2月7日OEK第373回定期公演PH

2月7日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第373回定期公演PH
指揮・チェンバロ:北谷直樹、テオルボ&バロックギター:高本一郎
ヴァイオリン:アビゲイル・ヤング、 フルート:岡本えり子
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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音楽堂より金沢駅もてなしドーム

 マエストロ・北谷直樹による指揮・チェンバロ演奏とオ−ケストラ・アンサンブル金沢による「バロックの喜び!」と題するコンサート。 ハイニヒェン、ラザールという初めて聞く作曲家の曲も含まれている。山歩き、及びスキーで朝早く出掛ける時、NHK-FMではバロック音楽が流れ、これを聞きながら目的地へ向かったことを思い出す。即ち、バロッ ク音楽は好きなジャンルだ。従って、興味津々、石川県立音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートはラ・フォル・ジュルネ金沢2016のチケット購入で遅くなり不明。尚、右図は石川県立音楽堂から見た金沢駅もてなしドームの画像です。
 さて、コンサート1曲目は、ハイニヒェン:シンフォニア「モーリッツブルク」。OEKの弦楽5部は8-6-4-2-2。但し、コントラバスは左右に分かれ、他の弦楽奏者は起立しての演奏。第1曲は快速。ホルンの 快速演奏が光る。コーダはアダージョ。第2曲は舞曲。第3曲サラバンドはシチリアーノにも似た付点音符。第5曲はプログラムによるとラ・シャス。これはフランス語"la chasse"で「狩猟」の意味。いかにも狩りら しい。第6曲はエマーブル。これもフランス語"aimable"で、「愛すべき」の意。やはり舞曲。第7曲はホルンのPresto演奏が心地良い。第8曲はメヌエットらしい。メヌエット中央部では、チェンバロ、ミストレス・ヤング のヴァイオリン、ヴィオラ、オーボエ、高本一郎さんのテオルボ・ギターの5重奏が優雅。フィナーレは分かり易く終了。バロック音楽というとヴィヴァルディを思い出すのだが、ハイニヒェンも中々良い。
 2曲目はヘンデル:水上の音楽第3組曲。この曲は、Allegro, Rigaudon, Allegro, Menuet, Allegro, Allegro, Allegroと続く。最初のAllegroでは、ヴァイオリン、フルート・ソロが綺麗。途中Rigaudonだと思うの だが、かしこまった感じの曲想からTuttiで軽快な演奏に転換。フィナーレのAllegroは、プログラムでは「ジーグ風」とあり、豪快な感じで終了。水上の音楽は、第2組曲アラ・ホーンパイプが有名。しかし、これ を避けて、やや大人しい第3組曲を選んだのは、マエストロ・北谷直樹の高邁な思想の現われ。歓迎しよう。
 3曲目は、バッハ:フルート、ヴァイオリンとチェンバロのための協奏曲。第1楽章Allegroは、OEK岡本えり子さんのフルート、ミストレス・ヤングによるヴァイオリン、マエストロ北谷直樹によるチェンバロの三重 奏とOEKによる協奏曲。バッハ的几帳面なイントロで開始。フルート・ソロ、チェンバロ・ソロもあり多彩。第2曲Adagio ma no tanto e dolceは、ソリスト3人のみによる三重奏。ヤングさん及び岡本えり子さんのソロ が光る。第3楽章Ala breve(フランス語、簡潔に)はtuttiに戻る。フィナーレ前にはチェンバロのカデンツアもあり、華やかに終了した。

 休憩を挟んで4曲目は、ミルコ・ラザール:ヴァイオリンとチェンバロのためのバレエ組曲。プログラムには「本日のプログラムで異彩を放っている」とあるが、マエストロ北谷直樹とミストレス・ヤングのDuoだ。 第1曲「イントロ-イントロメッツォ」はヴァイオリンの引きずるような演奏で開始。第2曲は後のショスタコーヴィチ的バロック音楽。第3曲は「曖昧なダンス」。スローテンポのダンスか。第4曲「シチリア」を挟んで、 第5曲は一転急テンポの「コンチェルト パートU」で、力強く終了。Duoでコンサート・ホールを感動させる手腕は流石である。アンコールは、同じくミルコ・ラザール:ヴァイオリンとチェンバロにためのバレエ組曲 (2014)より「ラブストーリー」。どのようなバレエだったのか見たくなる曲。バロック音楽の素晴らしさを実感させる。
 5曲目は、ラモー:抒情悲劇「アバリス、またはボレアド」組曲より。ラモーはフランスのバロック音楽家。この組曲は「序曲」、「活発なロンド」、「アクト5(5幕)」、「ロンド形式のコントルダンス」、「休憩、 次の嵐」「アントレ・シーン4」と続くらしい。マエストロ・北谷直樹は指揮のみ。「序曲」はホルンで開始。「かっぱつなロンド」では舞台照明がパイプ・オルガンを赤く照明。その後「休憩、次の嵐」だった思うが、舞台照明が真っ赤になり、観客席 は真っ暗でメモをとれない状態。従って、曲の感想より照明の感想に終始してしまうのをお許し願いたい。さて、「休憩、次の嵐」では、途中管楽器奏者が一旦舞台から退場。その後再登場し、照明は紫色に代わる。 その後、照明は最初の通常照明、朝日を表すかの照明を交互に繰り返し、フランスのバロック音楽はこのように華やかですと言わんばかり、堂々と終了。フランスのバロック音楽はやはり洒脱である。

 アンコール1曲目は、9時20分近くであったが、ラモー:抒情悲劇「アバリス、またはボレアド」組曲より「ロンド形式のコントルダンス」再演。2度聞いてもバロック音楽と思われぬ、ロマンス的音楽。素晴らしい。 ということで「バロックの喜び!」は終了した。「なんだバロック音楽か」と思って来場した聴衆も満足し、バロック音楽を考え直す良い機会になったと思われる。惜しむらくは、過度の照明が気に掛かる。奇抜な舞台照 明は音楽を忘れさせてしまう。今後の課題としたい。


Last updated on Feb. 07, 2016.
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