160505K332

5月5日ラ・フォル・ジュルネ金沢2016公演番号K332
トリオ・オウオン、ヴァイオリン:オリヴィエ・シャルリエ
チェロ:ヤン・ソンウォン、ピアノ:エマニュエル・シュトロッセ
金沢市アートホール

酢谷琢磨

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ラ・フォル・ジュルネ金沢音楽祭2016
 ラ・フォル・ジュルネ金沢音楽祭2016公演番号K332は、トリオ・オウオンによるピア ノ三重奏曲。ピア三重奏曲は余り聞く機会が無く、選曲された曲も金沢プレミエなので、これ等に期待して金沢市アートホールへ出掛けた。
電車で混雑する金沢駅に到着し、鼓門に向かうと、金管5重奏で"Tonight"の演奏。右図はその画像です。

 コンサート1曲目は、ハイドン:ピアノ三重奏曲第21番。第1楽章Adagio pastorale - Vivace assaiは、英国的でもあり、東洋的にも聞こえるパストラルで開始。一転して急となる。中間部におけるピアノのア ルペジオ奏法が心地よく、ヴァイオリンとチェロがピアノに呼応する。pに落とすところは3人の呼吸がぴたりと一致する。第2楽章Molto andanteは、ヴァイオリンが歌う。カンタービレだ。中間部ではピアノ・ ソロ。これも綺麗。第3楽章Finale, Prestoは急。pとfとのアクセントを効かせた楽章で、フィナーレは堂々と終了した。緩-急-緩-急構成である。
 2曲目は、ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第1番。若々しいベートーヴェン初期の作品で、ハイドンからの自立を目指したものだそうだ。第1楽章Allegroは、ハイドンから脱皮したのだが、地味な楽章に終始。 第2楽章Adagio cantabileは、ピアノ・ソロで開始。中間部ではヴァイオリン、チェロ・ソロが挿入され、ハイドンでは見られなかったソロが効果的。ハイドンでは影の薄かったチェロに存在感を与える。ベートー ヴェン的スタイルを確立させた楽章ともいえる。第3楽章Scherzo, Allegro assaiは、ベートヴェン独特のスケルツォ。テンポはそんなに急ではなく、第1楽章から第3楽章までは同じテンポに聞こえた。第4楽 章Finale, Prestoで、急テンポが現出。ベートヴェン的畳み掛ける構成で、終わりかと思うと又ピアノがそっと奏で出す。この繰り返しはベーヴェンの「しつこさ」の現われ。しかし、フィナーレは分かり易く、 溌剌と終了した。
 
 アンコールは無し。しかし、フランス的灰色の長上着を着用したトリオ・オウオンは、ハイドンとベートーヴェンの違いを見事演奏で示した。将に、大人の3重奏団である。尚、プログラムでは"Qwon"、又は読 みの"Owon"は、「彼らの3つの名前のいくつかの音をまとめたもの」らしい。


Last updated on May 05, 2016.
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