6月2日OEK第377回定期公演PH

6月2日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第377回定期公演PH
指揮:川瀬賢太郎、 ヴァイオリン:山根一仁
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 マエストロ・川瀬賢太郎指揮「クラシック界ライジングスター!」と題するオ−ケ ストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演。ブルッフの「スコットランド幻想曲」は私の好きな曲だが、何故かOEKでは聞いた記憶が無い。これを楽しみに、 石川県立音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートはOEKカンタさんのチェロとコントラバスのDuo。1曲目はRossini:チェロとコントラバス二重奏〜第1楽章。珍しい曲もあるものだ。 カノン形式で、メロディーを交互に演奏。2曲目はWeill:『3文オペラ』より「マッキー・メッサーのモリター」。いわゆる"Mack The Knife"。3曲目は Joplin:「オリジナル・ラグ」。二人の息も合った素晴らしい演奏であった。
 さて、コンサート1曲目は、一柳慧:交響曲第10番-さまざまな想い出の中に -(新曲委嘱作品・世界初演)。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。静謐 なイントロ。マリンバが加わる。雅楽の様でもあり、故マエストロ岩城浩之好みの打楽器曲でもある。序奏から一転アップテンポ。チューバの不思議な音。 ティンパニーが静寂を打ち破る。木琴、ドラ、トロンボーンも効果的。盛り上がりの後一旦停止。再びpよりクレッシェンドでFinale。現代音楽である。一 柳慧さんの益々の作曲家活動に期待したい。
 2曲目はブルッフ:「スコットランド幻想曲」。序奏Graveは、重々しい雰囲気で始まる。第1楽章Adagio cantabileで山根一仁さんのヴァイオリンが開始。 彼のヴァイオリンは明るい。中間部でハープとのDuo、これは綺麗。その後主題が提示される。私は訪問したことが無いのだが、いかにもScottishである。 第2楽章Allegroは、急テンポで開始。本日のティンパニーの音は固くない。マレットの選択がうまくいったようだ。指揮のマエストロ川瀬賢太郎は指揮台上 でジャンプする等若々しい。しかし、指揮は的確。第3楽章Andante sostenutoは、スコットランド民謡的か。ホルンと山根一仁のヴァイオリンのDuoも綺麗。 第4楽章はFinale: Allegro gueriero(伊、好戦的)。急テンポで変奏曲風。山根一仁さんのテクニックも中々のものである。主題が回帰して終了。 アンコールはバッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番よりAndante。彼は優しく弾いたため、日ごろ聞くバッハのイメージとは少々異なって聞こえたが、 彼流のバッハであった。

 休憩を挟んで3曲目は、知らない作曲家ベリオ「シューベルト-レンダリング」。シューベルトの未完の大作交響曲第10番を補筆完成させた曲らしい。第 1楽章では単純なメロディーが流れたが、シューベルト的ではない、ベートーヴェン的でも無い。ペリオ的だ。中間部は現代曲にある宙を漂うような不思議 な旋律。それでも弦楽の綺麗な旋律も含まれてはいた。第2楽章はオーボエ・ソロ、ゲスト・コンサートマスターの荒井英治さんのソロが綺麗。メンデルスゾ ーンのコラール的。第3楽章は1音のピッチカートで開始。風変りな曲想だが、所々に綺麗な弦楽が鏤められている。ホルンのユニゾンも決まり、難解に Finale。

 アンコールは時間の所為で無し。交響曲第10番が並んだ本日のコンサート。再度言おう。「ペリオは難しかった」と。私ならヤナーチェクの「シン フォニエッタ」は無理としても、彼の狂詩曲「タリス・ブーリバ」辺りをプログラムに入れるのにと思ったが、如何だろうか?若きマエストロとヴァイオリニ ストの今後に期待したい。


Last updated on Jun. 02, 2016.
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