・オノフリは前回同様ヴァイオリンにマフラーを結びつけて登場。このマフラーはヴァイオリン固定用である。ヴィヴァルディ風あり、コレルリ風ありの短い3楽章。プログラムにある通り晴朗で、快活にコンサート の開始を告げた。
 2曲目は、ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲。ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲は沢山あるのだが、「調和の霊感」作品3 (全12曲) 協奏曲 第3番 ト長調 RV.310(独奏ヴァイオリンのための)だ。OEKは弦楽のみ で、マエストロ・オノフリは弾き・振り。第1楽章Allegro、第2楽章Largo、第3楽章Allegroの急・緩・急の3楽章構成。将に室内楽的抑制された音量(終曲のモーツァルトと対蹠的)。特に第3楽章は彼のテクニックが冴 え渡り、躍動感溢れ、しかも優雅に終了。日本人がヴィヴァルディを演奏する場合、ねちっとした演奏を良く聞くが、今回の演奏はスピード感もあり、秀。
 3曲目は緑のドレスの森麻紀さんによるヘンデル:オラトリオ『時そして覚醒の勝利』より「神によって選ばれた天の使者よ」。プログラムによれば、「ひと時の美である若さへの礼賛を諌めるような寓話」だそうだ。 OEKの伴奏は勿論、マエストロ・オノフリのヴァイオリン・ソロと森麻紀さんとのDuoが綺麗。特に、森麻紀さんは丁寧に、しかも清澄に歌い上げた。
 4曲目はヘンデル:組曲「王宮の花火の音楽」。OEKの弦楽は8-6-4-4-2の通常配置。トランペットが加わる。4曲目以降はマエストロ・オノフリは指揮に専念。日本では除夜の鐘が新年を告げるのだが、海外では花火が上 がる。マエストロ・オノフリの新年の挨拶だ。第1曲は序曲(Ouverture)。ティンパニーが開始を告げ、トランペットが華やかさを演出。この序曲は比較的長く、第2曲の短いブーレ(Bourree、舞踊曲)は快速。第3曲平和 (La Paix)は、3拍子。従って、この曲が後続のメヌエットと勘違いし易い。これも短い第4曲歓喜(La Rejouissance)では、喜びを爆発させる。聴衆はこの曲が終曲と勘違いしそうだが、メヌエット(Menuet)T & Uがこ れに続く。メヌエットは間違いなく3拍子。弦と木管で演奏されるT、Uは金管とティンパニーを加えた輝かしい曲想。マエストロ・オノフリのダイナミックな指揮で終了した。

 休憩を挟んで、白のドレスにお色直しした森麻紀さんによる得意のモーツァルト:モテット「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」。CodaのAllelujaは森麻紀さんがコロラトゥーラぶりを発揮して、圧巻。アンコールは、お馴染み ヘンデル:アリア「私を泣かせないで」。これも又、情感豊かであった。
 6曲目は、モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」。ザルツブルグ屈指の富豪で、かっては市長を務めた名門ハフナー家からの依頼のセレナーデを後に交響曲としてウィーンで演奏されることになった 時、モーツァルトは冒頭の行進曲と第1メエットを取り去って4楽章としたそうだ。その第1楽章Allegro con spiritoは交響曲の開始を告げる。第2楽章は(Andante)。括弧付は後世誰かの手で書き加えられたものだそうだ。OEK の綺麗な弦楽にクラリネットが重畳する。第3楽章Menuettoは力強いメヌエットで、マエストロ・オノフリはOEKを鼓舞する。第4楽章Finale. Prestoは壮大。前述のヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲に比して重量感溢れ る演奏で終了した。

 アンコールは16時を回った所為か無し。さて、重量感あふれるモーツァルトを効いた訳だが、OEKは交響楽団並みに進化してきた。従って、名称はオーケストラ・アンサンブル金沢の儘で、弦楽部門を12-10-8-6-4(又は 10-8-6-4-4)に増員し、定期演奏会におけるフィルハーモニー・シリーズを思い切ってブルックナー演奏を可能にさせる。一方、定期演奏会に室内楽シリーズを増設し、弦楽部門を縮小、現在程度とし、こじんまりとした室内 楽を定期演奏する。こができないだろうか?切望したい。尚、帰りに恒例の金沢市弥生(有)茶菓工房たろう製「どら焼き」を頂いた。本年もOEKの好演奏を祈念し、帰宅後妻と半分ずつ食した。今年は味が例年とは少し異なっ てはいたが、それでも中々の一品。ごちそう様でした。


Last updated on Jan. 08, 2017.
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