3月1日オペラ「夕鶴」、指揮:現田茂夫、
ソプラノ:佐藤しのぶ、テノール:倉石真、バリトン:原田圭、バス:高橋敬三
合唱:OEKエンジェルコーラス、管弦楽:オーケストラ・アンサンブル金沢
金沢歌劇座

酢谷琢磨

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夕鶴
 開演前金沢歌劇座のオーケストラ・ピットを見ると、オ−ケ ストラ・アンサンブル金沢(OEK)は弦楽が少なく、第1ヴァイオリンとコントラバス各2名程度。管楽器、打楽器が主である。何故このような編成かというとオペラの進行と同時に分かって くる。

 第1部前奏が始まる。序曲だがホルン、トランペット、フルート等の管楽器主体の演奏。即ち、團伊玖磨は管楽器主のオーケストラを念頭に置いて作曲したのだ。続いて、OEKエンジェルコーラ スによる「わらべ歌」。衣装:森英恵とプログラムにあったが、子供達は可愛らしい衣装。森英恵さんの作品か。さて舞台は、原田圭さん演じる「運ず」と、高橋敬三(何処かで聞いたことがある 名前は高橋圭三)さん演じる「惣ど」が登場。「鶴千羽織り」をモチーフにしたDuo。OEKはオーボエ、ファゴット、フルート等の管楽器で伴奏。この伴奏も中々良い。マエストロ現田茂夫の的確な 指揮が光る。続いて、倉石真さんの「与ひょう」が加わる。与ひょうは、矢を負った鶴を助けた話をし、鶴の恩返しを示唆。再び、子供達登場と共に、森英恵ドレス(白に黒のベルト)を身に着け た佐藤しのぶさんによる「つうのアリア」、「与ひょう、あたしの大事な与ひょう」が始まる。少々硬かったが、このアリア終了時の拍手の後、佐藤しのぶさんは本来のコロラ・トゥ−ラを復活 させる。つうと与ひょうのDuoが続く。『「おかね」って、そんなにほしいものなの?』。「そらおまえ、金は誰でもほしいでよ」との現代でも交わされそうな会話。与ひょうの「布を織れ。都さ 行くだ。金儲けて来るだ」に絆され、決して覗かない約束をして、つうは機屋に入る。機の音が聞こえる。小太鼓演奏だと思うのだが、それらしき演奏。与ひょう、運ず、惣どによる機屋で鶴が 織っているのを覗き見て仰天するシーンで幕。幕の降り方は少々遅かった。しかし、金沢歌劇座には石川県立音楽堂と違って幕がある。オペラらしい。

 休憩を挟んで、第2部。ここでは、弦楽器主体の間奏曲が挿入される。この綺麗な間奏曲の後、つうは織った2枚の布を与ひょうに差し出す。しかし、つうは「あれほど頼んでおいたのに...あれほど 固く約束しておいたのに、あんたはどうして...どうして見てしまたの?」と泣く。つうは子供達と最後の遊びをして空に戻る。子供の一人が空を指して「あ、鶴だ、鶴だ、鶴が飛んでいる」と 叫ぶ。惣ど「よたよたと飛んで行きよる」。自分の羽根で布を2枚織った鶴は痛々しい。与ひょうの「つう...つう...」の絶叫で幕。演出、舞台装置、照明も現代風にアレンジされた佐藤しのぶ 主演オペラ「夕鶴」は終了した。

 さて、ソリスト4名のコンパクト・オペラはコスト・パフォーマンスとしては秀逸であった。しかし、私は金沢でワグナーの歌劇上演が無いことを寂しく思っている。「ニーベルングの指輪」 等の大作は無理としても、「タンホイザー」、「ローエングリン」を是非金沢歌劇座で上演して欲しいものだ。「トリスタンとイゾルデ」も可能かな?


Last updated on May 26, 2015.
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